うちに帰ろう
□孝支ママの育児奮闘記
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澤村家には二組の双子がいる。
高校1年生の飛雄と蛍、そして中学1年生の忠と湧だ。
俺と大地は子供が大好きで大家族を作ることが夢だった。
長男の旭と次男の力はお察しの通り、異様に育てやすかった。
言うこともよく聞くし、大人しいし。
ちょっと旭は人見知りなところがあったけどそれだって問題になるほどじゃない。
力なんてとても賢くて、天才なんじゃないかと大地と真面目に話し合ったこともあった。
振り返って非常に親バカではあると思うが、確かに今となっては力はうちの家で一番聡明な子だ。
旭と力がどちらかと言えば内気な子供だった分、次に産まれた龍之介は大変だった。
まず、泣き声が力の倍くらいでかい。
少し大きくなれば手を繋いで歩いていてもすぐに振り切って走って行く。
しかしこれがまた上手くいったもので。
幼稚園くらいになると驚くほどしっかりし始めた力に龍之介は勝てなかったらしい。
力の言うことをよく聞くようになった。
もうこの時点で、力は怖いくらい大地の遺伝子を引いていることが判明していた。
ちなみに顔もわりと似ている。
って他が似てなさすぎるだけなんだけど。
龍之介の次に産まれた夕は、旭がかなりビッグベビーだったのも手伝ってとても小さく見えた。
夕が産まれた時には3歳になっていた旭は俺が龍之介に手を焼いている間、いつも夕のことを見ていてくれたらしい。
刷り込み効果のように夕は旭に懐いた。
一生懸命大きな旭に着いて行く小さな小さな夕を見て、俺と大地は悶え死にそうになっていた。
夕といえば運動神経だ。
小さく産まれてきたのでイメージ的に病弱な子なのかなと思っていたら見事に期待を裏切られた。
ちなみに夕は大きくなっても背は伸びなかった。
そして次に産まれてきたのが凄かった。
双子の飛雄と蛍。
先に飛雄が出てきたから飛雄がお兄ちゃんだ。
まず彼らはその容姿だけで俺と大地の中にあった双子の概念を大きくぶち破った。
真っ黒な髪に細く釣りあがった目の飛雄。
金色の髪に蜂蜜色のまん丸な目の蛍。
今となっては性格的に割と似ているところはあるなと思うのだが、産まれて来た時はもちろんそれは分からず大層驚いた。
しかもこの二人、発育も恐ろしいくらい似ていなかった。
飛雄は……本当に手がかかった。
夜泣きは凄いし赤ちゃんの癖にずっと機嫌の悪そうな顔をしているし、極め付けは心配になるくらい話し始めるのが遅かった。
わりと真剣に悩んだんだからな。
言わずもがな、今となっては飛雄が一番バカだ。
反対に蛍はというと、聞き分けの良くないところがあったりもしたが、小さな頃から頭の良さを感じた。
本を読み始めるのも一番早かった。
旭や力よりも読み聞かせとかしてやれる時間は少なかった筈なのに。
この辺で俺は子育てに疲れ始める。
というか普通に無理だ。
これ以上は増やせまい、と育児に専念することになった。
子沢山ではあるが近所の黒尾家も同じくらい子どもが多く、よくお互いに助け合った。
飛雄と蛍が2歳になって、やっと飛雄が怪しいながらも何とか言葉を発し始め、何回かに一回は自力でトイレに行けるようになった。
蛍は口げんかでは夕に負けなしになっていた。
そんな時。
また双子が産まれた。
しかも、ずっとずっと欲しかった、待望の女の子。
それが忠と湧だった。
この二人は俺と大地の中にあった双子という概念を元に戻してくれた。
緑がかった黒髪に俺と同じフワリと立ち上がったあほ毛。
ソバカスを湛えた頬をいつもニコニコと緩ませて二人はまさに天使。
大地なんて会社から帰ってきたら一先ず二人のところに直行するくらいの可愛がりよう。
誰もが新しい家族に心を奪われていたが、一際二人を気に入ったのが蛍だった。
飛雄がベソをかいて俺に引っ付いている間、蛍はずっと双子の顔を覗き込んでいた。
蛍はよく分かっていた。
自分とは違って、片割れの飛雄は手が掛かるから自分は構ってもらえないのだと。
それに蛍にとっては夕も龍之介も少し元気すぎる。
ずっと遊んでもらっていた旭や力は小学校に通っていたから普段はいない。
もしかしたら蛍は寂しかったのかもしれない。
毎日毎日飽きもせず、蛍は二人が仲良く眠る隣でひたすら絵本を読んでいた。
結果、旭と夕のように、もしかしたらそれ以上に、刷り込み効果は発揮されることとなる訳だけど。
ちなみに蛍と飛雄と忠はニョキニョキと伸びた。
旭もかなりでかく育ったが彼は横にもがっしりしているけど、この三人は縦ばかり伸びて蛍なんて今や大地より20cmほど大きい。
…理想のカップルかよ。
そして最後に産まれたのが翔陽。
忠と湧が3歳の時だった。
翔陽の鮮やかなオレンジ色の髪を見て力は突然変異だと呟いた。
面白いことに、忠と湧につきっきりだった蛍はもう弟には満足したのか翔陽には見向きもせず。
代わりに6歳になり、自分のことにやっと余裕が出てきた飛雄が翔陽を構いたがった。
飛雄が怖い顔で見つめても、翔陽はいつもきゃっきゃと笑っていた。
結果的に三度目の澤村家の刷り込みは効果を発揮し、今となっては何かあれば翔陽は飛雄飛雄と彼を探し回る。
心配していた飛雄だが頭は壊滅的に悪いもののバレーのセンスは家族一なので、やはり世界は上手いこと回っているのだと俺は変なことを悟った。
だいたい理解して頂けただろうか。
澤村家の人間関係を。
まぁ刷り込み効果とか言って面白がっているけどみんな仲良しだ。
湧と夕だって昨日手を繋いで歩いてたし。
翔陽は旭の肩車が大好きだし。
蛍と龍之介は意外とノリが合うみたいだし。
飛雄はいつも力に勉強を教わっているし。
たまに喧嘩はするけどその時はうちの大黒柱の大地が頑張る。
こんな素敵な家族を、俺はいつだって笑顔で支えていきたい。
「ママ!!」
「なに?翔陽。」
「トスあげて!」
「だーめ。洗濯物干してる最中だろー。」
「じゃあお手伝いする!」
「お手伝いしてくれんの?翔陽は優しいね。」
「うん!だって俺、ママのこと大好きだからいっぱいお手伝いする!」
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完全自己満シリーズ始まりました。
正気に戻ったらページごと消すつもりです!
2015.12.02