恋 〜叶わぬ想い〜

□恋 〜叶わぬ想い〜 参
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谷村との交際が始まって、一ヶ月が経った。


可もなく不可もなく、穏やかな交際だった。


「 名前さん すみません 待ちましたか?」


息を切らせて劇場広場へと谷村は名前を迎えに来た。


その姿を見て名前は首を振る。


「いえ そんなには大丈夫ですか? 汗が」


名前はバックからハンカチを取り出し、谷村の顔から流れる汗を拭く


「あ…どうも」


「いえ」


そうして二人の世界に入っているとき、背後から声を掛けられた。


「あれ〜谷村さん こんな所で何してるんですか?」


聞き覚えのある声だった。谷村と名前は、声がするほうに目線を寄せる。


「えぇぇ〜 名前? ! どうして谷村さんと?」


花と秋山が驚いた顔で二人を見る。










_____喫茶アルプスにて______


「……で? いつからお付き合いしてるの?」


秋山がにこにこと二人を見る。
谷村が いつからって…と名前を見る。


名前は、微笑み


「一ヶ月くらい前からかな ね 谷村さん」


花は、名前の気持ちを知っていたので、眉間に皺を寄せ名前を睨む。


「な…なによ 花 怖い顔して」


花はズズズーっとジュースを啜り


「別に〜 何も聞かされなかったから 谷村さんとの事」


名前は、困ったような顔をして


「ごめんね なんだか言い出しにくくって」


「で? 二人して何処に行こうとしてたの?」


ニヤニヤと秋山が聞く


「ご飯でも食べに行こうかなと思ってましたけど…」


「へーー奇遇だね 僕らも食べに行こうとしてたんだよね?」


ねっと秋山は花を見る。えぇ…と花は言うと、谷村が


「あっ…でも…今日は…」


「ごめんなさい 私達すごい久しぶりに会ったから…ね」


名前は谷村を見て微笑む。
谷村は秋山と花に すみません と謝る。


「ま…僕達も馬に蹴られたくないからね 花ちゃん ほら行こうか」


と秋山は伝票を持ち花を呼ぶが、花は名前を谷村と秋山から遠ざけて


「すみません 少しだけ 名前と話をさせてください」


谷村は名前を見る。名前は頷き


「じゃ…待ってます」


秋山は あらら と言いまた席に座る。


花と名前はアルプスから出て、二人には見えない所で話をする。


「ねぇ…名前 真島さんは良いの? 本当にあの人のこと好きなの?」


あの人とは谷村のことだ


名前は花が自分を心配していてくれるのが嬉しく、微笑みながら頷く


「真島さんみたいな熱い気持ちじゃないけど 穏やかな気持ちだよ それに女は二番目に好きな人と一緒にいたほうが幸せって言うでしょ?」


「……一番も二番も 名前は無いくせに…」


 名前は困った顔で花を見る。


「真島さんの事は少しずつ忘れていく事をしているのそれで谷村さんを好きになれたら…って」


そう思っているの…と名前は花に言っている様で、自分に言い聞かせているみたいに花に言う、


花はもう何も言えないでいた。
必死に名前は真島を忘れようとしている姿は痛々しい。そう花には見えたのだ。


「分かった もう何も言わない でも 本当にコレで言いの?」


うんと頷き、アルプスへと向かう。








一方秋山と谷村はというと、、、、


「谷村さん あんたまだ 名前ちゃん抱いてないでしょ?」


谷村は飲みかけていたコーラーをおもいっきり噴出す。


「ちょ…何してんのさ〜まったく〜」


と秋山が言いながら布巾で、少し自分に掛かったコーラーを拭く


むせていた谷村は秋山に言う


「な…そんな事 あんたに関係ないでしょ? 避け軽なお世話ですよ」


「…でも早く モノにしないと 誰かに取られちゃうよ?」


秋山の言っていることに谷村はまるで真島に取られるような感覚になり、ガタンと席を立ち、ちょうど名前が入って来たので、そのまま腕をひっぱり出て行った。


花は驚いたように谷村を見つめそしてヘラヘラと笑っている秋山を見る。


「社長…谷村さんを怒らせたんでしょ?まったく〜」


秋山は驚いている名前に笑顔で手を振りながら


「ん〜 だってあまりにも あの二人ギクシャクしていたから はっぱをかけてあげただけたよ」


クククと笑いながら花を見た。
花は呆れながら


___でも 動いたら名前も少しは…忘れられるんじゃないかな?____


と考えていた。





天下一通りのアーチをくぐりぬけ神室町を出ようとしていた谷村に名前は焦りながら言う。


「た…谷村さんどうしたんですか?」


谷村はちらっと名前を見て、言った。


「…食事…家で食べませんか?」


「家って…谷村さんの? お家で?」


名前は首を傾げた。
谷村は頷く、


「えぇ…それは構いませんけど…今からスーパー行くには遅すぎませんか? 作るとなると…」


名前は『手料理』の事ばかり考えた。


「い…いえ 作るとか…買って行っても良いですし…だから…その そういう意味じゃなくって…」


谷村がしどろもどろになりながら名前に言う。名前は、はっとして 谷村の顔を見る。谷村もやっと気付いてくれた
名前に


「嫌じゃなければ…ですけど…」


名前は顔を真っ赤にさせて首を振る。


「あ…えっと…はい…」


初めてではないが、そんな風に誘われるのは初めてだった。


2人はタクシーに乗り神室町を後にする。


タクシーに乗りながら遠くなる神室町のネオンを見ながら名前は


___これで…いいんだよね? ____


自問自答して瞳を閉じる。
閉じたまぶたの中に真島が思い出されたとき
ぎゅっと谷村に手を握られた。


名前は谷村の顔を見て、戸惑いながら笑う
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