夜に逢いましょう

□寝起きは最悪
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最悪だ…同じ会社で、3年付き合った男に振られ、酔っ払った上に、見ず知らずの男性と一夜を共にし、しかもその男はヤクザ…


名前はデスクの上に顔を埋めた。


−−兎に角忘れよう きっとあの人も すぐ忘れてくれるだろう−−


名前は仕事に打ち込んだ。
十代や二十代前半の女じゃあるまいし、大したこと無い、と思い込むようにした。


「もう 絶対に男なんて信用しない!」


バンと自分のパソコンのキーを叩いた。



「苗字さんどうしたの?」


と隣の同僚が聞いてきて、名前は慌てて


「む 虫がいたの 嫌ね暑くなると虫が出てきて アハハハ」


と取り繕った。


今日は早く上がろうと思った。


定時の5時を過ぎ名前は鞄を持ち、足早に仕事場を後にした。


会社を出る時に、必要な社員証を見せそそくさと外に出たらなにやら異様な雰囲気が漂っていた。


周りの会社の人達は、ヒソヒソと話していて
名前はそんな話など、全然興味なく自慢のハイヒールをカツカツ鳴らし歩いていた。


「まったく 暇な人たちなのね 噂なんて」


とぶつぶつ言いながら、その場を後にしようとしたらいきなり


「おっ 苗字ちゃ〜ん おおーい」


とデカイ声で名前を呼んだ。
名前は何事かと思い、後ろを振り向くと


そこには、今朝別れたばかりの真島が居た。


「な…なんで…あなた一体」


名前はわなわなしながら、真島に問いかけた。


「あなたなんて そんな他人行儀な言い方しなくてもいいや〜ん 知らん仲でも無いし な」


「ちょっと…いいから来てください」


名前は周りの会社の人間に見られたくなく、真島を建物の影に引っ張った。


真島は いや〜ナニするん? とふざけていた。


「あなた…どうやって私の勤めている会社知ったんですか?」


「何言ってるん? 苗字ちゃん自分でワシにほれ これ渡したで」


と自分のプライベート用の名刺と会社用の名刺を見せた。


「う…嘘…私 どこまであなたに話したんですか?」


名前はその場にしゃがみ込み真島を見上げた。


「何処までって とりあえず 自分の名前 年齢 昨日同じ会社の3年付き合った男に捨てられた とか?」


真島はニカッと笑い ワシが大切にしたるって と名前の前に同じようにしゃがみ込み 落ち込んでいる名前の肩をぽんぽんと叩いた。


「最悪だわ…あなたにそこまで話すなんて 
…真島さん あなたも何で私を追い回すか分からないですけど 私を追ってもお金にならないし どういうつもりなんですか?
会社にまで来て」


「追い掛け回すは言い過ぎちゃう?
けど 理由は決まってるやん 惚れてもた」


と、とてつもない事を名前に言った。
聞いた名前は眩暈がした。
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