夜に逢いましょう

□あなたと私と検査薬 ! ?
1ページ/13ページ

名前と真島はセレナに向かっていた。
 

2人は手を繋ぎ歩く、なぜか今はそうしたかった。


しかし歩くたびに、名前は通行人から好奇な目で見られてそろそろ耐えられなくなっていた。


「あの 真島さんそろそろセレナに着きますよね? 手を…手を離していただけます?」


「いやじゃ やっと苗字ちゃんが心を開いてくれて来たんに離すかいな」


真島は繋がっている手をぶんぶん振った。
その振動で名前が前のめりに倒れそうになった


「おっと すまんすまん」


真島は名前を後ろから抱きとめた。
名前は抱きとめた真島の腕を両手で掴んだ


「真島さん…このままで良いから聞いてください」


と前から真島に問いかけた。何かと思い、真島は、ああ と言った。


名前は掴んでいた掌をぐっと力を入れた。


「私……あの…言わなければいけない事があって…私」


真島は嬉しさのあまり、コレでもかというくらい名前を抱きしめた。


「やっとその気になったか! !」


「ちょ…真島さん最後まで話しを聞いてください! !真島さんが思っていることではなくて! !」


「あかん! !もう名前はワシのじゃ! !」


「ちょ! いきなり呼び捨て! !…もう…」


ぎゃーぎゃー言いながらセレナに入った。


「真島さんどうしたの?」


セレナのママが驚いて二人を見た。
そこのスチールに座っていた男も2人を凝視していた。


「…兄さん 何やってんだ」


「桐生ちゃん 聞いてや〜こいつ今しがたワシの女にしてくれと言ってきたんに まだそんなこと言ってへん てな言いよんねん」


「ちょっと真島さん! ! いつ私がそんな事言いました?」


「言ったも同じやんか」


名前は まったくもう…と言い


セレナのママとスチールに座っている男に向かってお辞儀をして


「煩くしてすみません私 苗字名前と言います」


「よろしく 名前さん 真島さんの良い人なら是非来てくださいね」


「ありがとうごさいます 友達と来ますね」


「ええ そうして頂戴」


そして名前は男を見て、にこりと笑い
男は手を差し出し


「桐生だ 兄さんとは長い付き合いだ よろしく」


「はい 宜しくお願いします」


「そんな 堅苦しい挨拶抜きにして ほれ座って飲もや」


と良い真島は桐生の隣のスチールに腰掛けた
名前は必然的に真島の隣に座った。


ママからお手拭をもらい名前は手を拭いて


「私あまり今飲めないんで 軽くでいいです」


「じゃ グラスビールで良いわね」


テーブルの前にグラスビールが置かれた。


「なんや 名前飲まんのかいな?あん時はめっちゃ酔ってたんに」


「あ…あれは…その…それに今はあまり飲みたく無いっていうか…」


としどろもどろに名前は言った。


「あの時? そーいや兄さん達は どうやって知り合ったんだ? 見た感じ苗字は堅気だし 飲み屋の女…とは違うしな」


「ぐふふふ 聞きたいか?桐生ちゃん」


と怪しい笑い方をして桐生に2人のいきさつを話そうとしたが、慌てて名前が真島の口を塞いだ


「ま! !真島さん いいからそんな事言わなくて き…桐生さんもいいですからそんな事聞かなくて」


とあまりにも勢いよく言う名前を見て
桐生も ああ…わかった と頷いた。


「なんやねんな ワシと名前の愛のメモリーなんに…ま ええわ また教えたるわ」


真島は自分のいつもの酒を一口飲んだ
その時、名前の携帯電話が鳴った。


「あ…すみません ちょっと出ますね」


名前は2人に背を向けて、電話に出た。


「もしもし? あ咲? そか〜今日だっけ?ごめん 忘れてた 今何処? 分かったすぐ行く もうちょっと待ってて」


と名前は慌しく携帯電話をしまい、真島を見て


「ごめんなさい 真島さん今日友達と会う約束してたんでした…あっ…」


焦っていた名前は鞄の中身を床に落としてしまった。



「え〜せっかく会えたんに〜なんやねーん」


とぶつぶつ言って、名前が落とした鞄の中身を拾いそして、真島の手が止まった。


そこには、紙袋の中身が少しだけ見えていた。


「真島さん? どうし……」


真島が取ろうとしていた紙袋を名前が奪い取り慌てて鞄にしまった。


「あの…ごめんなさい 今日はこれで すみません! !」


名前は鞄を掴みお辞儀をして、セレナから出て行った。


残された真島は、まださっきの固まったままだったが、桐生が


「兄さん…今の紙袋の中身…もしかして…」


ばっと 真島は桐生を見た。


「やっぱり そうやんな…あれって」


「妊娠検査薬…」


セレナのママが言った。


そう名前の鞄の中には妊娠検査薬が入っていた。


「せやんな…あれ 妊娠検査薬やんな」


真島は一人で呟き、名前が出て行ったドアを見た。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ