二次文

□宝貝に思春期
1ページ/3ページ



〜趙公明より殷氏、李靖を奪還し、クイーンジョーカーU世号から離脱。九竜神火罩にて、崑崙山へと帰途につく〜


「少し、お時間が掛かります。お座りになって、お待ちください」
宝貝「九竜神火罩」の外に佇む太乙が、中に収まる李一家に対してそう促し、蓋を閉じた。
宝貝内が、一切の暗闇に包まれる。
それから少しの後、中にいる三人は、重力が徐々に増す感覚を覚えた。
遥か上空に聳える崑崙山へと、上昇を始めたらしい、とわかった李靖が、腰を下ろす。
隣に、殷氏が寄り添った。
「殷氏、具合は?」
「少し…疲れたわ。貴方こそ、ずっと砂の中にいたのでしょう?」
「導士なら屁でもない」
「もう、ダメかと…」
「愛するお前を残して、逝くなどあるか」
「ありがとう。…みんな、無事で本当に良かった」
壁に背を凭れた殷氏が、安堵の息を吐く。
釣られて、隣に寄り添う李靖も溜め息を吐き出す。
宝貝内を覆っていた緊張感が、幾何かほぐれた。
「認めたくはない…が、…助けられてしまった」
夫と顔を合わせ、はにかんだ。
「自慢の息子、ですね」
「…フン」
「…もー、それだけ?」
眠るナタクの腕を手探りで見つけだした殷氏は、彼を自身の前へと引き寄せる。
「ありがとう、ナタク」



〜崑崙山へ到着後、太乙真人の研究室にて、壊れた宝貝の修理中〜



本体の宝貝「霊珠」を弄られているため動けず、横たわるナタク。
彼が、不意に口を開く。
「貴様は、女を愛した事があるか」
「霊珠」の修理に勤しむ太乙の手の動きが、固まる。彼の方へと振り向くと、目線がかち合った。
「答えろ」
宝貝を修理している、ありとあらゆる器具の電源を、太乙は落としてゆく。
「え、なんだって?もっかい」
「とぼけるな、殺すぞ」
研究室に響き渡るのは、ナタクの声だけであった。
「仙人は、男女分け隔てなく愛するものさ。こんな答えで、満足かな」
「黙れ」
「理不尽だなぁ」
閉め切った部屋の中で行う作業ゆえか、汗ばむ自身の額を、太乙が服の袖で拭った。
ナタクに向けていた顔を、霊珠の方へと戻す。
「想い人でも、出来たのかい?」
修理を再開した太乙を一瞥して、ナタクは目を閉じた。
「話したくなければ、それでいい」
遊ぶ左手をナタクの頭に乗せた太乙が、その指で彼の髪を梳く。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ