ただただ逢いたい

□過去の恋 今の愛
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名無しさんは慌てて店に戻り、自分の荷物を掻っ攫うように取って、店の人たちにも挨拶そこそこにダッシュで、自分の車に乗り込み
エンジンをかけ、車を発進させた。



別に隠すようなものは、家には置いていないが、


なぜ真島が自分の家の鍵を持っているのかを問い詰めなくてはと名無しさんは思っていた。








「只今戻りました。」


と真島が居るであろう部屋に向かって発した。


しかし、真島は姿を現さない。
名無しさんは廊下とリビングが繋がるドアをそっと開けた。


そこには体を丸めて寝ている真島が居た。
名無しさんは真島に近づきそっとその寝顔を盗み見した。


−−普段はなんとなく凄みのある顔だけど、寝顔って意外とかわいらしいのね−−


クククと笑った。


少し真島の寝顔を見ていたが、真島が風邪を引くと大変なので、寝室からうすでの掛け布団を持って真島に掛けた。


名無しさんは真島を起さずリビングでコーヒーを飲みテレビを見ていた。


−−きっともうすぐ起きるだろう、起きたらご飯でも食べに行って、またこの前も行けなかったバッティングセンターに連れて行ってもらおう−−


と考えていた時 真島の声がした。


起きたのかと思い近づく


「真島さんおき−−」


名無しさんの笑顔が固まった。
真島の右の目がうっすらと濡れている。


そっと触れてみる…やはり涙だった。


名無しさんは濡れた自分の指先の濡れた所をじっと見た。


その矢先、真島が何かを言った。
耳を傾けると、謝罪の言葉だった。


「…ん…雪穂…すまん」


「その人が…やっぱり忘れられないの?」


名無しさんの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。








一時間ぐらいしてから、真島は起きた。
なにやらとてもいい匂いがしたからだった。


「…名無しさんちゃん?」



「ああ…真島さん起きられたんですね。
もう少し待ってください もうすぐ出来ますから」


とキッチンで何かを作っていた。


真島は名無しさんに近づき後ろから抱きしめた。
名無しさんはびくっと体を強張らせた。


「あ…あぶないですよ 真島さんあと少ししたら出来るんで待っててください」


「ん〜悪かったな寝てしもた」


「いえ…お疲れだったんですね」


真島は名無しさんの首筋に顔を埋めた
そして首筋にキスを何度となく繰り返す。


「ゃ…や…ダメ」


と体を震わす名無しさん。
真島はその姿を見たく続けてみた。


「いやーーー! !ダメだったら 真島さん! !」


と名無しさんはその場にしゃがみ込んだ
名無しさんは涙を溜めながら震えて笑っていた。


「……なんや それ 名無しさんちゃん首あかんのか?」


と聞いた。名無しさんはふるふる震えながら俯きこくこくと頷いた。


俯いたのは涙を見られたくなかったから…
真島はさっきの謝罪の寝言は無意識に言ったのだから、あえて聞かなかったことに決めた。


きっといずれ話してくれる機会が出てくるまで待とうと決心した。



「すまん すまん首あかんのか〜なんや色気ないの〜」


と真島はしゃがんで名無しさんをこっちに向かせキスをした。


「…涙が出るくらい あかんのか」


と微笑みながら左手の親指で涙を拭った。
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