長編

□仮面
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___4時30分


名前が家に着くなり峯の携帯番号などを登録する。


そうすると、LINEが勝手に峯の電話番号を登録したと気付いたらLINEの無料電話が掛かって来た。峯からだった。


「もっ もしもし?」


緊張で声が上ずる。


『早速 登録していただいたみたいで
ありがとうございます では今夜食事でもどうですか?』


「あっあの…」


『はい なんですか?』


「冗談ですよね?」


『…私は冗談が嫌いです』


「だって いきなりこんな事って」


『6代目にも薦められましたし 私は貴女に興味が沸きましたし…とりあえず食事でも貴女のお父様の組に迎えに行けば良いですか?』


名前は何を言っても峯には勝てないと思い返事をした。


『では…6時に迎えにあがります』


そう事務的に伝えられ電話は切れた。
名前は盛大なため息を吐き、何を着ていくか悩んだ。


クローゼットから服を引っ張り出し、無難なサーモンピンクのワンピースを選んだ。


時計を見るともう5時だった。
名前はソレを着て、適当に少しだけ化粧をすると、自分の家から組までは30分はかかるので車で行くことにした。


名前が組に着くと、見知らぬ車が止まっていた。


それは世に言う、あの有名な真っ赤なスポーツカーだった。真っ赤ではなく黄色だったが。


名前が組の裏口から入ると慌てて若頭が名前の前に飛んできた。


「名前さん大変です! 白峯会の峯組長が
名前さんを迎えに来ています」


「えええ?! 」


腕時計を見るが
まだ5時30分を少し過ぎたくらいだった。


「どこにいるの?」


「今親父と居間に」


「分かった ありがとうあんたは 着いてこなくても大丈夫」


名前は峯が居る居間に向かった。


「すみません お待たせしました」


名前は慌てて居間に入ると、父と峯が鎮座していた。


「名前さん 少し早く着きすぎました
すみません」


「い いいえ 私こそお待たせしてしまって…」


峯は立ち上がり名前の傍に来ると


「あぁ…その服とても似合っていますね」


そんな台詞を言われたの初めてで名前はぽかんとしてしまう。


そんな名前を残して歩き出す。
名前は父の方を振り返る。少々心配そうな顔をした父に頷き歩き出した。








名前は助手席に乗り峯をちらりと見る。
淡々と運転をしていて、何故いきなり自分を誘うのかが分からないでいた。


「…私の顔に何か付いていますか?」


「えっ いっいえ すみません」


バッと視線をそらすと、ふっと笑う峯がいた。


「別に貴女をどうにかしようとは思っていませんよ ただ…」


「ただ?」


名前は、峯の言葉を待つと、峯は言葉をつぐむ


「いえ…なにもありません もう直ぐ着きます」


そういうと峯の車は高級ホテルへと向かった。
ホテルマンが、運転席を開ける。


「いらっしゃいませ 峯様」


「ああ 車頼んだ」


そう言うと、峯は助手席を開け


「どうぞ」


とスマートな動きで名前に手を差し出す。おずおすと峯の手を取ると助手席から出る。







ホテルのレストランでは、峯が予約をしていたようで、窓際の席に案内された。


名前は、こんな高級料理をあまり口にしないし、マナーなど分からなかった。


すらりと並んだフォークとナイフ。
名前は峯に言う。


「あっ あの…私こんな所のマナーあまり分からないんですけど」


峯は食前酒を口にしながらにやりと笑う。


「いいですよ 食事は楽しむものなんですから
気にせずに 食べましょう」


そう言うと、峯はフォークを取り前菜をブスリと刺し口に含む。


マナー的にはあまり宜しくないが、峯は名前の緊張をほぐすように食べ始める。


そのおかげで、2人の間にはピリリとした緊張感が無くなり、食事を楽しんだ。


食事が終わり、会計もまたスマートにこなす峯に好感をもった名前。


席を立ちエレベーターの中で、名前はお礼を言う。


「ごちそうさまでした とっても美味しかったです」


頭を下げると、峯はまたふっと笑う。


「貴女の慌てふためく姿とても可愛らしかったですよ」


「やっ やだ やめて下さい恥ずかしい」


名前は赤くなる顔を両手で押さえる。


「では まだ時間が早いですが 家までお送りしましょう」


「えっ? いいえ そんな悪いですから それに組に私の車も置いてあるので」


そう断ると、エレベーターが一階に着く


「そうですか わかりました」


そう言うと峯は歩き出した。
何か怒るような事を言ったのだろうかと慌てて峯に駆け寄る。


「あっあの なんか申し訳ないです 折角峯会長が送ってくれるって言って頂いたのに」


峯は歩みを止め、


ゆっくりと名前を見て言った。


「会長なんて言い方やめて頂きたい それに敬語も」


「えっ あっはい 分かりました…みっ峯さん?」


峯はクスと笑い


「なんで 最後にハテナなんですか
別に怒ってはいませんよ ただ残念なだけです」


「残念?」


「ええ 貴女ともう少しドライブがしたかったので」


さらりと口説かれ名前は口をパクパクしてしまう。


「そんな 驚かなくても…6代目にも薦められましたし どうです? 私とお付き合いしてみませんか?」


名前は峯の言葉で驚き手に持っていたバックを落とした_____________
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