長編

□even if
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ざしゅっっっ! !

暗闇に赤い鮮血が舞い散る。
真島はその切った相手を見る


そいつは、もがきながら何かを言っていた。


「オレは はぁっはぁ…死ネナイ…
アイツヲシアワセニ…する…」


真島は、そいつの傍に立つと首筋を掻っ切る。


「そら…残念やったな…
来世で幸せになってくれや」


朽ちた相手に冷たい目線を送る。


「…真島 やったか?」


「あぁ… 親父…あらかたここらのチャイニーズは片付けたわ」


「そぉか… ほな 片付けはほかのモンに任して そろそろずらかるで 上にも報告しとかなならんしな」


「…あぁ」


真島が視線を下に落としているので、嶋野は真島に近づき肩を叩く。


「心配せんでも もうチャイニーズは東城会に手だしでけへんわ」


がはははと笑う嶋野は先を歩き真島もその後についていく。





__________もう10年以上前の事だった。


東城会に戦争を吹っかけてくると組の者が報告があり


先に嶋野組武闘派の者が指揮をとり
ほかの組を従えながら中国のマフィアより先にカチコミをかけたのだった。


嶋野の亡き後すっかり忘れていたが、ついさっきその夢を見た。


寝起きの真島は、ふぁ〜と大きいあくびをし自分が居眠りをしていた部屋を出る。


真島が事務所を出ようとすると西田は慌てて真島の後に付く。


真島は西田を見て


「お前はこんでええ ちょーっと出かけてくるさかい 気らせんでええ」


しっしっと西田を追い払う。
そんな事をされても本当について行かないと大目玉を食らうのは目に見えていたので


西田は軽く返事をしながら先を歩く真島の後についていった。


ミレニアムタワーを出ると真島はあてもなく夜の張が降りている神室町を歩く


まだ夏はもう少し先だというのに、夜になっても生温いまとわりが消えない。


真島は少し暗がりの裏道を通る。
誰かと喧嘩をしたいときは、そういった道をわざと通る事にしている。


裏道を通っていたらどこからか悲鳴が聞こえた。


真島は、その声をした方に走り出す。


「なんや? なんや〜 オモロイことでもしてんのか?」


目を輝かせながら走る。
後についていた西田も慌てて真島の後を追いかける。


角を曲がると、そこには男4人に1人の女が迫られていた。


真島は、肩すかしをくらったような気分になり
その場を後にしようと体の向きを変えかけたとき


少し女の顔が見えた。
見たことも知ったこともない顔だったが何故か胸が締め付けられた。


「やっ やめて! ! 近寄らないで!」


必死に男共から逃げようとしていた。
真島は、はぁ〜と盛大なため息を吐く


そのため息が聞こえたのか1人の男がそちらを向いた。


「ナニ見テイルンダ 邪魔ダ 向コウエ イケ」


真島は耳をほじりながら


「なんや中国人かいな…外人もこんなとこで
女を迫るって かわったのぉ〜
人助けはせーへん趣味やけど 見てしまったからには 助けなしゃーないやろがっっっ!」


真島は、声をかけてきた男に拳を食らわし、近くにいた男をその長い足でけりあげた。


蛙が潰れたような声を出し倒れる二人
そしてもう2人も真島に向かってくる。


真島はそれをひょいとかわし、足を引っ掛け2人一斉に倒れたすきに女の手を握り走り出す。


「走るで!」


「えっ…ちょっ はっ はい!」


走り出した2人に後ろで男たちが叫んでいたが
もう真島の耳には聞こえなかった。


人を掻き分けどんどん走り近くの公園のベンチに座る。


「はぁ… はぁ… いけるか?」


女は息を整えながら頷く。


「そうか 女がこんな時間にあんな道にいてるから こうなるんやで 子供は早よう 家に帰るもんや ほな気をつけるんやで」


真島は立ち上がり手をフルフル振りながらその場を離れようとした


女は立ち上がり真島に向かっていう


「ありがとうございました 真島さん」


真島は名乗った覚えがないのでもう一度女の方へと視線を向けると


にこりと笑いながら先ほどの恐怖からか足ががくがく震え


そして真島に向かって倒れてきた。


「おっ おい大丈夫か? 」


その女の顔を見るが気を失っているのか意識を手放していた。


真島は、片方の手で女を支え自分の後頭部をさする。


「どないしよこの子…」


真島は、このまま置いて行ったらまた狙われると思いその女を担ぎ上げる。


後に付いてきた西田がオロオロしながら言う。


「親父どうするんですか?」


「どうするもなにも 気失ってる女をこのままっちゅーワケにもいかんやろ?」


は…はぁ…と気のない返事をした西田を残し、事務所へと足を向けた。
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