ONE PIECE短編
□会いたいと言え
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「ユウ。待たせた。」
はっと顔を上げるとスーツをビシッと着こなす私の彼氏。
大好きな彼氏。
『ぅわ…久しぶり…!』
思わず座って待っていたブランコから立つとキッドの大きな手が私の頭に乗った。
「悪かったな。…ずっと仕事が忙しくて会ってやれねェで。」
仕事…。
そう、あたしの彼氏は社会人。
しかもピカピカの1年生。
あたしは大学生でなかなか暇なのに比べてそれはもう、鬼のように忙しい。
こうやって仕事終わりに会うのも久しぶり。
だからさっきまで夕日の綺麗な公園のブランコに1人で座ってる、なんて辛気くさいシチュエーションになってたんだけど。
『しょうがないよ。社会人だもん。仕事なんでしょ?』
あたしは知らない世界に何も言えない。
『すっごくストレス溜まるんでしょ?体壊してない?』
キッドはプライドが高いから社会の荒波に揉まれて大丈夫なんだろうか。
そんな私の気遣いに対して上から降ってくるため息。
「あのな、ユウ。俺は大丈夫に決まってんだろバカ。」
呆れたようなキッドに少しムッとする。
せっかく心配してたのに。
「俺はお前の方がよっぽど心配だ。」
…どうして?
ただの大学生なのに。
「俺に会えなくて寂しかったんだろ?言ってみろよ。」
『それ…は…。』
寂しかったよ。
すっごく寂しかった。
でもキッドは社会人で、キッドには仕事があって、周りの人とのお付き合いがあって…。
“あいたい”なんて簡単に口に出せる訳がない。
「…チッ」
『え…。』
「言えよ。」
俺に会いたいと言えよ。
聞こえた言葉の意味と抱き締められたこと気づくのはいつも、視界が真っ暗になってから。
「何遠慮してんだよ。お前弱ェくせによ。」
頭を撫でられる。
「俺だって会いてェんだよ。」
会いたいと言え
バカ
コノヤロ
チビ
『チビは余計だよ。』
見つめ合って笑う声は明るい。
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なんかドSの裏に見え隠れする優しさを目指し…そんなんどこにあるんだって?
すいませんm(__)m