ONE PIECE短編

□君と手を繋いで歩けたら
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昼飯の後片付けが終わり、キッチンから出て1番に目に入ったのは、柵に寄りかかって海を見る二人の姿。

俺は誰にもバレないように小さく小さく溜息をつく、今日初めての。

角度的にユウの顔は見えないけれど、エースの顔は見えた。

幸せですと書いているような、まるでどこか平和な国に住んでいる穏やかな青年のような、そんな顔だった。

2人は同じ年だったか。
少なくとも俺とユウよりはよっぽど年も近くてお似合いで、並んで立っていると俺なんて全く入る隙のないような、そんな二人。

実際に聞いたこともある。
あれは二番隊の隊員達だった。
今日と同じ様に俺が二人を見つめていた時だった。


『エース隊長とユウってお似合いだよな!』
『だよな〜!ユウは強いからエース隊長みたいに強い男がいいぜ。』
『エース隊長も他の女なんて考えられねぇな。』


突然二人が笑い始め、周りの隊員達が驚いたように彼らを振り返った。
ケラケラと笑い合う二人を隊員達
も笑って見ている。


俺がもし、エースと1対1で戦ったとして、勝てるとも言えないし負けるとも言えない。
それが能力を使い刀を使う真剣勝負であったとしても、女を巡る争いであったとしても。

けれどなぜか、ユウのことになると俺は全く勝てる気がしない。

それは俺がユウに真剣に想いを寄せてしまったが故なのだろうが、エースが同じ様に想いを寄せても何が何でも離すまいとするのだろう。
こんなところでも自分とエースの差を感じてしまう俺はもうこの時点でユウを手にする資格なんてないように思う。

こんなに情けない男だっただろうか。

笑いの収まったユウは疲れたというようにその場にペタンと座り込んだ。

エースがそんなユウに手を差し伸べて、彼女もまたそれに自分の手を重ねた。

エースが優しく手を引いて、ユウはまた立ち上がり、さっきまでより二人の距離はもっと近くなる。

繋いだ手は離れずに、エースは彼女の手を今度は両手で包んで何か囁いている。
嬉しそうに頷いた彼女は遠く地平線に視線を移した。

次の島でのデートの約束でもしたのだろう。




あぁ…!

どんなに幸せだろう。


君と手を繋いで歩けたら



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