青風と七武海

□こんな時は抱きしめて
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*頂上決戦から一年


久しぶりに血を吐いた。
元々防御にメーターが振り切れた様な能力。
敵に勝てなくても負けることはないと言い切れるくらいに高い防御力を持つユウはまともに攻撃を受けたことが少なかった。

免疫がなかった。
脱獄囚の強靭な一発はユウに重症を負わすのには充分だった。

それでもなんとか粘り勝ったユウは弱っているところを見られたくなくて、護送船が到着する前に逃げた。

七武海のプライドがあった。

久しぶりにユウは1人でいることが嫌になった。
しかし彼女がプライドを捨てて接することが出来る人は異常に少なかった。

青キジは海軍を辞めていた。


だからそんなユウがこの広い海でそんな人に会えたことは奇跡だった。
G5の軍艦を見つけた時、ユウは己の強運さに一瞬呆然とした。

「スモーカーさん…。」




「七武海の嬢ちゃんだスモやん!!」
「初めて見たぜ!」
「おい、死にかけてねぇか?」
甲板に降り立つとまるで海賊の様な海兵達に囲まれた。
「どけ、スモーカーさんはどこだ。」
「スモやん御指名だ!」

突然人の山が二手に別れ、ユウが最後に会った時とかなり風貌の変わったスモーカーとたしぎが駆けつけてきた。

「ユウ…!!!」

「スモーカーさん…。」
「お前っ…!!!」
スモーカーは咥えていた葉巻を甲板に叩きつけユウの肩を掴んだ。
たしぎが声にならない悲鳴をあげた。

「七武海に残るためにどんな条件を出された!!」
騒ついていたG5の海兵達が静まり返った。

こんな目をしたスモーカーをゆうは知っていた。
まだ能力がなくお互い大佐だった時のことだ。

「言え…!」

あの時と同じ様にスモーカーの目に宿る激しく起こり立つ感情は怒りだけではない。

「インペルダウンLv.6の脱獄囚。」
「っ……!!!」
スモーカーの目が見開かれた。

「その生け捕り。」
「無茶な…。」
スモーカーの手が肩から離れた。

「スモーカーさん。」


縋る様な口調は七武海には似合わない。
ユウは気力を振り絞って気然と言い放った。

「休ませて下さい。」

まるで拗ねた子供の様な声が出た。



軍艦の風呂でシャワーを浴び、たしぎの服を着せてもらってなぜか連れて来られたのはスモーカーの部屋だった。

「なんでここなんですか。」
「てめぇが落ち着いて眠れるようにだ。」

スモーカーはベッドを整えるとそこにユウを寝かせた。
「スモーカーさんの匂いがする。」

ベッドの隣に引っ張ってきた椅子に座り、スモーカーは葉巻に火をつけた。

「まだ脱獄囚は残ってるのか。」
「別にノルマが決められた訳じゃないです。ただ私は青キジと仲が良かったからあの話を聞いたあとに2、3人捕まえてこのザマです。」
そうか、と呟いてスモーカーは大きな手をユウの頭に乗せた。

「青キジには会ったのか。」
「一度も、会ってないです。」

震えそうな声にスモーカーは優しく手を動かした。

「もう誰も見てねぇよ。泣きたきゃ泣け。俺が青キジの代わりでも何でもしてやる。」

どうしてこの人はこんなに優しいことを言うのだろう。
泣け、だなんてらしくもない。
泣くのなら強くなれと叱責するタイプではないのか。

いくら心の中で文句を言ってもダメだった。

「スモーカーさん。」
「なんだ。」
「クザンはこんな時抱きしめてくれましたよ。」

スモーカーは黙ってユウの体を起こすと力強く抱きしめた。

久しぶりに感じた敗北感と己の力の無さにユウは涙を一筋だけ流した。

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青キジにはタメ口でもスモーカーさんへの敬語は抜けないと思うんですよ。
読んで頂いてありがとうございました!!

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