青風と七武海

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サッチと二人で朝食を運ぶために、ユウが寝ている部屋に入った。

「ユウちゃん朝ご飯だぜ。」

ベッドの上の少し緊張気味のユウを見てドキッとした。
やはり彼女を知っている。

ベッド横の机に置かれたいくつかの銃が不釣合いだ。

「ありがとうございます。」

どこか神妙な顔でプレートを受け取り恐る恐る食べるユウ。
まぁ警戒心が強いってのは悪いことじゃない。

「あ、そういやユウちゃんが甲板に激突する前に助けてくれたのこいつだぜ。」
「え、あ、そうなんですか?!ありがとうございます!」
慌ててスプーンを離して頭を下げられた。

「飛んでたから掴んだだけだよい。そういやもう体は大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫みたいです。いつでも戦えそう。」

戦えそうと聞いて、そういやくまに飛ばされたという事は何かしら事情があったのだと思い出す。

「お前、一応飛ばされた理由とか後で隊長達くらいには話してもらいたいんだがねい。」
「あ、俺もそれ気になってた。」
「船に置いて頂いてるんですからちゃんと事情は説明します。」

サッチは後で聞かせろよ、と言うとキッチンが忙しいからと帰って行った。

特に忙しくもない自分はユウが食べ終わるまで待っているつもりだ。

「4000万Bねぇ…。」
「意外ですか?」
「まぁ、そこら辺の町のお嬢さんと言われても違和感はないよい。」
「よく言われますよ…敵に。」
少し嬉しそうに笑ってそれからご馳走様、と手を合わせた。

「あの、食器持って行きます。」
「あぁ案内する。きっと隊長達も集まってる頃だろうよい。」

立ち上がった彼女の足を盗み見てみるとなるほど、細身な割にしっかりと筋肉はついている様であった。

「ところで、貴方のお名前は…?」
「あぁ、マルコだよい。1番隊隊長だ。」
ユウの目が見開かれた。





食堂のドアを開けると中にはけっこう人がいた。
ユウが後ろから遠慮がちに入ると一気に食堂は静かになった。

「あの…お、美味しかったです。ありがとうございました。」
空気に耐えかねたのか、ユウはサッチを見つけて駆け寄り、プレートを渡した。
「おぉ、ちゃんと残さず食べたな!えらいえらい。」
サッチは二カッと笑ってユウのアタマをぐしゃぐしゃ撫でた。
恥ずかしそうにはにかむ彼女に食堂の空気は和やかになる。
一応隊員達も警戒していたのか。

「おい、サッチ触ってやるな。汚れちまう。」
「汚れねぇよ!」
イゾウが珍しく声を張り上げると食堂が笑いに満ち溢れた。

「ユウ、おいで!こっち来てお話しようよ!」
ハルタがユウを隊長達が集まる席へと連れていった。

「待って俺も!」
サッチも食器洗いは任せたとばかりにエプロンを脱いでやってきた。

「なんだみんな揃ってんのかよい。」
「ラクヨウとナミュールは遠征だ。」
「ビスタ最近遠征行ってなくないか?」
エースは新隊長お披露目ってことで遠征が多い。
「なんだエース、遠征は嫌いか?」
「いや、そんなことはねーんだ。モビーにいる方が楽しいけどな。」
「お姫さんの話するんじゃねーのか?」
「お姫さん?」
「ユウのことだよ。他の誰が姫だっつーんだ。」

イゾウは既にユウのことをお姫さん、何て言い方をするらしい。
ビスタがアイコンタクトを取ってくる。
あぁ、確かにそんなイゾウは珍しすぎる。

お姫さんと言われた当の本人は慌てて拒否しているのが可愛らしかった。

「やっぱり君、4000万Bなんかには見えないけどなー。」
「ハルタさんもどこかの王子様みたいですよ。」

ユウはハルタともしっかり仲良くなっている様だ。

「なぁ、お前何でくまに飛ばされたんだ?」
「あぁえっと…。」
エースがずいっとユウに寄ると目が泳いだ。

「忍び込んだんですよ、海軍の大きめの倉庫に…。外で捕まえた海兵の制服着たんですけど。それでちょうどくまがその基地にいて、あの人レーダーか何かで賞金首のこと感知するみたいでばれちゃって。飛ばされました。」

待て、突っ込むところが多すぎる。
他の隊長達も呆れているようだ。

「どうして忍び込んだのだ?」
取り敢えずビスタが質問した。

「欲しいものがあって…。」
「何が欲しかったのだ?」
まるで尋問のようだ。

「海楼石で作られた銃弾です。」
「海楼石の銃弾か。盗んだのか?」
イゾウが興奮気味に尋ねた。
「もちろんです。」
「お前、海兵の服盗んだのか?」
エースは違うことに反応していた。
「お引き寄せて気絶させて…剥ぎ取りました。」
悪いことしました、みたいな顔で言うもんだからハルタがクスクス笑った。

「その笑顔に似合わねぇことするなぁユウちゃんは。」
サッチがニヤニヤ笑っている。

「気に入った。」
「とんでもねぇ奴だぜ!」
「度胸あんなぁ!」
ジョズがボソッと呟いた言葉にいつの間にか集まっていた隊員達が同調した。

「お転婆娘だよい。」
「あはは…。」
「そういや、」

やっと気になっていたことが聞ける。

「ユウはどこの出身だい?」
「南の海ですよ。グランドラインに近い島です。」
「お、マルコも南なんじゃね?」
「え、マルコ隊長、南なんですか?!」
誰だ今似合ってるとか言ったやつ。
ギロッと睨むと1番隊の奴らが慌てて逃げていった。

「パイナップルとかバナナとか言われてるからなこいつ。」
心の底から余計なサッチの一言が聞こえて振り向くとユウと目が合った。

どこか値踏みするような視線に戸惑う。

「どうかしたかよい。」
「パイナップルかバナナか迷ってるんじゃない?」
「ハルタ…!!」
エースが机をバンバン叩きながらひぃひぃ笑っている。
そのまま酸欠で死ねばいい。

「いや、なんか…気のせいかな。」
「いやどうみても…俺はバナナだと思うぜ?」

しかし、いつもなら殴っているサッチの言葉もエースの笑い声もどうでもよかった。
ユウの今の言葉はそういう意味じゃない。
やっぱりこいつにも何か思うところがあるのだ。
何だ、どうして思い出せない。

風にはためく青いワンピースを思った。
見たことがある…どこでだったか…やはり南の島というからにはその時…

「ねえねえ、マルコが違う世界に旅立ってるから放っておいてさ、この子どうするの?」
ハルタの言葉に我に返った。
ユウが困った顔でサッチを見る。
「そりゃお前、取り敢えずこの船に置いておくのは決まりだろ?」
「そりゃそうだよ。こんなとこで船から放り出せるわけないじゃん。」
「次の島までは乗せるだろ?俺のところ来ねぇか?」
「イ、イゾウさん…!」

イゾウが突然手をユウの肩において顔を覗き込んだ。
ユウはイゾウの放つ色気に固まってしまった。

「うわ、イゾウ口説いてる!」
「おかしなこと言うなハルタ。な、ユウどうだ?」

ユウが真っ赤になったのを見て周りの隊員達は口笛を吹いたり手を叩いたりして煽り出した。
ビスタがおもしろそうに口をヒクヒクさせている。
エースはポカンとイゾウを見つめていた。

「おいおい、イゾウ待てよ。別にどこの隊にも入れる必要ねぇだろ?まだ仲間になったわけでもねぇしさ。」

サッチの意見にだいたいが賛同し、結局ユウはお客さんとして乗ることになった。

まぁ冷静に考えればそれが当然なのだが。

エースがイゾウショックから立ち直ったのか立ち上がってユウに近づいた。

「よろしくな、ユウ。俺は2番隊隊長のエースだ!」
「よ、よろしくお願いします。
「よし、年も近いし仲良くしようぜ!」

しっかりユウを捕まえていたイゾウの手をどかしてエースがユウの手を握ったのを見て頭痛がしそうだった。

「お前ら…女の子に喜びすぎだよい!」
「仕方ないマルコ。ガードの固いナースばかりだったのだ。」
ビスタのうきうきした声に今度こそ頭が痛くなった。




誰のセリフか分かりますか?

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