ONE PIECE短編

□悪魔じゃなかったら何ですか
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ちょうど今から夕食だって時に敵襲にあった。
普段は優しい(見た目はアレだけど)キッド海賊団だけど戦闘となれば信じられないくらい狂気を剥き出しにするから怖い。
…いや、私もそうかもなんだけどね。

というわけで今日は敵船から奪ったお酒がたくさんあるのです!

キラーとヒートと三人で高そうなお酒を持ち寄って食堂でゆっくり飲む。

私たち三人は安っぽいお酒を浴びる様に飲むタイプじゃない。

というかキラーはたぶん酔っ払ってる間に敵襲がきたら、とか考えてるのかも。
どれだけ酔っててもうちの悪魔…じゃなかった、キッドが負けるとは思えないんだけどな。

「そういえばお前、怪我しなかったのか?」
「え?あぁ私?おかげさまで怪我してないよ。」

死にかけの相手が伸ばした刀の切っ先が、危うく頬を掠めるところを、キラーに助けられたんだっけ。

「ありがとうございます。」
「キラーはいつだってユウのヒーローだもんなー!」
ヒートさんがニヒニヒ笑ってるからたぶん酔っ払ってるんだろうな。

青い仮面のヒーローとか騒ぎ出したヒートさんをちょっと酔いの回ったキラーが締め上げようと動いた時、食堂の扉が荒々しく開けられた。

「ユウ!!」
「…はい?」

扉を開けたのは真っ赤な悪魔…だから違う、キッドだった。

「お前今失礼なこと考えただろう。」
「あれ?悪魔になりたかったんじゃなかったの。」

小さな声で呟くと唯一聞こえたキラーがプッと吹き出した。

「まぁいい…ユウ。ちょっとついて来い。」
「どこにですか?」
「船長室だ。」

…え。

「おいキッド、あまりユウを虐めてくれるなよ。」
「ひゃ〜キラーはやっぱりユウのヒーロ…「黙れ酔っ払い。」ぬぐぐっ…。」

今度こそ締め上げられたヒートの呻く声を聞きながら私は食堂を出た。


久しぶりに入った船長室。

「どうしたんですか?」
「おい、座れ。こっちむいてな。」

キッドは大きな椅子にドカリと座って自分の…膝を指差した。

えぇぇ?!

「えっと、はい?」
「ここに座れ。聞こえてねーのか。」
「いやいやいやいや。」

キッドの膝の上に座る?!
恋人でもそんなことしたくないぞ。

「チッ…ほら!」

顔を青くさせてムリムリと頭を振っていれば無理矢理腰を掴まれて引き寄せられた。

「いたたたたたっ…!!」

キッドの顔が怖かったので取り敢えず恐る恐る座って…みる。

近くなったキッドの顔が怖すぎる。
普通ここはドキドキしたりするんだろうけど違うドキドキが襲ってくる。

「触れ。」
「ナニを!」
意味不明な要求の連発に相手を忘れて叫ぶ。
「腹筋だあぁ!!」
「はあぁ?!」
「てめぇ…別に触りたければ触っていいんだぞ。ナニを。」

真っ赤な唇が弧を描いて、笑う様子はまるで悪魔。

「け、結構です。」

もう何も喋らせまいと、言われた通りキッドの見事な腹筋を指先でなぞってみる。

ガチガチの筋肉はやはり男の体で、凄く複雑な気持ちになってくる。

「どうして触れなんて…。」
「さっき飲んでたら言われた。筋肉は女に触ってもらうと調子出てくるってな。」
「はぁ。」

あれか、筋肉見ながら鍛えたらより効果がある、みたいなやつかな。

キッドは満足そうな顔をしながら黙ってお酒を飲み始めた。


しばらくすると私もキッドの膝の上でキッドの腹筋を触るなんて異常な状況にもなれて、初めは指先で触っていたのに気づくと両手の平をゆるゆると動かしていた。

ーそれがいけなかった。

キッドが飲み干したお酒の瓶を机に豪快に置くとフッと笑った。

「お前、そうだ。反対も言えると思わねーか?」
「え、なに…きゃあぁ…!!!!」

ガシッと、まだ誰にも触れられたことのない私の汚れなき胸が、鷲掴みに…!!

「お、いいサイズしてんな。」

見上げたそこには、真っ赤な唇を釣り上げた…本当に悪魔がいた。

「キラーぁあぁぁぁぁあああああぁぁああああぁあ「うるせぇ!!」っ…!!」

悪魔は左手をそのままに右手で私の顔下半分を掴んだ。

「うぅ…!!んー…!!」

ドタドタドタ…。
近づいてくる足音。

「チッ…。」



扉を開けたキラーが一瞬呆気に取られた後に抑えきれない怒りを爆発させるまであと少し。



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