恋 〜叶わぬ想い〜

□恋 〜叶わぬ想い〜 壱
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「ここだよ 冴島さんのお宅は」


秋山と名前は冴島組の前にいた。
そこは元笹井組が組を構えていた場所だった。


笹井組よりは大分建物は大きく、立派だった。


「はぁ〜…」


それしか、名前は言葉が出なかった。
名前が門構えに、少し躊躇していたら


門が開き、中から若いスカジャンを着た男が出てきた。


「秋山さん どうぞ 親父がお待ちです」


前もって、秋山が事務所に来ることを伝えていた。


「悪いね 城戸ちゃん時間作ってもらっちゃって」


秋山が片手を挙げて、挨拶をする。


「いえいえ 大丈夫です どうぞ そちらの方も」


名前は、お辞儀をして秋山と一緒に門の中へ入っていった。








「ちょっと 待っててくださいね 今親父呼んでくるんで」


城戸は、秋山と名前を応接間のソファーに座らせて、部屋から出て行った。


名前は緊張か、それとも恐怖か手に震えが出てきて、両手を握った。


それを見ていた秋山が


「大丈夫だよ そんな怖がらなくても」


と肩をポンっと叩く。


「あ! ! い いえ いえ 怖くは無いんですけど 上手く気に入られるか…心配で 私見た目
子供ぽいし…」


はぁ〜とため息をつく。


「あぁ…」


秋山は確かに…と思った。
名前は花と違い、小柄でとても成人しているとは、思えない容姿なのだ。


名前が緊張している時、部屋のドアが開いた。


名前は立ち上がり、お辞儀する。


「ええ ええ 座り」


冴島が、座らす。
名前はまたソファーに腰を落とす。


「お時間作っていただき ありがとうございます冴島さん」


「かめへんよ で…昨日言ってた子か?」


冴島が名前を見る。
名前はぺこりとまたお辞儀をして
挨拶をする。


「は…初めまして 苗字名前です」


「また えらい若い子やな〜 城戸ちゃんより若いんちゃうか? 一体いくつや?」


秋山も名前の年は知らなかった。
花と友達なら、それなりの年だとは思うが想像つかなかった。


「はい 今年で 32です」


秋山はえぇ?! と驚き、冴島は目を見開いた。
全然そんな風には見えなかった。


名前は、鞄から履歴書と運転免許証を取り出し冴島に渡す。


「また えらい丁寧やな ま…わしは嫌いや無いで」


と履歴書に視線を落とす。


秋山は名前に、つめより


「本当に32歳? 俺より一つ上?」


「ええ…秋山さんの年齢は知らないですけど 32ですけど…見えないですよね」


いやいや…と秋山は濁す。


「ほんで いつから来られるんや? こっちとしては 早く来てほしい」


「はい…慣れる為にも全然私はいつからでも」


冴島は、ほな今日からでも?と言ってきたので
名前は、是非とお願いした。


「ほんなら…名前 ここは世間からは やくざと言われる生業やけど かめへんな? それを確認したい」


名前は、頷き


「はい 頑張って働かせていただきます」


冴島はうん と頷き


「ほな 主にワシの身の回りの世話を頼むわ 色々説明させるから  おい! ! 城戸ちゃん ちょう来てくれや」


城戸は、すぐドアを開けた。


「はい」


「名前にここでの事を色々教えてやりながら 案内してや」


「はい 分かりました じゃ…こっちにいいかな?」


城戸はちょいちょい と指で名前を呼ぶ


名前は立ち上がり、冴島と秋山に


「お仕事頑張りますので 宜しくお願いします
秋山さんありがとうございました 花にも伝えてください」


「おう まぁ…そんな肩肘はらんでもええ 自分のペースできばりや」


「いいよ〜そんなお礼なんて」


と二人から言われ、微笑みまたぺこりとお辞儀をして、城戸のそばに来て


「宜しくお願いします」


と言い、また微笑んだ。
城戸は、すこし仰け反り、お、おう じゃ…こっちにと言って、二人は部屋から出て行った。


冴島が


「そういや 花は元気か? この頃顔見てへんしな」


「はい 元気にこの前なんか 寿司吟のネタを端から端までおごらされましたよ」


と秋山はうな垂れた。それを聞いた冴島は、豪快に笑い。そいや…と話をつづけた。


「名前は花の知り合いなんか? さっき礼をいっと言ってくれて 言っとったけど」


「えぇ 名前ちゃん花ちゃんと友達みたいですね〜 会社首になった〜って泣き付いて来たから そうとう仲が良いと」


「そうか! ! 花と友達なんか…ちょう待ち 会社首ってなんでや?」


冴島は首をかしげた。
秋山は、あぁ…と言い わけを話す。


「なんか会社のお客さんに 夜の相手に誘われて 断って ちょっと頭にきたみたいで こう男の急所を…」


秋山が片足で蹴る振りをする。冴島は唖然とした時、後ろから


「おっもろい子やな〜ひゃひゃひゃ〜」


腹を抱えて、笑った人物真島だった。


「兄弟いつの間に 来てたんや」


「ん〜ついさっきやで なんや 女連れてきたんか 金貸し」


「真島さん いい加減名前覚えてくださいよ 
女じゃないですよ ここで働くのを紹介したんですよ」


「なんやて? 女をここの組員にすんのか? 兄弟? !」


真島は、冴島に詰め寄った。冴島はちゃうちゃう
と手を振る。


「ワシ身の回りの世話のをまかすんや なんつーかお手伝いさんやな」


「なんや…組員にすんのかとちょっと おもろかったんに…」


真島は、後頭部を両手に預けソファーに深く腰掛けた。


「兄弟頼むから 怖がらせんといてくれや」


「怖がらせてなんか今まで無かったで」


真島は、冴島の所に入ってくるお手伝いさんを良くかまう。


容姿が容姿なだけに、入ってくる女の家政婦は三ヶ月を経たずに辞めていく。


「兎に角 頼むで 兄弟」


と念を押された真島は、へいへいと言い立ち上がり、部屋を出て行った。
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