海賊パロ原稿
□世界で一番美しい場所
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*入り口前 高尾和成
福井さんとフリに支えられて俺が建物の外に出ると、そこにはたくさんの仲間がいた。
「え、湧ちゃん生きてる…?」
フリが諏佐さんに背負われた湧を見て呟く。
「生きてんだろ。湧は昔から頑張りすぎると反動で動かなくなるんだよな。」
基本的にめんどくさがりだから今は指一本動かしたくないことだろう。
「お?お前ら集合してるのか?」
陽気な声に振り向くと伊月さんを背負った木吉さん。
「伊月さん?!」
「やめて、大丈夫だから、木吉が過保護なんだ。」
火神の大声に即座に反応する伊月さん。
でも顔色も悪いし、たぶん強がってる。
「それよりどういう状況だ今吉。」
福井さんが目を凝らして遠くの方を見る今吉さんに尋ねた。
「虹村さんと小金井と水戸部が急いで船に戻ったから、そこらへんに海軍の残党がおるねんな。でもこんだけ負傷者を抱えてここを突っ切れるか微妙や。」
諏佐さんに背負われた湧の背を撫でながら、ワシももうあかんかもと笑う今吉さんに俺は驚く。
「おい、誰か手伝え…!」
そこに後ろから笠松さんの声。
振り返るとかなり重そうな荷物を背負っている。
「あー、黄瀬もあかんか。」
「悪いがこっちもダメだ。」
笠松さんの後ろから黛さんたちが出てくる。
これで赤司と青峰と黒子以外は揃った。
黛さんの右腕の大きな負傷に福井さんが思わず顔を顰めた。
「緑間いるか?」
「なんなのだよ。」
真ちゃんはたぶん俺らの中で一番元気だ。
こういう力のあるやつが一人しっかりしてくれてると安心する。
「取り敢えず歩けない奴は緑間と火神が運ぶしかない。船に戦力を送りたいしな。歩ける奴は固まって遠回りで船に帰る。戦える奴は正面から行く。それでいいか?」
笠松さんの意見にみんなが頷いた。
「おいおい、そんな弱気なことでいいのか?」
「歩く人は僕が透明にしてあげますよ。」
「青峰と黒子!」
日向さんが飛び上がる。
服がかなりボロボロだが二人は十分に動けそうだ。
「あと赤司だけだ…!」
フリが心配そうな声をあげる。
「迎えに行ってやれよ。」
「でも…邪魔だし、実渕さんも赤司のとこ行ってるみたいだし。」
「なんで?戦いが終わったら別に邪魔じゃないしお前も行けばいいだろ。」
俺が言うとフリは一瞬迷ったが、すみませんと小さく呟いて、建物の中へと駆け込んで行った。
そうこうしているうちに決まったらしい。
真ちゃんが湧と桜井を、火神が伊月さん、青峰が黄瀬を運ぶ。
「火神二人運べよ。」
「アホ、確実に帰ることが重要や。黄瀬はあと一発喰らったら危ないで。」
真面目な顔で今吉さんが青峰を叱る。
この中で一番重傷なのは黄瀬っぽいし。
それに火になって飛ぶ火神は安全上一人しか運べない。
けど黒豹に獣化して走る青峰にしがみつくのも大変じゃね?
…あれ?俺はどうなんの?
「今吉さん、俺は?」
「高尾は"鷹を"使って帰る。」
「お前は死なないだろ。」
「一人で帰るのだよ。」
瀕死の伊月さんがダジャレをかまし、宮地さんと真ちゃんからは愛の溢れる言葉が。
伊月さんは瀕死だからキレが悪いということにしよう。
「なんか戻ってきたって感じするなぁ。」
ほんのさっきまで俺の命を狙う敵と二人で知らない部屋に閉じ込められていたから、仲間に囲まれると安心する。
「まだだろ。船に帰るまで戻ったとか思うなよ。」
福井さんに叱られる。
確かにそうだよな。
「黄瀬振り落とされないか?」
「ナイフがあるが、串刺しにして留めるか?」
花宮さんがナイフを片手にニヤニヤしながら黄瀬を見下ろしている。
黄瀬はというと絶望的な顔で獣化した青峰の背にしがみついていた。
「誰か紐かなんかないんスか…?」
「ないな。」
諏佐さんがバッサリ切り捨てながらも、自身のパーカーで黄瀬を青峰に括り付けていた。
あれじゃ効果は期待できないけどな。
「船までは800mほどしかないからな、幸運を祈るわ。」
今吉さんが湧の背をトンと叩いたのを合図に、真ちゃんと青峰と火神はそれぞれ船へと向かって行った。
「さぁ、あとは黛と高尾くらいか。黒子と三人で身を隠す。今吉はどうする?」
笠松さんが今吉さんに聞く。
「正直こっから動きたないけど、まぁ騙し騙しお前らの後ろついて行くわ。」
「船は今向かった三人が加われば確実に問題ないだろうから、下手に動くのはやめておいてもいいかもな。」
怪我をしていない奴らも、全員たぶん疲れ切ってる。
森山さんなんてさっきから一言も話さず座り込んでるし。
「赤司のこともあるし何かしら連絡来るまで…。」
今吉さんが口を閉じた。
森山さんが顔を上げる。
笠松さんがゆっくり地面に膝をつく。
黛さんが、笑った。
「はっ、囲まれたか…。」
建物に背を向けて立っていた俺らの、その背後から。
いつの間にか海軍が迫っていたらしい。
ゆっくりと首を回すと、無数の黒い銃口が草むらから突き出ているのが分かる。
そして背後を取られたと気づいた時にはもう遅い。
色んな建物の陰に隠れていて見えないけど、正面からも狙われている。
「クソ、静かやと思ってん…どうやって回り込んだんや…。」
今吉さんがイラついた顔を見せる。
「〈花宮だ…建物の前で海軍に囲まれた…。〉」
花宮が殆ど口を動かさずに無線で伝える。
「背後は何とか出来るが前から狙われてるのが辛いな。どこから来るか分からねぇ。」
笠松さんは歯を食いしばって眉間に皺を寄せている。
「俺のことは放っておいてくれて構わない。」
黛さんの言葉に福井さんが思わず言い返そうとした時。
「「海賊ども!!!武器を下ろせ!!!」」
前から拡声器を使った命令。
「従え。」
今吉さんが短く呟いて刀を地に置いた。
花宮さんがナイフを放る。
福井さんもヤケクソ気味に投げた。
俺の腰に差した愛銃は海軍からは見えないはずだ。
けど俺が銃を使って戦うというデータくらい持ってるだろう。
どうするか。
今吉さんの厳しい横顔を見つめたその時。
遠くの空から何か音が聞こえてきた。
「…海軍?」
「…違いますね。」
森山さんと黒子が首を捻る。
軽飛行機…先端にプロペラがついている小さな飛行機のような物体が飛んできた。
しかも超低空飛行。
海軍も標的を俺らから飛行機に変え、一斉に飛んでくる機体に向けて銃を撃つ。
しかし飛行機の方からもでかい弾が飛んできて、俺らの前方の海軍が隠れているであろうところが砲撃された。
ズドンと、物凄い衝撃に思わず身を伏せる。
「おい、こっちに突っ込んで来るぞ!!!」
「逃げろ!!!」
笠松さんと諏佐さんの叫び声で、俺たちは真正面から突っ込んでくる飛行機を避けようと散る。
クッソ体動かねぇ…!!
着陸した飛行機が突っ込んで来る。
「どうなってんだよ!!!」
「知るか!!!!」
福井さんに怒鳴られながら引きずられ、間一髪、俺の目の前を通って行く飛行機。
砂埃をもろに浴びる。
そして建物の入り口に突っ込んで飛行機は止まった。
入り口のガラスの砕け散る派手な音。
モクモクと立ち込める砂埃の中、飛行機から出てくる人影に、俺は銃を向けた。
「誰だっ!!!」
「主役は遅れてやってくる。なぁ〜んてね!」
返ってきたその声に、思わず目眩がした。やられた。
急激なテンションの落差に心臓が悪くなりそうだ。
「てんめぇ!!!許さねぇぞ!!!!」
煙の向こうから激昂した花宮さんの怒鳴り声が聞こえる。
まぁでもこれで、帰れる。
収まり始めた煙の陰から現れたのは、奇想天外にして味方にすれば最高に頼りになるあの男。
「原一哉ちゃんだよーん。」
少なくともうちの海賊団のものではない飛行機に乗って、海軍を半分吹き飛ばしながら俺らに突っ込んで来たのは、原だった。
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黒子っちは触ったものごと自分を透明にする能力です。
黄瀬くんの能力はワンピースに出てくる同じ能力と違いがあります。
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