青春ライン

□第三話
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[side.なし]







【校舎裏】







―――…ガッ


いつになく不吉な音をたてているその場所では、今、ケンカが繰り広げられている。
7対1という不利な状況に居ながらも、決して遅れをとっていない早坂。


―――…ガンッ




「…か…はっ…」



しかし、大人数相手に隙が出来てしまい、後ろから殴られた。



「はは…っ!もういっちょ」



倒れかけた早坂に不良の1人がもう1度攻撃しようとする。しかし、



―――…どっ ガツン



いきなり上から物凄い勢いで飛んできたものにあたり、気絶して倒れた。



「―――――え…?上履きと・・・飴玉?」



まさか、人が気絶するとは思えないものに早坂は少し驚きを隠せない。
ぽかんとしていると、次に声が聞こえてきた。



「童が。7人がかりで1人やっても威張れんだろーが。」

『……』

「ケンカは悪。悪は許さない。」

「!お前…!!」



フェンスの上に登場した2人の影。
片方は裏声で、もう片方はただ頷くだけ。



「正義の味方 ラブリーウサちゃん!!」

『……』

「…と、タヌキッド!!」

「参上!!」



やっぱり話さない方――タヌキッドの分も名乗った、裏声の方――ラブリーウサちゃん。

効果音でいうなら、バーン!!である。



「(誰ーーーーっ!?)」



下に居る不良たちが心を1つにして、ツッコんでいることなんて知らない2人。



「『とうっ!』」

「「「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」



皆の拒絶を無視して、颯爽とフェンスから飛び降りた正義の味方2人。



「さぁっ!そいつを返してもらおうか!!」



そう言いながら、飛び降りざまにパンチを決めたラブリーウサちゃん。
しかし、周りはやっぱり引いている。



『……』



どんどんと無言で不良たちを倒していくタヌキッド。
その様子はある意味ホラーだ。



早坂がそんな2人を恐怖しながらただ見ていたことは…秘密だ。



























しばらく暴れまわった2人は、呆然としている早坂に近付いていった。



「ケンカして何か変わった?」



ラブリーウサちゃんこと真冬は、早坂の額に手を置いて話しはじめた。
そんな2人をタヌキッドこと陸は、仮面の下でじっと見ていた。



「男ならさ、そんなチンケなケンカなんてしてないで、ドカッと大きいもん目指しなよ。」

「…ドカって…例えば?」



早坂の問いに対して何も考えてなかった真冬は大きく肩を揺らして、陸に救いの眼差しを向ける。



『(げっ…俺!?)……!!』



何かを思いついた陸は、どこからともなく取り出した紙に何やら書きだした。



「「……?」」

『“君が目指すものが、きっと大きな夢になるさ”』

「「……」」

『……』

「「……」」

『……〜〜〜〜っ!!!』



沈黙に耐え切れなくなった陸は、紙を丸めて早坂に投げつけてから走って去って行った。


「わっ!なんだ、あいつ…」

「…!ま、まぁ、そんなワケでケンカはすんなよ!!」


1人にされたことに気付いた真冬は急いで切り上げて、陸を追っていった。
その後、残された早坂は投げつけられた紙を眺めながら


「変なヤツ…」


と言って笑っていたのだった。








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