恋 〜叶わぬ想い〜

□恋 〜叶わぬ想い〜 弐
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静まり返るキッチンで、最初に言葉を発したのは名前だった。


「あ…あの すみません 変な話を聞かせちゃって…」


「かめんへん 別に」


名前は、冴島に引きつった笑顔を見せる。そして目線を逸らし俯く


「…別にどうこうしようとは思わないんです
ていうか どうこうしても相手は真島さんですし
相手にしてもらわないことは 十分分かっています」


ははは、とカラ笑いを零す。
冴島は

「ほんまに それでええんか?」


名前は、こくんと頷く
その姿に冴島はもうそれ以上言えなくなり


冴島は、名前の頭を撫でながら


「ほな なんか我慢きかんくなったら わしに言えばええ」


ありがとうございますと、瞳に涙を溜めながら笑う。


「わ 私だってなんでも聞くよ 聞くからね」


と花も冴島につづく


「うん ありがとう 私も秋山さんの愚痴聞くからね」


2人は、目を合わせて微笑む


「でも いつから そんな気持ちになってたんや? まったく気付かんかったで」


「いつからって…初めは苦手だったんですけど
一緒に話していると楽しい方だったり 笑顔が…そのいいな〜って いつもここに顔出してくれて 出してくれない日には何故か落ち着かなくて ついつい探しちゃって… すみません こんな話聞きたくないですよね」


「いや…男の俺でも兄弟は男らしいと思うことあるし かめへん」


「でも…告げる気は無いんだよね?」


名前は、こくんと頷き


「先日 谷村さんと会ったとき 私の気持ちばれちゃいまして…それでその へこんでただけなので 私の気持ちでへこんでたわけではないんです
だから 心配しないで下さい」


冴島はまた名前の頭を撫で


「よし これから 飯でも食いに行こや 城戸ちゃんも誘ってあるから」


花は、冴島の言葉に飛びつき 私韓来の焼肉がいいです と言う


それを聞いた冴島は よっしゃ ほなそれにしよか と話を進める。


「あ…でも 集金 一度スカイファイナンスに行って戻ってきます」


花が言うので


「ほなら バッティングセンターの前で待っとく
わ」


花は 名前に また後で と言い
凄い速さでキッチンから出て行った。


冴島も少しの間だけでも仕事をすると言い 出て行った。


残された名前は、また椅子に腰掛け
はぁ〜とため息を吐き


「とうとう 認めちゃった…ああぁぁ〜
忘れなきゃ」


名前が一人で気持ちを落ち着かせていると
隣の組員達が泊まる部屋から真島が出てきた。


名前は、驚き椅子から立ち上がる


「ま…真島…さ…ん」


_____聞かれた? でも今まで寝ていたような顔…


「おう…名前ちゃん よう寝たわ〜 なんや話し声聞こえたけど 誰かいてたんか?」


ふぁ〜と欠伸をしながら名前に聞く。


______聞かれて…ない?


「ええ…誰か? …あ…あぁ! ! えっと…さ 冴島さんと…は 花が…さっきまで…」


動揺しすぎて、何を話して良いかわからなくどもる。


真島は名前の顔を見て、ふっ…と笑い
肩をぽん と叩きドアの方に歩き出して
名前が居るキッチンから出る瞬間


「あっ…せや 名前ちゃん」


聞かれていなかった事に安心しきっていた名前は真島の方を向く


「はい なんですか?」


「ワシ なんも聞かんかった事にしとくわ」


名前は一瞬何の話を聞かなかった事にしておくのか分からなく、少し考えて、はっと真島の顔を見た。


真島は、ニヤッと笑い、手をヒラヒラさせて
キッチンから出て行った。


名前は、かくんと膝から崩れ落ちた。
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