短編

□蝶
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「へーーーーぶしょーーーい! ! !」


真島組の事務所に、それはそれは大きなくしゃみが響く。


毎年毎年この時期になると、くしゃみとティッシュの山がゴミ箱に溜まる。


「あ゛あ゛あ゛あ゛〜 あかん〜西田! !」


組長室から真島は、西田を呼ぶが西田は一向に現れない。


「西田ーーーー! !」


慌てて、組長室に入ってきたのは南だった。


「へっ へい! ! すんません! ! 今西田の兄貴はヒルズに行っていて留守なんです」

鼻を赤くしながら、また真島はティッシュに手を伸ばす


「あぁ〜せやったな〜 ま…南でもええか
花粉症の薬ことぶき薬局で買ってきてくれ」


南は申し訳なさそうに、頭を下げながら


「すんません 親父今から俺もヒルズに行かんとあきませんねん 今日は六代目が来る言うてはったでしょ?」


真島は眉間に皺を寄せながら、頭をガシガシ掻く。


「あ〜 せやったな〜 ほなとっと行って六代目にヒルズの出来具合みせつけたれ」


南は、ペコリと頭を下げ部屋から出て行った。
真島は、ぶーーっとまた鼻をかむと立ち上がり


「しゃーない 外出たくないけど 行くしかないか…」


歩いて、すぐ近くの「ことぶき薬局」へと行くことに決めた。









「あ〜 やっぱり花粉飛んでるの〜 東京はコンクリートジャングルやから たまらんわ〜」


片目をゴシゴシ擦りながら、早足で薬局へと入っていった。


「いらっしゃいませ〜」


狭い店内に、いつものおやじの声ではなく、若い声が真島の耳に届いた。


そちらに目を向けると、若い女が接客をしているではないか。


「あれ〜 いつものおやじはどないしてん?」


話しかけられた女は、にこりと笑いながら


「今 休憩中です 私はバイトのものですけど
父に何か御用ですか?」


「娘やったんかい…」


「はい それで今日はどうなさいましたか?」


バイトと聞いて、少々不安を感じたがもうこの鼻づまりと目のかゆみを如何にかしたい真島は


わらをも掴む思いでいう。


「花粉症やねん 一発で聞く薬だしてくれへんか?」


それを聞いた娘はカウンターから、数種類の薬を真島の前に出す。


「こちらは一日三回飲む薬 そして点眼ですねこれは一日数回点してください あとは〜眠くはならない薬ですかね〜」


真島は、真剣に話す女の手をじっと見る。


___ずいぶん綺麗な 手しとるんやな____


「名前は?」


いきなり話しだす真島に、えっ?と聞き返すがすぐ合点が言ったのか


薬を手に持ち


「コンタ○クですね 一日二回で長〜く効くってCMやっていて…」


「ちゃうちゃう あんたの名前」


「は? 私の名前ですか?」


「せや」


こくんと頷く。
女は、またにこりと微笑みながら


「苗字名前ですけど…」


「年は?」


「は? えーっと 今年高校3年の18ですけど」


年を聞いた真島は、驚く


「なんやと?? 18?」


「はい〜 すっすみません」


ひっと 名前が頭を抱え込みしゃがむ
怖がらせたと慌てて真島は謝る。


「すまん すまんなんやねーちゃんがあんまりにも落ち着いてたから 未成年って聞いてびっくりしてしもたわ ほなコレ貰うわ」


真島は、点眼とコン○ックを持ち上げる。


「いっいえ…大丈夫です はい…ありがとうございます」


お金を払っても、出て行かない真島を不思議に思い名前は戸惑いながら真島を見た。


真島はずっと名前を見ていて目が合うとニカっと笑い


「何時におわるん? デートしよや」


とありえない言葉を発した。
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