ONE PIECE短編

□16番隊の女の子
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私は銃が嫌いだ。
こんなこと普段は取り立てて言わないんだけど。

どうして嫌いかというと、まず戦闘中に銃をむけられるのが一番焦るのだ。
銃も剣も拳も脚も、強ければ強いほど速度は同じだと分かっているけど、やっぱり飛び道具ってだけで気持ちが焦る。
向けられると自分の動きが遅くなる気がする。

それに撃たれた人間の独特の体の動きも嫌いだ。
撃たれた所が貫通して後ろ側に血が飛んで、体も振動でビクついて"あ、死んだ"って思ってしまう。
体ごと全部吹き飛んでしまうようなマルコ隊長の蹴りは見ていて気持ちがいいし、なんせ不快感がない。


それで、どうして銃が嫌いだなんて言い出したのかというと。

「ユウさん…!!逃げて下さい!!」

逃げれたら逃げてるよ馬鹿。

元々体調がよくなかった。
敵が攻めてきた時にイゾウ隊長が"今日は16番隊が行かせてもらうぜ"と言った時には真っ青になった。

でも白ひげ海賊団だ。
16番隊はきっちり100人もいる。
たぶん大丈夫だろうと思って突っ込んだらこの様だ。
敵が多すぎた。
情けない。

「へへへ…お前16番隊隊長のお気に入りなんだってな。」
小汚い男が銃を突きつけて下品に笑っている。
「へぇ、お気に入りだったんだ。知らなかった。」
イゾウ隊長の惚れ惚れするほど妖艶な笑みを見せてやりたい。

知らなかったというか、戦闘員としての女の子は唯一なのでみんなから目をかけられていて、別に特にイゾウ隊長に気に入られていると言う程でもない気がする。


「「ユウさぁぁぁあん…!!」」

戦いながら仲間が泣き叫んでいるのが聞こえる。
お前ら白ひげ海賊団だろ。
みっともないな、泣くなよ。
まるで私が死ぬみたいじゃないか。


「よく見ると良い女じゃねーか。殺すのには惜しいなぁ。だが天下の白ひげだ。有名どころを1人殺しただけで俺の賞金はグンとあがる!!」

こいつの賞金をあげるために死にたくないなぁ。
でも体は全く動かない。
おかしいな。
死ぬのかな。

「誰も助けにこねぇなぁ。白ひげなんてこんなもんか。」
「黙れうるさい。」
さすがにカチンときて震える声を荒げた。

少人数で後ろの甲板に回ったらそっちの方が敵が多いなんて。
万全の体調ならこんなことにはならなかったのに。

早く他の隊が参戦してくれないだろうか。

でも差し迫る銃口には増員だって間に合わないだろう。

こんなところで死にたくなかったなぁ。

「さぁ、死んでもらおうか!!」


額に押し付けられた銃がガチャっと鳴った。
こんなことになるんだったら言っておけばよかった。

「イゾウ隊長…大好きです…。」

パァン…!!!

「「「間に合ったぁ!!!!」」」

…へ?

目の前に感じた衝撃と、あまりの音に頭がガンガンしている。
死んでいない。
間に合ったって?

誰かが私の前に立った。

「死にな。」
目を開ければ風になびく黒い着物。
最初の銃撃は私に向けられていた銃を破壊するものだったのか。

「たいちょ…。」

パァン…!!

私を殺そうとしていた男の体が吹っ飛んだ。
そう、イゾウ隊長の銃は人を体ごと吹っ飛ばす。
だからイゾウ隊長の銃だけは大好き。


「ユウ…!」

働かない頭でそんなことを考えていたらいつの間にかイゾウ隊長に抱き上げられていた。

「たいちょ…ありがと…ございます…。」
「ユウ、しっかりしな。今モビーに連れて行く。」

お姫様抱っこをされて手は隊長の首にそっと回された。

周りを見渡せばさっきまで泣いていた16番隊の仲間が手を取り合って喜んでいた。

「隊員からお前が死にかけていて誰も助けられないって伝言が届いた時には心臓が凍りついた。久しぶりに本気で引き金を引いたねぇ。お前に当たるかと思って…怖かったのさ。」

隊長の意外な言葉に肩口に埋めていた顔をあげた。
引き金を引く時に恐怖を覚えるなんて。

「自分でも驚いたね。お前が絡むと弱くなるらしい。」

隊長は優しく微笑みかけてからしっかり捕まっときな、と言うとモビーに跳んだ。

出迎えたマルコ隊長が驚愕の表情を浮かべている。

「お前ら!早くユウの手当てをしろい!」

救護班が駆けつけてイゾウ隊長の手から私を引っぺがえそうとする。

「ユウ、しっかり手当してもらってこい。治ったらお前が1番欲しい言葉をやるよ。」

そんな隊長の言葉を最後に私の意識はブラックアウトした。



マルコ(おいイゾウ!何があったんだよい!)
イゾウ(作戦ミスだ。)
サッチ(おいおい、16番隊のおっさん共が全員泣いてやがる。)
ビスタ(あの子に本気で何かあったら16番隊の奴らはどうなるのだ。)
イゾウ(ビスタ、あの子に何かあったら…俺が1番に死んでやるよ。)
全員(((イゾウ…)))



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