長編

□あなたを…したい
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「ほな… 行ってくるな」


玄関でいつもの靴を履き、見送りする名前にキスをして、出て行った。


名前はとりあえず、今日の夜神室町へ行こうと決心、それまで部屋の掃除をして、身なりを整えるために動き出した。


迎えに来ていた車に乗り込む前に、二人の部屋の窓を見て車に乗り込んだ。


「親父?どうしました?」


バックミラー越しに西田が真島の顔色をうかがう。


真島は少し考えながら


「いや…ええねん なんもないわ」


耳を触りながら外の流れる景色を見た。












一方その頃、名前は身支度を整えながら神室町に向かう準備をし、真島に連絡を入れた。


『今日も遅いですか?晩御飯はいりますか?』


いつもはなかなか既読が付かないのに、今日は直ぐ既読が付いた。


『すまんな 今日も遅なるわ 組の連中と食べるから気にせんでええで』



名前は少し残念だったが、『オッケー』のスタンプを押して、玄関へと向かう。


姿見を見て髪を一つにまとめてキャップの中に入れた。


もしも神室町で真島に会うといけないので、いつもは全く着ない名前らしさの服ではない。


昔少しだけ若いころよく着ていたスポーティータイプの服だ。
真島があまりこういったダボ付いた服は、好みではないので、奥深く眠っていた服を引っ張り出した。


「うん この服全く真島さんの前では着てなかったし 大丈夫!!」


スニーカーを履き、表に出る。
もうすぐ夜が来る時間だ。


電車で新宿まで行くつもりだったので、最寄り駅まで自転車で行く。


駅の駐輪所に自転車を置き、最寄り駅構内についた。あとは電車が新宿まで運んでくれる。


少し真島をだましているような罪悪感はあれど、わくわくしている自分がいた。


「次は〜新宿〜」


アナウンスが流れドア付近に立つ、ドアが開き東口改札口を目指す。


少し歩き、ドン・キホーテがある通りを歩きチャンピオン街を目指す。


真島の組があるところへは近寄らないようにして歩を進めた。


夜の神室町は一人では歩かないので物珍しくどこを見てもギラギラしていて目が痛い。


キャップを目深にかぶり直し、ミレニムタワーの前を通り過ぎた時。


後ろから笑い声が聞こえた。
そこは以前勤めていたエリーゼから出てきた真島と数人の真島と同業だと思われる人たちだった。


名前は思わず、体を小さくしながら早めに歩く。



『なんでこんなにも早く真島さんに会うんだろう?』


やはり悪いことはできないと思いながら、真島から離れた。


声も聞こえなくなり、ほっとしながら歩くが後ろから、キャバ嬢らしい女性の声がしたと思ったら、真島の気だるい返事が聞こえた。


「ひっっっっっ!!!」


名前は自分の後ろにいる人物と、なぜ女性と歩きこれからどこへ行こうとしているのかで驚きの声が出てしまった。


あまりにもショックで、歩が止まり視線を下にしたら靴ひもが片方解けていた。


これから真島の行くところを尾行しようか迷う。


もし、もしもの場合どうするかまったく今は答えは出ないが、真島に限ってそんなことはないと信じていた物がガラガラと音を立てて崩れていった。


名前はしゃがみ解けた靴ひもを縛りなおす。


その間に真島のあの靴が通り過ぎた。


はぁ…とため息をつき、重い腰を上げ正面を向くと、先に歩いている真島の背中を見た。


「真島のアホ この浮気者」


小さい声で背中に言うと、真島の足が止まり肩越しに後ろを向く真島と目が合いそうになると、キャップを被りなおす動作をして、真島とは違う方へと歩みを進めた。


完全に目が座った名前は真島を自分なしじゃいられない体にしてやろうという目的に変わってしまった。


「絶対……おしおきしてやる」


そう呟き、亜天使に向かう。



違和感を感じた真島は、男なのか女なのかわからん奴の背中を見て眉間に皺を寄せた。


「真島さん? どうかしました?」


「いや… あいつ お前の知ってるやつか?」


キャバ嬢は真島が指さす方を見るが全くもって知らない人だったので


「知らない人ですけど… あの人女の人ですよ
真島さんの知り合いじゃないんですか?」


今度は真島が質問された。
眉間に皺を寄せ目を細めながら見ると、背丈と体つきはどことなく名前に見えた。


「まさか…」


と呟くとキャバ嬢に引っ張られながら、歩き出す。


どこか不安を残しながら――――――――――
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