短編

□蝶
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「え〜 デート? なんで私と? 真島さんなら
他にもきれいなお姉さんがいっぱいいるでしょ〜?」


「おっ ワシの名前知ってるんやな」


真島は自分の名前を知っていてくれていることに
気分がよくなった。


名前を知っているだけでこんなにもニコニコする大人はどうなんだろうと思いながら名前は
呆れながら


「よく 知っていますよ?この神室町に知らない人はいないんじゃないんですか?」


そーか そーかと嬉しそうに頷きながら名前を見る。


「で どないやね〜んワシとデートするか?」


「だから 真島さんにはよってくる女の人なんて
沢山いるんでしょ? なにもこんなガキ相手にしなくて…も…」


そう言いながら、名前は真島の顔がニコニコから真剣な顔に変わって、少し恐怖を覚えた。


「ほーか ほな嫌やなんやな?」


「べっ 別に嫌なわけじゃ…」


その言葉を聞いて怖かった顔が、ぱぁ〜と明るくなる。


「ほな 行こうや」


騙された名前は、承諾をした。


「もうすぐ父が帰ってくるので それからですけど 良いですか?」


真島は、カウンターにおいてある時計を見ると
時刻は17時をまわった所だった。


「ほな 外で待っとるわ 後でな〜」


とひらひら手を振り外に出た。









「本当に待ってたんですか?」


真島はことぶき薬局の前にヤンキー座りをしながらタバコを吹かしていた。


少々呆れながら名前は真島を見下ろした。
真島の足元には数本タバコの吸殻が落ちていた。


「遅かったやん 凍えるところやったわ〜…さて
どこいく? とりあえずメシ行くか?」


スタスタと歩き出した真島に後ろから付いていく
が、名前は戸惑う


「ちょっ ちょっとあの! ! 困るんですけど
こういう事されると」


前を歩いていた真島は、くるりと振り返り
目線を名前に合わすために、顔を近づけた。


急に間近に真島の顔が近くに来て名前は、顔を仰け反らせる。


「な…なんですか?」


「確かに…こんなおっさんとメシは嫌やんな〜
ほな名前ちゃんに合わせるわ
何したい?」


そんな事を言われたら、何がしたいと言われても
今は、お腹が減っている。


「真島さんは お食事は何処に行くつもりだったんですか?」


真島は、手を顎にあてせやな〜と顎をすりすり擦る。


「とりあえず ミレニアムタワーのレストランでもと思ったけど…」


「えええ! !  私そこらのキャバクラのお姉さんじゃないですよ? しかも服ジーンズだし」


真島は、そう言われて名前の服装を見る。
確かにこんな格好では、あのレストランには入れんな〜と考えていた。


はぁ…とため息をついた名前は


「じゃ…私がいつも行く スマイルバーガーで
いいですか?」


今度は真島が、驚く番だったがここは大人になって相手に合わせた。


「……ええで そこ行こか…はぁ…」


「あきらかに嫌そうですね… 分かってます?
私高校生なんです」


「わかったわかった」


二人は歩き出した。




「いらっしゃいませ〜」


店内に入ると、真島は辺りを見回すと
高校生と思われれるガキ…もといお子様達が
キャッキャッ話していた。


「名前ちゃん 任せてええか? ワシ席座っとくわ」


「はい 適当で良いですか?」


「おう これで払っといて」


ぽんっと財布を渡された。
その分厚い財布に驚いた名前。


「え…こんなに…えぇぇぇぇ〜」


注文を済ませて、お金を払い真島がいる席に行こうとすると呼び止められる。


「名前! ! 何してんの? 暇だったら遊ぼうぜ〜」


がしっと肩に腕をかけられる。
いきなりの事で、名前はバランスを崩し、


トレーに乗っていたジュースやハンバーガーが落ちてしまった。


「ああああ! ! ちょっと! ! 」


文句を言おうとしたら、相手は同じクラスの保徳だった。


「ヤス〜 ちょっと〜どうすんのよこれ! !
弁償してよね! !」


名前は、文句を言っていたら
真島が傍に寄ってきた。


「どないしてん名前ちゃん あぁ〜
しゃーないのぉ〜って 誰や?こいつ」


真島は保徳を睨む。


「クラスメートです ちょっと重たい! !」


ぐいっと保徳の腕をどかす。


「……クラスメートか」


「おっさんこそ 誰だよ名前は俺の彼女になる予定なんだから なっ これから遊ぼうぜ」


真島は、二人の様子を見てなぜかむなしくなった。


___あほくさ 何ワシ空しくなってんねん___


真島は、財布から万札を数枚だし名前に渡す。


「これで ボーイフレンドと遊んできい ワシはまた今度でええさかい ほな」


スタスタと名前の傍から離れた。


「まっ 真島さん! !」


ひらひらと手を振り店内から出て行った。
後ろから名前の声が聞こえたが、今は何故かこの場を去りたかった。
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