また君を探そう

□第1章
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僕はある春、不覚にも1人の女性に一目惚れをしてしまった。



それは僕が、第1希望だった高校に入学した春。



長かった入学式が終わり校舎の外に出てみると、そこには記念撮影をする沢山の新入生親子がいた。



その中の1人でありたいと思ったが、生憎ながら両親は揃って仕事。



誰1人として、僕の思い出作りに協力してくれる者はいなかった。



「はぁ…。」



小さく溜め息を吐き、校舎の裏にある桜の木の元へ向かう。



そこは中学3年生の頃に、体験入学の自由時間の際に見付けた場所。



在学生もあまり来ない場所のようなので、密かに自分のお気に入りの場所としていた。



しかしいざそこに着いてみると、誰もいないと思っていたはずの場所に1人の女子生徒がいた。



制服の左胸に付けている小さなリボンの札を見て、彼女も新入生だと分かる。



彼女はただじっと、桜の木を見つめていた。



思わず見惚れていると、ふわりと柔らかく暖かな春風が吹いた。



それは彼女のスカートを、優しく靡かせる。



「綺麗だ…。」



僕は無意識に声を漏らした。



するとその声が聞こえたのだろう、桜の木を見つめていた彼女がゆっくりと僕に視線を移した。



その視線は大人っぽくも、幼く。



浮かべた微笑は妖艶さを持ち、どこかあどけなかった。



その時僕は。



名前も知らない女性に、生まれて初めて一目惚れをした。
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