青風と七武海

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マルコ中編@

モビーディック号の甲板に突然クレーターが出現したのはちょうどお昼前のことだった。

部屋でエースの書いたぐちゃぐちゃの書類と睨めっこしていたマルコは突然の衝撃に飛び上がって甲板に走り出た。

エースがクレーターの真ん中に立って目をキラキラさせている。
危機感持てよい。

「マルコー!これなんだ?!」
「肉球…かよい。」

すでに人がたくさん集まって肉球型のクレーターを見つめている。

「これ、バーソロミューくまの能力じゃねぇの?」

包丁を持ったまま出てきたサッチが信じられないと叫んだ。

「"くま"は白ひげに何を飛ばすつもりなんだろうねい…。」
「海軍がとてつもない爆弾を作ったとか?」
ハルタの何故かワクワクした声にハッとして大声で指示を出した。

くまから"荷物"が届けられたのは、イゾウ率いる即席の銃撃部隊が甲板に待機し始めてから5時間後のことだった。

「飛んできたぞ!!」
見張りの者が声を張り上げ、迎え撃つべく大砲が一斉に上を向く。

オヤジを含めた全員が空を見上げる様子を一瞬、滑稽だなと思った。

「なんだあれ…?」
エースが呟いた瞬間、イゾウが声を張り上げた。

「やめろ!打つな!人間…女だ!」

慌てて大砲は脇によけられ、自分は青い炎を纏って空を跳んだ。

危険人物でも何でも、空において自分に勝つ物はそうそういないだろう。

一直線に甲板に向かって飛んでくる女に意識は無さそうだ。

高速で飛ぶ少女を右手…右の翼で何とか取り押さえて抱きかかえ、モビーまで戻った。

「女の子…かよい…!」

甲板にオヤジがいるのを確認してそばに降り立つとグララララと笑うオヤジにモビーが揺れる。

「とんでもねぇもん送ってきやがって!」
オヤジは嬉しそうに少女を見てまた笑った。
オヤジが笑うのを見て心配そうに様子を伺っていた隊員たちにもほっとした空気が流れる。

隊長達が一斉に馬鹿みたいに腕を伸ばして駆け寄ってきたので、抱えていた女の子を取り敢えずハルタに押し付けてみた。
女の子だからって、こいつら馬鹿かよい。
サッチを選ばなかったのはわざとだ。

「うわぁ、この子知ってる!」
ハルタが驚いた様に叫んだ。

「あ、こいつ…。」
イゾウも目を細めて女の子を見ていた。

「あれだ、今日の新聞に挟まってたよ、手配書。4000万Bの"青風のユウ"じゃない?」

ハルタは道具を持って走ってきた救護班に少女を取り上げられた。

「「"青風のユウ"?」」

確かに救護班に検査されている彼女は海色のワンピースを着ているが。

「銃を持って風のように舞うらしいな。」
「うぉ、ジョズ詳しいなぁ。」
エースが突然背後から入った情報に意外そうな顔をして見上げる。

「おい、どこか悪いのか?」

きっと何時間も空の旅をしたのだろう。
気を失った…失わされたまま飛んできたのかもしれない。

あまりに綺麗な状態で飛んできたもんだからサッチに聞かれるまで身体の心配をするのを忘れていた。

「軽い脱水症状を起こしてる以外に問題はないです。」
救護班の報告を得て甲板に集まっていた隊員達はみなどこかへ散っていった。

担架で運ばれていく少女をジッと見つめてからいやに見覚えのある顔だなと思った。
しかも手配書意外のところで。
妙に引っかかりを覚えたまま、書類の山を思い出して溜息をついた。

「よいよい…。」


少女が目を覚ましたのは次の日の朝だった。

偶然にも1番に対面したのは良かったのか悪かったのかあのサッチで。
それを聞いた時やってしまったか、と思ったがそうでもなかったらしい。

サッチが「ユウちゃ〜ん。」なんて言いながら扉をそっと開けると起きたばっかりの彼女が驚いて飛び上がって、それを見たサッチも飛び上がったらしい。

サッチがニコニコと危機感無く部屋に入ったことで、ユウの方も捕えられたとか命が危ないとか、そういう勘違いは起こさなかったようだ。

二人で飛び上がったというサッチの報告を聞いてイゾウはクククと笑ってしまった。

「でもよ、あの子本当に4000万Bか?島で会ったらどこかのお嬢さんかと思っちゃうぜ。」
「確かにねい。」

ユウの為の朝食を用意するサッチに自分も深く同意する。

しかしやはり昨日確認した手配書と飛ばされてきた少女は間違い無く一致していた。
腰にぶら下げた得物もジョズが言っていたように銃だった。

少女を見つめて抱いた心の引っかかりは手配書を見て更に大きくなった。
やはり自分はこの少女を知っている。
モヤモヤし続けるのは誰だって好きではない。

出来上がった朝食プレートを持って食堂を出ていくサッチを見てテーブルにコーヒーを置いた。

「サッチ、俺もついていくよい。」



マルコ視点のつもりでした


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