黒バス脱出原稿

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まず、最後のゾンビはどこにいるか。

下手に動くわけにも行かず、グラウンドの端っこで話し合う。

「どこにいると思う?」
『やっぱり出口、校門なんじゃないですか。』

みんなが頷く。

「どうやって、何で倒すか、だ。」

赤司くんが目を瞑ったまま話を進める。独り言のように。

「前は紫原と二人でヤツの衝突を盾で受けたが、それでもかなり辛かったのだよ。黒子はまだしも、蘭乃さんがまともに衝突すれば死んでしまうかもしれない。」

緑間くんに真面目にそんなこと言われたらゾクッとしてしまう。

「何か武器になるものは?」
「誰も持ってないな。」

宮地さんが肩をすくめる。

「あそこに倉庫がある、グラウンドのだ。中に綱引き用の綱とかあるだろ。」

花宮が指差した先には確かに小さいけど倉庫が。たぶん隣はプールだ。

「あれで身動きを封じて総叩きする。」
「いいですね、それで行きましょう。」

赤司くんが即決した。

ここでウダウダ悩んでても仕方ないし。

綱がなかったらその時はその時だ。

「じゃあまずは倉庫に移動しよう。あそこは校門からは見えないから大丈夫だ。それと高尾と黒子と、あと花宮で校門付近の偵察に行ってくれ。」
「分かりました。」
「よし、じゃあ行くぞ。」

宮地さんの静かな声を合図に私たちは二手に分かれた。








倉庫の中に滑り込む。

5、6人しか入るスペースがなかったが、校門からは見えない位置に入り口があったため問題はない。

「あった、綱引き用の綱ってかなり重いな。」

コガが引っ張ったそれは確かにかなり太い。

長さもある。

「それくらいでちょうどいいです。よし、これをゾンビの動きを封じ込めるために使いましょう。」
「どうやってゾンビの体に巻きつけるかや。黒子使うか?」

今吉さんに赤司くんが頷く。

『ゾンビがどこにいるか、どんな場所か分からないと作戦立てるの厳しいね…。』
「ねえ、飴食べる?」
『花宮たちを待って、えっ?』

私の目の前に可愛らしいキャンディの袋が現れた。

『な、なに?』
「いや、ピリピリしてるかなと思って。」

ニヤニヤしながらそのキャンディの袋を開ける原。

そして白いキャンディを摘んで私の口まで持ってくるから、仕方なく口を開ける。

「はい、あーん。よく舐めてね。ごっくんしちゃダメよ?」

思わず噎せそうになる。

「それよく溶けるから舌の上で白いドロドロになっちゃうね。」
『っ……。』

原がハスキーな声で厭らしく笑う。

あぁ、ムカつくくらい様になってる。

「あまりにもど直球すぎて俺でも引くわ。」
「先輩の下ネタもエゲツないッスよね。」
「高尾てんめぇ轢くぞ。」

宮地さんがキレた。

「黒子っち帰ってきたっスよ。」

黄瀬くんの声に振り向くと、いつの間にか帰ってきた黒子くんが携帯の画面をこっちに向けていた。

「現場の写真です。」

グラウンドを囲うフェンスと低木越しに撮られた写真。校門の前の少し広い場所にゾンビがいる。

「めっちゃ強そうだなこいつ…。」

日向の言う通り、前回体育館に入ってきたゾンビと同じように強そうだ。

「綱をゾンビの体に巻きつける方法を考えた。」

花宮が人差し指を立てた。

「まず赤司が飛び出してアンクルブレイクなりなんなりして体勢を崩す。その隙に黒子と青峰が縄で捕獲。二人で縄の端持って真ん中でゾンビ引っ掛けて、黒子がゾンビの周りを一周すればいい。」

なるべくゾンビに近づかずに縄で縛るにはそれが一番良いだろう。

一周走るのはやっぱり黒子くんのほうがいいのかな。

「そんなに上手く行くか?」
「さぁな、でもやるしかねーだろ。」

花宮に赤司くんも頷く。

「テツは分かるけどなんで俺なんだ?」
「お前は闇に紛れるだろ。他のキセキの髪色と自分の肌の色見てみろよ。黒子は一周回ったところで誰かと交代だ。」

目が点になっている青峰くんとは対照的に、黒子くんは素直に花宮の言ったことに頷いた。

「一周回り終えたところでゾンビを囲み始めるが、誰がいく?」
「俺は行くぞ。」

花宮の問いかけに宮地さんが即答した。

「もちろん俺も行きます。」
「俺も行かなきゃいけないでしょ。」

氷室くんと紫原くん。

「ワシも行こかな。」
「俺も行くのだよ。」
「俺も行くっスよ。」

今吉さんと緑間くんと黄瀬くん。

「これで6人か。黒子の綱を黄瀬が引き継ぐとして、あと1人で六角形に囲むことが出来るんだが。」

そう言ってチラリと原に視線を送る花宮は、戦いに参加する気はないらしい。

「騎士は姫を守るんだよ。王は戦を見ておかないと。」

突然、原が私の手を取った。

「は?」

花宮が眉間に皺を寄せる。

「だから俺は騎士。」
「ついにトチ狂ったか?」
「いや、元から。だから花宮は王様っしょ?姫は俺に任せて、行ったほうがいいと思うけど。」
『待って、私姫って役柄じゃない。』

掴まれた原の手を離す。

「姫はちょっと刺激的なくらいが丁度良いから。それに赤司が偵察に花宮行かせた意味なくなるじゃん。」

原の言うことは確かに正しい。

赤司くんが偵察に花宮を行かせたのは彼に作戦を一任するという意味。

花宮は戦いに参加したほうがいい。




原が当然のように騎士と言ったのは、もしかしたら日常的に、つまりバスケにおいて花宮という王の下に戦っているという意識があるからなのだろうか。

なんて少し突飛かもしれない考えが頭をよぎった。

「グラウンドに釘打つ時のハンマー見つけた。」

コガが鉄のハンマーを掲げる。何か漁っているなと思っていたけど。

「はい。」
「…なに?」

そしてなぜかそれをむっくんに渡した。

「だってトールハンマーでしょ?破壊の鉄槌。」

なるほど、っと思わずみんなが頷いて、むっくんはどこか恥ずかしそうにそのハンマーを受け取った。



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