ONE PIECE短編
□やっぱり最悪の悪魔ですね
1ページ/1ページ
*《悪魔じゃなかったら何ですか》のヒロイン
------------------------------------
ーー少し肌寒いな
キラーは柔らかい朝日が差し込む自室のベッドの上で目が覚めた。
少し頭が痛い。
昨日は飲みすぎた。
ユウを膝に乗せていじめまくるキッドに腹が立ち、勢いに任せて飲みまくったのだ。
自分はどうしてベッドに寝ているのだろう。
やはり酔ってもしっかりしているのだろう。
無意識にベッドに戻ったのだと解釈し、甲板で雑魚寝する他の船員達との違いを再認識した。
思いまぶたを開ける気にもなれずキラーは寝返りをうった。
右手が何か暖かく柔らかいものに触れた。
良い匂いがする。
まるでユウの様な…ユウの様な…?
キラーは目を開けるのが怖かった。
戦闘だって、あのキッドだって怖くないキラーだが、今目を開けることにとてつもない恐怖を感じる。
しかもすっかり覚醒したキラーは自分が衣服を纏っていないことに気づいてしまった。
「んっ……。」
限界だった。
キラーは聞こえるべきではない呻き声にパッと目を見開き、布団を思いっきり捲って、そして。
ーー絶望した。
そこには自分と同じく一糸纏わぬ絶賛片思い中のユウが眠っていた。
冷静沈着が売りのキラーもさすがに初めて見るユウの裸体に動揺が隠せない。
下半身に熱が集まるのを感じたキラーは慌ててユウから体を離し、布団に潜り込んだ。
キラーは考えた。
体の感覚からしてユウと間違いがあったとは思えない。
これはヤった次の日の感覚ではない。
しかし、パニックに陥っていると自覚しているキラーは自分の感覚さえも信じられなかった。
何より、例え決定的な間違いを犯していないとしてもだ…何かしらユウとそういった性的なやり取りがなかったとは全くもって言えなかった。
取り敢えずマスクを、と思ってゆっくり体を起こし、床に脱ぎ捨てられたマスクに…(これを見てまた彼は頭痛が酷くなった。いつもは棚の上に置いて寝るのだ)…手を伸ばした。
「いった…。」
「……!!!!!!」
壁際に寝ていたキラーはユウの体をまたいで床に辿り着こうと試みていたのだが、突然体の下でユウが声をあげたので彼はマスクに届くことなく一瞬にして布団の中に逆戻りした。
「き、キラー…?!」
目を覚まして布団から顔を出したユウとバッチリ目が合う。
訳が分からないという顔をしている。
「えぇー!!なになになに?!」
「待てユウ!出るな!」
絶句して固まったユウは自分が裸であることに気づいていないのか布団から飛び出そうとした。
キラーはそれを必死に抑える。
そんな格好で飛び出されたらたまったもんじゃない。
「ユウ、すまない…!俺は…何も覚えてないんだが…その…いや、まさかだとは思うが…。」
「…いやいやいやいや。意味分かんないんですけど!」
キラーは溜息をついた。
二人とも何も知らないのだ。
これはもう何もなかったことにしてもいいのではないかと思い始める。
「ねぇ、キラー。」
「なんだ?」
「私キラーの顔さっき始めて見たや。」
「…違いない。」
落ち着いたのかこんな状況にも関わらずふふふと笑うユウを見て女は強いなとキラー心底思った。
「大丈夫だよキラー。」
「…何も大丈夫ではないだろう。」
「ううん、キラーの考えてることは起こってないから。」
「本当か?」
「うん、感覚的にね。」
そうか良かったとキラーはもう一度ベッドに横たわった。
朝からずいぶんと疲れた…心が。
「キラー寝るの?」
「俺は疲れた。」
「あはは、"違いない"よ。」
安心した気持ちにまかせてユウをシーツにくるませ軽く抱きしめると、キラーは今までに感じたことのない温かさに心が満たされた。
「今日一日こうしていても構わないか?」
キラーは少し調子に乗って聞いてみる。
こんなチャンスは二度と巡ってこないかもしれないのだ。
「何言ってんのよキラー。キッドが許してくれる訳ないわ。」
キッドなんて知らない、と言いかけたキラーはふと扉の外から聞こえてくる音にぎくりと固まった。
それはキッド海賊団の中でも重量感のある足音で、いつも厄介事を運んでくるもの。
キラーが部屋の扉を塞ぐことはおろかベッドから出る前に、勢いよく部屋の鍵が弾け飛んだ。
「思ったより良い雰囲気になってんじゃねーか!」
それは朝から見るには色も存在感も、全てが刺激の強すぎる男。
「おい、お前ら!!面白いもんが見れるぞ!!!」
ベッドの上で唖然としているユウとキラーを見てキッドが心の底から楽しそうに声を張り上げた。
「あっの悪魔っ!!」
「…違いない。」
取り敢えずキラーは一旦マスクを被ることで己の船長に対する激しい怒りを押し殺したのだった。
------------------------------------
全部キッドの仕業なんだと思います。
そして本当になにもなかった…のでしょうか(ニヤニヤ)
.