ONE PIECE短編

□俺だけの証を見せつけて
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ユウの髪は美しかった。

元は黒い髪の毛を少し暗い茶色に染めて、まっすぐで、艶があって、長かった。

俺はそんなユウの髪が自慢だった。





「ユウ…!?」

町から帰ってきたユウの髪は短かった。

「どうした!?」

髪だけではない、右腕に巻かれた包帯には血が滲んでいる。
何があった?

聞きたいことはたくさんあるのに目の前の姿に声が出ない。

『トラファルガー。』

「は?」


トラファルガー?
あの死の外科医?

『大量の海兵に阻まれて手こずっていたらトラファルガーに助けられた。』

あいつが…。

「この島にいたのか。」

『そう、簡単に助けられてついでに髪も切られた。』

「トラファルガーにか!?」

意味が分からない。

なぜあの男がユウの髪を切ったのだ?

『“俺のこと忘れるな”だってさ。』

ユウの眉間にシワがよっている。

『俺に助けられた恥を忘れるな、っていうことかな。』

いや、違う。
あの男のことだ。

「てめェ、ローに好かれてんだよ。」

突然響いたキッドの声にユウはビクッとする。

『キッド…。』

「ユウ、キッドの言う通りだ。」

困惑するユウ。

そうだろう、俺だって信じたくなくないような話だ。

あんなやつがユウを気に入ったなんて。

俺のユウが…。

思うより速く体が動くのは俺がこいつに惚れ込んでいる証拠。

『キラー!?』

気づいた時にはユウを担ぎ上げ、船室に向かっていた。

「おい、あんまりいじめてやんなよ。」

キッドの面白そうな声に適当に返事し、自分の部屋に滑り込んだ。

『ちょっとキラー!?いきなり何…ぅん…!』

取り敢えず煩い口を手で塞ぐ。

目を見開いて見つめてくるユウ。

ずいぶん余裕なようだ。

俺にはこんなにも余裕がないと言うのに。

邪魔な仮面を脱ぎ捨てた。

気に入らない。

手を離すとユウをベットに押し倒す。

『キラー…?』

「うるさい。」

『……。』


ユウの短くなった髪をはらい、鎖骨上に紅い花を散らす。

『っ…そこ見える…。』

「見せておけばいい。」

俺だけの証を見せつけて


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