海賊パロ原稿

□キスで3題
4ページ/4ページ

B火神大我

一人黙々と野菜を刻んでいたら、足音が聞こえた。

振り返ると湧が立っていた。

探るような目をしている。

「なんだよ。」

答えは知ってる気がする。

『おやつちょうだい。』

子どもかっての。

「いや、もうすぐ晩めしだけど。」
『お願い、夜もちゃんと食べるから。』

ほんとか?

ほんとです。

目で会話。

「このセロリ刻んでくれたらアイス出してやる。」
『セロリは匂いが手につくから嫌。』

このわがままめ!

「じゃあニンジン。」
『いいよ。』

湧のための台を引っ張ってくる。
フリや黒子も使うけどな。

飯係は俺や水戸部に紫原とでかいやつが多いため、キッチン台はかなり高めに設計されているから。

「みじん切りだぞ。」
『うん。』

こうやって手伝わせてるから、湧はみじん切りくらいなら普通にできる。

横目で監視しながら俺は別の料理を始める。

午前中に釣り上げた白身魚でアクアパッツァだ。

これ誰が釣り上げたんだよ。
一匹だけ異様にでかい魚がいる。

自慢してこないってことは青峰やザキじゃねぇしな。

量が多いから魚を捌くのに時間がかかる。

『終わった。』

いつの間にか終えたらしい湧が後ろから抱きついてくる。

無邪気なところは変わらねぇな。

包丁を置いて手を洗って、腰に引っ付いた湧を正面から抱き直した。

「甘いもん食いてぇのか?」
『うん、欲しい。』

素直で真っ直ぐなのは嫌いじゃねえ。

「仕方ねぇな。ん〜っ」

頭のてっぺんにうざいくらい過激な口付けをする。

仕方ねぇ。アイスを出してやろう。

可愛い可愛いプリンセスのために。

「なあ、俺にもキスしろよ。」
『えっ……。』
「いいだろ、親愛のキスだって。」


.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ