青春ライン

□第三話
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―――…キーンコーンカーンコーン



授業が終わるチャイムが鳴り、思いっきり伸びをする。

……あーっ、あかんなあ…やっぱ授業は体が固まるわ。

すると、ざわついてきた教室で、いきなり真冬が声をかけてきた。



「陸、ちょっといい?」

『ん?あぁ。』



呼ばれたまま真冬についていくと、着いたのは廊下。



『んで?どないしたん?』

「うん…さっきふと思ったんだけどさ?早坂くんってそこらのヤンキーとちょっと違うなぁ、ってさ。」



――…最近、早坂がらみの話多いなあ…まあ、その分仲良うなっとるってことか。


ちょっと微笑ましいなあ…て、何や俺はおかんか。



『違うって…何が?』

「うん…授業中もちゃんと話聞いてるし、教科書もラインマーカーで線引いてて綺麗だし…」

『いや、それが普通なんやけどな?…ああ、お前らは教科書に落書きしかしてへんかったもんな!!』



わざと意地の悪い笑顔をしながら言う。

確かこいつら授業中に、教科書に載っとる偉い人とかの写真に落書きしよったしな…

大声で爆笑しよるから、うるさかったんをよお覚えとる。



「うっ…で、でも陸だってそうだったでしょ!?」

『俺?俺はちゃんと教科書大事にしてたで?』



授業はあんまし出てへんかったけど、出たときは大人しゅうしとったし。
教科書は綺麗なままやったしな、ふふん。

ちょっと威張って言うてみると、真冬はキッ、と睨んできた…と思ったら、




「うっそだーーーー!!」




大声で指を差しながら言うて来た。



『うっわ!!何やそれ、俺にめっちゃ失礼やんか!!』



――…しかもこいつ、まじで嘘や思うとるやん!!
お前の俺の認識は何なんや!!


いつの間にか口喧嘩に発展し、廊下でぎゃあぎゃあ騒いでいると、



「うるせーぞ、お前ら。廊下で騒いでんじゃねーよ。」

「あ、たか…さ、佐伯先生。」

『うげっ』

「何だ、向井?」

『…なんでもないデース』



思わず口をついて出た声を耳聡く察知し、黒い笑顔を向けてきた佐伯。


……思わず語尾が片言になったのはしゃーないよな。

てか、今真冬…佐伯のこと下の名前で呼びかけんかったか…?



「ちっ、まぁいい。黒崎ちょっと来い。」

「え?…はい。」



何となく聞こえたような気がする佐伯の名前に気をとられていたうちに、廊下の隅でなにやらコソコソと話し始めた2人。


……ああ!もしかして、アレな感じか…?
教師と生徒の禁断の…みたいな……


あ、あかんやん!!気付いてしもた!!
じゃあ、俺今さっきめっちゃ邪魔やったんじゃ……て、そんな気い遣こてもいかんか。


やっと考えがまとまった時、いきなり頭に重いものが乗せられた。



『うおっ、何や!?』

「おら。ぼーっとしてないで、黒崎と早坂とこれ資料室に運んどけ。」



いつの間に話が終わっとったんか、近くまで来ていた佐伯が、俺の頭におっもい荷物を乗せながら言い放った。


……こいつ、いきなり来といて何やそれは。




『何やいきなり…資料室?……て、あれ?早坂いつの間に…』

「お前があほ顔晒してる間にな。ほれ、早く行ってこい。」

『あほ…!?っ、いだだだ!!分かったっ、持って行けばええんやろ!!』



俺の頭に荷物を乗せたまま、上からぐいぐいと押すもんやから結構痛い。
いつまでも止める気配がなさそうやから、渋々承諾したら満足気に頷いた。


……も、こいつ…まじ嫌や…


ここで、ふと真冬と早坂が居る方を見遣った。
すると、手を差し出した早坂が荷物を持とうとしとることやった。



「お駄賃?私今、アメしか持ってないけど…」

「ちっげーよ!!その荷物貸せって言ってんの!!察しろよ、それくらい。」



見当違いのことを言って、アメを差し出す真冬に、早坂の鋭いツッコミが入る。


……て、お前それ俺があげた飴玉やないか。


自分の中でちょっと文句を言いながらも、仲良さ気な2人を見て、少し気が緩む。


――…早坂も、真冬も、友達っちゅー友達は居らんからな。


微笑ましい気持ちになりながら、また俺はおかんか…て、何回目や、これ思うん。

と、自分にツッコミを入れていると、いきなり佐伯に頭を乱暴に撫でられた。



『ぅおっ!!な、何やねん!!』

「いや別にー?それ、ちゃんと持っていっとけよ。」



そう言うて片手をあげて去って行く佐伯に、俺はただ頭を傾げるだけやった。


まあ、あいつはよお分からんやつやからな…
あんまし気にしてなかったりする。








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