長編

□even if
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真島は昨夜は事務所に泊まった。
拾った女を事務所に寝かせたからだ。


真島は、カーテンの隙間から朝日が自分の顔に当たり目を覚ます。


隣に寝かしていた女がいないことに気付くと真島は、がばっと起き上がる。


「あの アマどこいったんや?」


下着姿で寝ていた真島は、ソコに転がっていたはずのいつもの皮のパンツが無く

あたりを見渡すとテレビの前のガラスの机に綺麗にたたんで置いて在った。


ちっと舌打ちすると真島はソレに足を通しその横にまたまた綺麗にたたまれているジャケットにも袖を通した。


真島は、事務所へとつながるドアを開けたとき
戸惑っている組員の声が聞こえた。


「なんや〜 朝っぱらから けったいな声出してからに〜」


「あっ 親父 おはようございます 
それが 昨日の助けた女が…」


西田がその女を見る。
真島も西田の目線の先の女を見ると


組員などの机を綺麗に掃除をしていた。


真島は女へと足を運ぶ
女は真島に少し驚いた顔を向けると頭を下げた。


「昨日は助けていただいて 本当にありがとうございました」


「ああ」


「昨日のお礼を兼ねて ここのお掃除をしていました」


そう言うと、またその女は手を動かす。


「えーっと その」


「名前です 苗字名前」


「ほな苗字ちゃん ここでなにを…」


「見て分かりませんか? 掃除です」


「いや… そうやなくて…」


「ここは 男の方ばかりで少しというか かなり ぐちゃぐちゃですね」


「そうなんすよ〜 ここだけやのうて
ほかの階も それはもう腐界の森でっせ〜」


余計なことを言い出す南の頭をゴンと思いっきり殴る。


「まぁ… そうなんですか…」


「まーええわ 兎に角 気ィついたらもう大丈夫やろ もう掃除はええ 他のモンにやらせるから 苗字ちゃんは 帰ってくれてもかめへんから」


名前は真島の手をとった
いきなり手をとられたので驚くと


名前の顔は真剣そのものだった。


「なっっっ!」


驚いた真島は固まり名前を見る。


「お願いします! ! 私今人を探していまして
その間だけでも ここで雇っていただけないでしようか?」


「はぁーー???」


真島は驚きすぎて今まで出したことのない声を上げてしまった。


「そんなん あかんあかん 女、子供が出入りするトコやない もっとまっとうなトコあるやろが」


「でも 真島さん…」


「あかんもんはあかん ほれとっとと帰れ」


真島は話しを聞かずまた組長室に戻ろうとすると後ろから鼻を啜る音が聞こえた。


「・・・・・・・」


眉間に皺を寄せため息を盛大に吐き振り返った。


今にも目から涙が出そうな瞳が自分を見つめていた。


「・・・・ワシに女の涙通用すると思うか?」


名前はぐっと力を入れながら


「思いません」


「こないな事で泣かれてたら 仕事もないで」


「泣いてません! !」


「〜〜〜! ! ほなその目に溜まってるモンはなんやねんな! !」


「汗です! !」


「アホか! ! やっとられんわ! !
西田! ! この女はよう追い出しとけや! !」


そう言うと真島は思いっきり組長室のドアを閉めた。
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