短編

□四代目の憂鬱
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______最近、遥がおかしい…
どうおかしいと言われても、どう言ったら良いのか分からない。





     四代目の憂鬱





沖縄の養護施設に移り住み新しい子供たちともなれてきたこの頃


遥も中学生となりしっかりしてきた。


「今帰った」


ガラガラと扉を開けて、帰ってきたことを告げるが、誰も返事は無い。


「なんだ…子供たちは遊びにでも行っているのか?」


そう呟いたとき、子供部屋から話し声が聞こえた。


「うん…うん…そうなんだ…わかった…」


遥の声だった。


「何だ電話中か…?」


何となく足がそちらへと歩き出した。


「遥 いるのか?」


いつもなら開いている子供部屋の障子か閉じられていた。


返事も聞かず、すっと桐生は扉を開けた。
遥は障子を背にして話していたらしい。


びくっと肩が振るえ、顔だけこちらを向けて


「あ…おじさん…あのおかえりなさい…あっごめんなさいおじさんが帰ってきたからまた電話するねうん…はーい」


遥は電話を切った。


「よかったのか? 別に電話使ってもかまわないんだぞ 長電話は困るがな」


桐生は腕を組みながら言った。
遥は、受話器を持ちながら、もじもじしていた。


「なんだ? 何かあったか?」


「ううん…なんでも無いんだけど…あのね…もしだよ男の人にプレゼントあげるとすると 何が喜ばれると思う?」


桐生は、遥が今何を言ったのか理解が出来なかった。



__________オトコノヒトニ プレゼント?


しかし、桐生は動揺を隠しつつ冷静に言った。


「そうだな…その何を贈るかではなくて 気持ちが大事なんだと俺は思うけどな」


遥は、気持ち…と呟き、桐生に笑顔を見せた。


「なんだ? 誰かに贈るのか?」


遥は顔を赤くして、ちがうよ! !と手をぶんぶん振って、子供部屋を出ていった。


出て行く遥を視線で追いながら


「………遥も大人になってきたという事か?」


嬉しい反面、悲しいが先立っていた。


ふぅ…と一人子供部屋でため息をついた。








その日の夕方は、遥が誰に何をプレゼントを贈るのかが気になって気になって仕方が無い桐生は


食事中に机の上の飲み物を零したり、かたずけて居る時皿を割ってしまったりと散々だった。


「おじさん…もう自分の部屋で休んだら?疲れてるんじゃない?」


と遥に言われてしまう始末だった。
桐生は、悶々とし自室でうわぁぁぁ〜と悶えてしまう。


その時、桐生の携帯が鳴った。
名前だ。


「もしもし? 」


『あっ桐生さん こんばんは』


「おぅ…久しぶりだな 兄さんは元気か?」


「はい…元気ですよ」


そうか…と笑うが先程の遥が気になって仕方が無かった。


「なぁ…名前少し良いか?」


深刻な声で桐生が名前に言うもので
名前は身構えてしまった。


「は…はい なんでしょう?」


「女の子というのは…その…す…好きな男が出来ると 父親が邪魔になるものなのか?」


「え…? いきなりどうしたんですか?」


「い…いや 遥がどうやら好きな男が出来たみたいなんだ」


「え! ! ! 遥ちゃんが?」


驚く名前の声に桐生はどんどん気が重くなる。


「それで プレゼントがどうやらこうやらと…」


それを聞いた名前は、クスクスと笑い出した。


「ン? なんだ? どうしたんだ?」


「やだ桐生さん…深刻な話だと思ったら そんな事…」


「そんな事って 言ったてな」


「大丈夫ですよ〜 遥ちゃん まだまだおじさんの事が大好きですよ〜」


からかわれたと思い桐生は咳払いをし
話を逸らす。


「で…何のようだ?」


「あっそうそう 遥ちゃんに 今度レシピ送るからと言って下さい」


「レシピ? 料理のか?」


「まぁ…もうすぐ バレンタインでしょ?
大好きな 大好きなおじさんにチョコレートケーキを贈りたいらしいんですって」


「バレンタイン?俺に…」


その話を聞いて、先程の電話の相手が名前だと気付いた桐生は


「名前! ! お前 楽しんでたな! !」


「ごめんなさーい じゃ よろしくお願いしますね」


電話を切った。


桐生は携帯を握り締め安堵の溜息をついた時
障子のドアの前から遥の声がした。


「おじさん? 大丈夫? お風呂開いたから良かったら入って」


桐生はドアを開け心配そうな遥の顔を見て


「ありがとうな 遥」


「え…? 何が?」


「いや…風呂行ってくる」


桐生は嬉しそうに風呂場へと向かいながら遥に言う


「そうだ さっき名前から電話があって 
何か レシピを送るとか言っていたぞ?」


そ知らぬ顔で遥に言うと、慌てた遥が


「えっっ! ? 名前ちゃん 他に何か言っていた? 」


「いや? 何かあるのか?」


ほっとした遥が、別に?とかわいらしいウソをついた。


桐生は風呂に入りながら、これから作られる遥のチョコレートケーキを楽しみにしながら


湯船に浸かる。

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