Present

□月曜日の誕生日
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月曜日の昼下がりの午後3時名無しさんは、ソファーへ寝転びながら、本を読んでいた。


ふと窓を見るととても良い天気。


「良い天気だな〜 今頃真島さんまだ仕事だよね」


真島は自由がきく職業なので、普段は意外と会えるが、この10月はどうしても片付かない仕事が入っていると先日聞いた


そんな事を聞いてしまった名無しさんはわざわざ「私10月誕生日なんです」なんて言えなかった。


「はぁ〜 仕方ない家にいても 気分が晴れないし ちょっと神室町でも行きますか」


軽く化粧をし、クローゼットから服を出す手が止まった。


誕生日に来て行こうと思っていた
よそいきの服に手が止まる。


「これは 今度のデートの時にしよ」


いつも着る服と歩くと思うのでデニムのパンツにした。


髪も真島とデートの時はふわっとくるっと可愛くしているが、そんな気分ではない。


「まっ いっかこのまま下ろしていこう」


名無しさんは、家から出て自分の車に乗り込み
いざ神室町を目指した。









神室中央パーキングに止めアーケードを潜る。
あまり昼の神室町に来ないので、大体来るのは真島と一緒の夜だからなんだかわくわくする。



テクテクとゆっくりそのあたりの店を見る。
大体が飲み屋の看板かあやしい店ばかりだと思ったら


意外や意外昼の神室町は、観光客向けにカフェやら雑貨店、ちょっとお高そうな服屋さんがある。


名無しさんは、天下一通りを抜け、中道通りを直ぐ入った服のショップ店に入った。


店員がいらっしゃいませーと声をかけてきたので少しお辞儀をし服を物色し始めた。


「わっ これ可愛い」


値段を見ると「0」が1つ多い、とても名無しさんには手が出そうも無い品物ばかりで店員に愛想笑いをしてしずしずと外に出た。


「あ〜 あれ可愛かったけどな〜 次のボーナスでたら考えよ」


がっくりと肩を落として歩いているとばったり
真島の子の南と会った。


「姐さんやないですか?」


「あっ 南さん」


「どないしはったんですか? こない真昼間から」


南は目を丸くし驚いている。
そうなのだ普段なら仕事をしているはずの名無しさんがこんな時間に神室町にいるからだ。


「あぁ〜 いや有給をとっていて」


「有給? 有給って事は これから親父とデートですか? あれ? でも親父今日は昼から幹部会って言ってたはずですけど…」


「違うんです 違うんです ただ私お休みもらっててだから たまには奮発して自分にご褒美買っちゃおうかな〜なんて思って」


「えぇ?! 今日姐さん休みなんですか?親父知ってるんですか?あっこれ これ良かったらどうぞ」


缶コーヒーを南がくれた。


「わぁ ありがとうございます 南さんおつかいなんでしょ? 急がないと」


「しまったぁ〜 親父にどやされる
あっじゃ夜は親父とデートっすね」


「どうだろう? 真島さん10月は忙しいって言ってたから まぁ連絡してみますね 南さん本当早く行かないと」


わっわっと南は駆け足で駆けて行った。


『連絡してみますね』なんて言ったが、することはないだろうと思う。


月曜日の仕事始め。ずっと休みの無い真島にたかが自分の誕生日如きで迷惑をかけられない。


誕生日ならまた来年も来る。その時また祝ってもらったら良いし、と自分で自分を慰める。


祝って欲しいと思う気持ちはある。でもそれより真島の身体が心配だった。


「んーー なんか喋ったら喉乾いたな〜」


さっき南からもらった缶コーヒーを飲む。
口を付けただなんとなくミレニアムタワー近くのベンチで休む。


「幹部会なら きっと本部だよね〜」


その目はずっと上にある真島組のある方を見る。


「お前 休みなら言えや」


いきなり後ろから聞き覚えの声がし、慌てて後ろを振り向くと


肩で息をした真島がいた。


「えっ? なんで? 真島さん?あれ? 幹部会は?」


「アホとっくに終わったわ」


そう言い##NAM1##の横に腰掛け、名無しさんの手を握る。


それだけで嬉しくて泣きそうになる。


「仕事…戻らなくて良いんですか?」


「ん? んー… 戻らなあかんけど…」


真島がコテンと名無しさんの肩に頭を預け、はぁ…ため息をつき


「戻りたぁないなー…名無しさんとずっとこぉしてたいわ〜」


そんな子供のような事を言ってきたので、クスリと笑いながら、真島の頭を撫でる。


「頑張ってきてください 私は良い子にしてますから」


「そう言ってくれんのは 嬉しいけど名無しさんは ワシに会いたいとか 甘えたいとか思わんのかいな」


「そりゃー…思いますけど…」


____誕生日だし______


真島は頭を起こし、名無しさんの髪を優しく触り


「ウチで待っといて これで」


チャリ…っと音をたて名無しさんの掌に落とす。


「え…これ」


「合鍵 これでいつでも来てくれてええし ほな パパパバっと片してくるさかい仕事」


ちゅっと軽くキスを落として真島は事務所へといった。


名無しさんは自分の掌にある鍵を見て
震えている。


「嬉しいかも…こんなプレゼント……! !」


キャーーーーっと嬉しさのあまり悲鳴を上げてしまった。





後日、真島に誕生日を秘密にしていたのがバレ
めちゃくちゃ真島にベッドの中でお仕置きされるのはまだ名無しさんは知らない。

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