短編

□明日
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「…明日…か」


真島は真っ暗なリビングの中で、月の光を浴びながら床に座りタバコを吸っていた。


明日は、杯交渉へと足を向けなければならない。


長くなるかもしれない。
…もしかしたらと、いういささかの不安もある。


「ワシも弱なってしもたな…」


ふっと笑うと、煙草を灰皿に押し付け
傍において居あったグラスを口に付けたとき


寝室の扉が開く音がし、ぺたぺたとかわいらしい足音。


リビングの扉が開くと、自分を呼ぶ声。


「吾朗さん?」


暗闇の中、床に座っていて見えないのだろうか、不安な声を出し真島を呼ぶ。


「ここや」


暗闇から声がし少し驚くように見えたが、声の主が真島だとわかると


駆け寄ってくる。


「どうしたんですか? こんな寒いのに」


肩に掛けていたガウンを真島に掛けようとしたが、その腕を引っ張られ体ごと真島の腕の中に収められた。


「きやっっっ…もぅ〜 びっくりした」


「イヒヒヒヒ すまんすまん」


後ろから抱きしめられている名前は真島の腕を握る。


「明日からしばらく寂しいな…なーんちゃって



おどけたつもりだが、それは名前の本心だということには気づいたが、真島もソレに乗るような形で


「ワシがおらんとせいせいするんやないんか〜? 浮気するなよ?」


「どうしようかな〜 早く帰ってこなきゃ
ホストの一樹さんにはまってしまうかも」


「そらあかんで! 名前! ! 暴れるで?」


「ふふふふ」


名前も分かっていた。真島の今回の任務は相当大きいことだと、、、、


行かないで欲しいと、言いたいところをのどの奥にしまっている。


真島に背を向けて笑っているように見せているが小さな肩が震えていた。


真島は体ごと抱きしめ、顔を肩にうずめた。


「ほんまに浮気したらあかんで?」


「……じゃ 絶対帰ってくるって約束して」


真島の息を呑む声が名前の耳に聞こえた。


真島はできない約束はしないという主義だ。


「あほ…帰ってくるにきまってるやろが」


「うん…うん…吾朗さん好き」


名前は真島の腕をはずし、正面に座り真島にそっとキスをする。


「早く帰ってきてね」


「ああ…」


____必ずお前のもとへと帰ってくる…____


真島はそう誓った。

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