BLEACH中編

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あの任務から一週間、深かったわき腹の傷もかなりよくなってきた。

ちなみに卍解に至ったことは誰にも言っていない。

今のところ副隊長格で卍解を習得しているのは雀部副隊長、恋次、一角だけ。

一角に至っては殆どの死神がそれを知らないから実際は二人だけだと思われている。

卍解したことを誰にも言っていないのには単に言う機会がない、という単純な理由もあるのだが。

1番の理由は自分をここまで引き上げてくれた檜佐木さんを追い抜いて先に卍解してしまったことに若干の後ろめたさがあることだ。

卍解したのとしていないのでは死神としての格が違う。

これには悩んだ。
彼は自分が卍解したと聞いたらどう思うだろうか。
いくら卍解したとはいえ彼に勝てないことは沢山あるのに。
周りはそうは見ないだろう。

もう彼があの過保護すぎる目を向けてくれることはないのだろうかと思うと、少し寂しかった。

どうやら私は思っていたより檜佐木さんに後輩として愛されたいみたいだった。





『ここら辺かな。』

人目を憚らず卍解が出来る場所を探して流魂街にある森に来ていた。

乱鬼を構え、目を閉じて集中する。

あの任務以来初めての卍解をしにきたのだ。

『っ… 卍解 !!』


自分の周りに青黒い霊圧が巻き起こる。



『………"百鬼繚乱大炮"。』

あの時は全く見る暇なんてなかったから、改めて乱鬼を観察する。


いつもの乱鬼より一回り太く、長さも地面に置けば胸の下ほどもある。

中まで鉄が詰まっているわけではないがずっしりとした重量感に顔を顰めた。

『でかいな…また訓練しないと。』

これを抱えて十分に敵の攻撃を躱す自信がなかった。

しかし純粋に、卍解出来たことはとても嬉しい。
死神としての誇りである。

私は乱鬼をそっと撫で、よろしく、と呟いた。

撫でてから気づいたが、砲身に"百花繚乱"と彫ってあるようだ。

そこは鬼じゃないのか。


それから毎日森に来ては卍解状態で基本的な歩法をしたり、試し打ちをしたりと一人で修行した。
毎晩寝る前に乱鬼と対話をしては心を通わせた。

乱鬼はいつも黙って私の話を聞き、最後に少し褒めてくれた。
よく努力していると、大切にしてくれていると。






────そして初めての卍解から一ヶ月が経ったある日の昼。


私は斬魄刀を右手に握りしめ、半泣きで五番隊隊舎へ走っていた。


途中で考え事をしている日番谷隊長に衝突しそうになったけれど、呼び止める彼の声も無視して走った。

後で聞いた話だが、彼の鋭い目は私が普通は腰に差している斬魄刀を、右手に握りしめていることに気がついていたらしい。



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