ただただ逢いたい

□どうなっちゃうの? どうなるんや?
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名無しさんはエレベーターの中でうずくまり
涙していた。


どうして真島は名無しさんの仕事中に連れ去り、何も話さず名無しさんにキスなんてしたのか……まったくもって分からなかった。


名無しさんは自分が何か真島に不快なことでも昨日してしまったのか…


と思っていたら
ポーンと一階に着き扉が開いた


名無しさんは顔を上げ、その場から早く逃げたかった。
少し走って扉から出ようとした時


エレベーターに乗り込もうとした男とぶつかった。
その拍子に名無しさんは尻餅をついた。


「きゃ…」


「おぉ すまん 大丈夫か?」


と男は名無しさんに手を差し出してきた。


その男はガタイが良く、長髪の男性だった
そして今一番聞きたくない関西弁…


名無しさんは男をキッと睨むと
自分で起き上がった。


何も答えなかった名無しさんはすたすたと
その場を去ろうとした。


「お おい…なんやその態度
俺はすまんかったと言ってるやないか」


と男は名無しさんに向かって言った。
それでも名無しさんは何も答えず男から遠ざかる


男は名無しさんを追い 肩を掴んだ


「女はもっと可愛げがあった方がええで」


「…あなたには関係ないでしょ?」


と関係のない男に、ただの八つ当たりをしてしまった。


名無しさんは申し訳ないと思いながら離れようとする。


そうこうしているうちに、もう一つのエレベーターが開き中から慌てて真島が飛び出してきた。


「名無しさんちゃん! !」


その声を聞いた名無しさんは走ろうとしたが、肩を掴まれたままでは逃げ出せない。


「は 離して!」


と名無しさんは男が掴んでいる肩を振り切ろうとしたが


「あんたに用があるんやないんか?」


「だとしても あなたには関係ないでしょ?」


と名無しさんがじたばたしていると
真島が名無しさんの傍に来た


「なんや…兄弟名無しさんちゃんに何しよん?」


「お前のコレか?もうちょっと躾せなあかんで ちょっとぶつかって尻もちついただけで
めっちゃ怒んねん」


と男は小指を立てたまま頭を左右に振った。


名無しさんは頭を下げ


「すみません。大人気なかったです
ちょっと 嫌なことがあってあなたに八つ当たりしてしまいました。」


と誤った。


「ええねん ええねん
まぁ…兄弟の女やったらそれくらいないとな」


「・・・・・」


名無しさんは眉を寄せて俯いた。



「兄弟…すまんちょっと  名無しさんちゃんと話させてくれへん?」


「おう 上行っとる」


と言って男は開いた扉に入っていった。





真島は名無しさんを外に連れて行き、ミレニアムタワー前のベンチに座らせた。


真島は名無しさんの目線を合わすため名無しさんの前にしゃがみ込んだ。


お互いに言葉が出てこない
名無しさんは真島に視線を合わせようとはしない。
真島もどうしたら良いものかと考えていた。


いつもならキスのひとつや ふたつや みっつや よっつや……
どーーってこと無いはずなのに


名無しさんとのあのキスはどういう風に説明したらいいのか分からない。


しかし沈黙を破ったのは名無しさんの
涙を流して鼻を啜る音だった。


「……チリガミもってへんのか?」


と真島は名無しさんに言った。



「……真島さんに拉致られて何も持ってきてません。」


「拉致ってなんやねんな…ワシは誘拐犯かい」


「そうでしょ?いきなり仕事中に引きずり回して 挙句の果てにはキスなんて……して」


と最後の語尾はとても弱弱しく言った。


「なんや 恥ずかしいんかい いい年した女が」


そう言われて名無しさんは ばっと真島の顔見た そしてわなわな震えだし


「いい年した女でも いきなり あ…あんな事されれば 誰だってびっくりします! !
真島さんの周りに居るような 女性はどんなの人かは知りませんが 私はきずつきました」


言ってから名無しさんは真島に失礼な事を言ってしまったのではないか、と後悔した。


   『真島の周りに居るような女性…』


真島の心を支配しているかもしれない
あの名前の女性を侮辱してしまったかもしれない…


「あ…のご…め…」


「ああ…びっくりさしたわな すまん」


誤るつもりが、真島に謝られてしまった。
名無しさんは何か肩の力が抜けてしまった。


今は無理でも、いつかは何でこんな事をしたり、色々本当の事を話してくれるかも と
そうしたら、自分もこの気持ちの意味が分かるかもしれない。


「…もう…いいです いい年した女ですから
別に気にしない事にします」


と言って真島がしゃがんでいて真島の手が真島の膝にあったので、手をとった


仲直り 仲直りと言って握手をした。


「あっ大っ嫌いって言って ごめんなさい
あれ嘘ですから」


と名無しさんは真島に謝罪をした。
真島は 本気にしとらん と言って握手していた手をぶんぶん振った。

「痛い! 真島さん! もぅ〜痛いって〜」


と軽口をたたいていたら


「気になったんやけど ええ年って自分なんぼなん?」


「えー…っと さ…31…です」


と気まずそうに言った。


「ええ年やん…てか大人やん〜うひゃひゃひゃひゃ いたーーーー! !」


名無しさんは握っていた手をおもいっきりつねった


「やっぱり だいだいだいっきらい! !」
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