BLEACH短編

□ひまわりの微笑み
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「何…してんスか。」

六番隊隊舎の上で寝転がって空を見ていたら恋次の声。


『空見てる。』

「いや、何サボってんですか。」

ため息をつきながら私の左隣に座る。



恋次の匂いがする。



陽だまりの匂い。



優しい。




「檜佐木さん現世なんですか?」

『…さぁ、知らない。』

「知らないって…彼女でしょ。」





知らないよあんな奴。





口の中でそう呟いて思いっきり伸びをする。

背中を反らせてうーんと唸ると恋次が困った目で私を見ていた。


『何よ。』

「いや、湧さん荒れてんなと思って。」

『どこが。』

「だっていつもはサボんないですし。」





唐突に、座っていた恋次が私の視界いっぱいに入り込んで来た。


『れんじ…?』


右肩をそっと掴まれてそこに意識を持っていかれた瞬間。






「俺をこんな気持ちにさせる。」






私の半開きの唇に恋次の唇が、修兵より少し厚めの唇が重なった。







重なっただけ。




10秒ほど、そっと重なった彼の唇はまたゆっくり離れていく。




『れん、じ……。』




後輩に、恋次に口づけをされたというのに何の衝撃も感じない。



美しい、するべくしてしたような美しい接吻。






私を見つめる恋次の顔は見たことがないくらいに綺麗だった。




「駄目なんスよ。そんなとこ見せられちゃ…湧さんに隙があるところ見せられちゃ俺はこんなことしちまう。」


辛そうでもない、何かに耐えてる訳でもない、ただ恋次は嘘偽りない綺麗な顔でそう言った。


「檜佐木さんのとこ行ってあげて下さい。どこにいるか知ってるんでしょ?」

『でも……。』






恋次の気持ちは





どこにあるの







「速く行って下さい。尊敬する美しいあなたでいて欲しい。」



その言葉に、弾かれた様に私は立ち上がって走り始めた。




近づく朽木隊長の霊圧には気づかなかった。






「恋次。」

「見てたんスか。」

「いいのか。」

「はい。俺の中ではずっとこのままでいるべき人なんです。」

「そうか。……暫し休んでよい。」

「隊長っ…。」





(もう好きなんて気持ちはずっと前になくしました。



あるのは美しいものに反応する素直な心だけ。



だからあなたに隙が出来た時、この素直すぎる心はその隙に後押しされて、何かをせずにはいられない。



だからいつもとは違うあなたを見せないで。



こっちは何も困らないけれどあなたはきっと困ってしまうから。)









今日も隊舎のそばのひまわりは元気だ。




「水でもやろう……。」






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