ONE PIECE短編
□飛ぶ、白い光A
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*ゾロ視点*
船番がユウに決まった時、全員が一瞬顔を顰めた。
「おぉ!ユウ初めての船番か!サニー号守ってくれよ!」
ルフィはニシシと笑っていやがったがウソップは俺も残ろうかと青い顔で小さなユウの顔を覗き込んだ。
「出来るもん。」
口をへの字に曲げて彼女はウソップを睨みつけ、今度はサンジを振り返った。
「ね、私だって1人で船番出来るよ?」
女は何歳だって恐ろしい。
こいつはちゃんと言うべき人を理解している。
可愛い顔で睨みつければ奴はたじろいでおぉ、と声をあげ頭を撫でた。
「そうだ、ユウちゃんだってそんくらい出来るもんな。頼んだぞ。」
頼んだぞと言いながらも顔はすぐに帰る、と決意した様だった。
「まぁ、向いてるかもしれねぇぞ。」
何となくウソップと上陸した。
最近ウソップはフランキーとよく街に出ていたから久しぶりだった。
「ユウか?」
「あいつ確かに何しでかすか分からねぇ恐ろしさもあるが強いし気配にも敏感だ。」
見た目の幼さも敵を油断させるにはいい材料だ。
「船べり歩かない様に注意しといたからな!」
だから大丈夫だと、ウソップは不安を吹き飛ばす様に頷いた。
ユウが船べりの柵の上を歩き出したらいつも走り寄るのはウソップだ。
落ちたら死ぬぞと騒ぎながらも一周付き合ってやる姿は船の癒しにもなっている。
ーー実はロビンも咲かせた"目"でしっかり監視しているのだが。
「あ、俺あの店言ってくるわ。」
ウソップがゴチャゴチャした職人店の様なものを指した。
「じゃあ俺は酒でも見てくる。」
「迷うなよ。」
「迷わねーよ。」
そう言うと半眼で俺を振り返ってからじゃあなと手を振って行ってしまった。
なんだあの顔は。
何本か良さそうな酒を買ってから来た道を帰る。
まっすぐ来たからまっすぐ歩く。
簡単な道で迷子になるはずがない。
普段なら酒を買うよりもまず何となく街の中心に行ってみて、帰りに酒を買ってゆっくり帰るのだが、自分もユウが心配で仕方ないのだろうか。
てめぇも過保護か。
自嘲気味に笑いながらしっかりサニー号を見据えて歩いた。
「…やっぱりか。」
酒瓶に気をつけて船に登れば白い物体が芝生の上に転がっていた。
「寝てやがる。」
酒をキッチンに置いてから白い物体に近づくと大胆にも大の字になって呑気にぐうぐう寝てやがった。
「殺気がねぇからって俺が近づいても起きねぇのかよ。」
まぁ自分も船番の時は寝てることが多いから人のことは言えない。
昼寝でもするかとユウを抱き起こして足の間に座らせていると誰かが船に登ってくる気配がした。
黄色い頭がひょこっと飛び出す。
「…マリモかよ。焦らせやがって。」
「なんだ…テメェ何しに帰ってきた。」
「あ?お前だって帰ってきてんじゃねーか。」
うっと声を詰まらせれば、ははんと笑われしかしすぐにコックの顔はふっと和らぐ。
「ま、俺の方が一足早く帰ってきてたんだがな。」
「あ?」
ほら、と目の前にぶら下げられたのは白い花で出来た輪っかだった。
「何だこれ。お前作ったのか?」
「あぁ、買い出しに行ってすぐに帰ったらユウちゃん寝てたから、天使の輪でも被せてやろうと思って。」
そう言ってしゃがみ込むと俺の胸に背中を預けて寝こけているユウの頭に輪っかを乗せた。
服も肌も白い彼女にその花輪はよく似合っていた。
「あぁ、天使だ。」
ナミやロビンに見せるデレデレ顔とはまた種類の違い蕩けた顔でコックは囁いた。
でも本当に、天使のようで羽ばたいて空へと飛んでいきそうだと思った。
天使にしては少々乱暴で突拍子もなく強すぎるが。
「気色悪りぃな。」
「お前もな。」
むさ苦しい男が二人、天使を見つめ、自らに呆れる様に微笑んだ。
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