短編

□チョコレート
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「ただいま帰ったで〜」


と独り言を言い真島は、靴を脱ぎ
暗くなった部屋を見た。


深夜に帰宅し、もう名前は寝ているだろうとそう思い静かにドアを閉め鍵をかけた。


リビングの電気をつけ、冷蔵庫に向かい中にある水をコップに入れ飲む。


「ふぅ〜」


一息入れしんと静まり返った部屋を見て
いつも何時になろうが、待っていてくれる名前を思い返した。


しかし、今日は名前は先に寝てしまっているのだろう。


その理由は今日仕事に行く前に名前と喧嘩をしてしまったからだ。


ここの所忙しく休みという休みを取れていなかった真島。


それを心配した名前は何度も今日くらいはお休みにしたほうが良いではないか?


と言ってきた。


あまり真島の仕事の事には口を出さなかった名前だったが何度も言うので真島はイラつき


「ごちゃごちゃ うっさいねん!」


と言ってしまった。
その時は名前を無視して家を出た。


しかし、冴島に声をかけられた時開口一番に


「お前…顔色悪いで? 大丈夫か?」


だった。
それから定例会に出席しても上の空


『あれはナイわな〜 名前は心配して言うてくれたんに…』


しかし、反省はしてもすぐには誤りづらく、帰ったらベッドで抱いて許していただこうと勝手に計画立てていたら家の中は真っ暗。


かなり怒っているのだろうと思う。


ため息を吐き、リビングのソファーへと腰掛け
テーブルに何かが置いてあった。


「ん? なんやこれ?」


それは綺麗にラッピングされ何かが中に入っているのだろう。


耳元で少し振るとカタカタと音とを立てている。



そしてテーブルの上に手紙が置いてあった。
ソレを手に取り手紙を広げる。


____吾朗さんへ


今日の朝は何度もしつこく言ってしまい
ごめんなさい。

吾朗さんもお仕事大変なのに…
今日はバレンタインです。

チョコレートでも食べて疲れを癒してください。


            名前


と書かれていた。


真島はチョコレートが入っている箱を持ちながら、名前が寝ている部屋へと足を向けた。



寝室に入ると、閉じている目が少しぬれていた。


ベッドに座り名前の瞳をそっと涙を拭う。


その行為で名前の瞳が開く。


「ごろーさん…?」


まだ少し寝ぼけているのだろう。
呂律がしっかりとしていない中


真島は触れるだけのキスをした。
それを受け止める名前


真島は、名前の右頬を触り
うっすら笑い、名前にチョコレートが入っている箱をみせお礼と謝罪を言う。


「これおおきにな…それと…朝はすまんかった
名前が心配してくれてたんに 酷い事言ってしまった 堪忍」


名前は、真島の話を聞き寝ぼけていた頭がフル回転しガバっと起き上がり


ぶんぶんと頭を振った。


「私の方こそ! ! 余計なこと言って ごめんなさい! ! 忙しいのに」


「ええんや ワシの方が悪いねん」


「ちがっっ 私が! !」


そう言い合い、真島がふっと笑うと名前もぷっと吹き出す。


「あかん 言い合いになってまた 喧嘩しそうやわ」


「本当…もう喧嘩はしたくないです」


ふふふと笑い真島の持っている箱を指差し


「開けてください 今日作ったんです
ボンボンショコラ…吾朗さんの口に合えばいいんだけど」


真島は手にある綺麗にラッピングされたリボンを解き、ラッピング用紙を真島らしく豪快に破く。


そして中に綺麗に並べられたチョコが入っている。


真島は、ヒョイっと口の中に入れた。


「ん うまい そんな甘ないんやな 安心したわ」


名前はふふふと笑い頷く


「はい これなら 吾朗さんにも食べられると思って リキュールが入ってます 私も1つ食べたいな」


「あかん! コレはワシのやから 名前は味見だけや」


そう言うと真島は、深く口付けをした。


「ん……ふっっ」


名前はいきなりの口付けにびっくりしたが先ほど真島が食べたチョコの味がした。


「どやねん うまいやろ?」


「もう…恥ずかしい」


真っ赤になった名前はベッドに潜り込む。


真島は、チョコをベッドサイドにあるテーブルに置き


名前が入っているベッドへ潜り込み
名前を抱きしめる。


「きゃっっ 吾朗さん! ! 体つめたーーい」


「ほなら 名前が暖めてや」


そう言い顔を寄せまた口をふさいだ。
名前は目を閉じながら真島の口内はまださっきのチョコの味がして口元がほころんだ。
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