海賊パロ原稿

□世界を生きろ
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○ワンクッション注意○



黒バスのキャラ達が海賊をしていて、ワンピースに出てくる悪魔の実を食べて能力を持ったキャラが数人いるだけです。
ワンピースしか知らない方は読めないと思います。
海賊が普通にたくさんいる、現代よりかなり科学技術の遅れたちょっとファンタジーな世界です。






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あなたは見たことがあるだろうか。

この世界には"悪魔の実"というものがある。










俺には親の記憶がない。名前もない。
気がついたら1人でがむしゃらに生きていた。

身長が今の半分もなかった頃、俺は嵐のせいで島に漂着した海賊船の残骸を漁っていて、その悪魔の実というものを発見した。

悪魔の実はとても珍しく有名で、高額で取り引きされているらしい。
食べれば特別な能力を得ることができ、もう野たれ死ぬ心配はしなくていい。

そんな夢の果実だ。

気味の悪い名前がついているが、デメリットは一つだけ。

泳げなくなること。それだけだ。



俺は盗んできた悪魔の実の図鑑を捲って、拾ったその実と同じものを探し出した。

悪魔の実は同じものが世界に一つとなく、誰かが一口でも食べてしまえばその実はただの不味い果実に変わるらしい。

運良く、俺の拾った実は得られる能力とともに図鑑に掲載されていた。

俺はもちろん字なんて読めないから、島の優しい花屋のお姉さんに頼んで読んでもらい、『スパスパの実』という名前で"全身どこでも好きなところが刃物に変わる能力"を得られる実だということが判明した。

これは当たりだ、と思った。


俺は迷いもせずその実にかぶりついた。
信じられないくらい不味かった。
お腹がすいていた俺は一口でいいものを全部食べた。




それから、俺は生活に困らなくなった。



旅人、海賊、ありとあらゆる金を持っていそうな奴を襲って金銭を盗んだ。

お腹が空くことはなくなった。

お金が溜まれば服を買って船に乗って、生まれ育った貧しい島を出た。

島を出るのに寂しいなんて思わなかった。



図鑑の文字を読んでくれたお姉さんだけにはさよならを言いに行った。

俺はその頃にはもう、さよならを言えるような綺麗な人間ではなかったけれど、お姉さんはそれを知ってるのか知らないのか、優しい笑顔で見送ってくれた。




辿り着いた島はなかなか賑やかな島だった。

俺はすぐに街でスカウトされて夜の仕事に就くことになる。

実際、字は読めなし計算も出来ないからこれくらいしか出来ない。

そこで数年働いて、俺は1人で家を持てるくらいの人間になった。





その島に入ってからは、能力を一切使っていなかった。







そしてある夜。

俺は運命の出会いを果たすことになる。





その日の夜は、仕事で女の子とたくさんお酒を飲んでいた。

お客さんの女の子の一人が言った。

「お昼にね、最近有名な海賊がこの島に到着したの。」
「へぇ、そんなに有名なんっスか?」
「うん、この間評判の悪い大きな海賊団を潰したって新聞に書いてたわよ。船長が元政府の人間なんだって。」

新聞なんて読めないから俺はここに来るお客さんから最近のニュースなんかを聞いてるんだけど。

「ふーん、一回船くらいは見ておきたいッスね〜。」

海賊かぁ、俺には関係ないかな。

でもせっかく能力持ってるんだしそういう生活も良いかも。
考えたことなかった。


その話はそこでストップして、俺はそのまま綺麗な女の子達と飲み続けた。




仕事が終わって、お店の裏口から出た。

そういうお店が集まるところから家までの帰り道にふと、海賊のことを思い出した。

ちょっと見に行くくらいいいだろう。

そう思って普段はまっすぐ帰るものを、港に向かって歩いて行った。

あれ、海賊って堂々と港から入るっけ、なんて思いながら歩いていたら、小さな叫び声が聞こえた。

路地から顔を出して悲鳴が聞こえた方を伺うと、水色の髪の毛の細っこい男の子が絡まれていた。

うわぁ、久しぶりにこんな光景見た。

男の子は三人くらいのおじさんに囲まれていて、男の子が何かを言った瞬間、おじさんたちがその子に掴みかかった。

男の子は引き倒されて、髪の毛を掴まれる。

あ、やばいかな。

その男の子は線が薄くて貧弱そうな感じで、でもおじさん三人に囲まれても恐怖や焦りを顔には出していない。

それがまた怒りを煽ったのか、1人のおじさんがナイフを振り上げた。

うわ、危ない!

「やめろ!」

路地から走り出て、そのナイフをどうにか吹っ飛ばす。

「いってぇ!なんだてめぇ!」
「うるさいっス。こんな弱そうな子に手上げて何してんスか!」
「こいつがムカつくからだろ!見たところお前…ホストだろ?戦える訳ねぇよな!」

ナイフを持って向かってくるおじさん。

一人だったら大丈夫なんだろうけど、三人はちょっと無理だ。

仕方なく右腕を突き出して、この島に来てから初めて、能力を見せた。

一瞬で腕全体が刃物に変わる。

まるで失った腕の代わりに大きな包丁を装着したかのようだ。

お酒を飲んでいるからか久しぶりだからか、何だか昔よりキレの悪そうな感じがするが、おじさん達をビビらせるには十分だ。

「お、お前…能力者か!!逃げるぞ!!」

そう叫ぶとおじさん達は全力で逃げて行った。

「はい、もう大丈夫っスよ。」

振り返ると、その男の子は刃物になった俺の腕にも怖気付くことなくペコリと頭を下げた。

「ありがとうございます…能力を使うか迷ってて…助かりました。」
「うんうん、あんな……え?!能力を使うか迷ってた?!」

言われた言葉に愕然としてその少年を見る。

「はい、僕海賊なんですけど、あんまり能力とか知られたくないので…賞金掛けられたくないですし…。」
「…へ、海賊…賞金…?」
「おーい黒子、何やってんだ。」

パニックになっている俺の耳に聞こえて来たのは男の人の声。

振り返ると、黒髪に釣り気味の目が涼しい、若そうな男の人がいた。

「あ、キャプテン。」
「きゃ、キャプテン…?!」

この人キャプテン?!俺終わりじゃないっスか!!

キャプテンと呼ばれた人は真っ黒な髪に鋭い目で怖かったけど、俺を警戒して攻撃してくる様子はない。

でもなんだか海賊の船長やってるって感じはしない。

普通にかっこいいお兄さんだ。

「聞いてください、この方に助けられたんです。でもこの方、能力者みたいで、さっき能力を見せてしまったのでこれからホストとして働けるか…どうしましょう。」
「え、ちょ、な、何言って…。」


急に失職の危機を迎えて呆然としていると、キャプテンとやらにポンと肩を叩かれた。

「あー、懸賞金掛けられることはたぶんないだろうが…。お前、何の能力だ?」
「えっと…体が刃物に…。」
「戦闘向きだな、黒子のこと助けてくれたし…。どうする黒子。」
「僕に聞くんですか。」
「笠松呼ぶか。」

か、笠松さんとは誰っスか…。

無線で笠松さんを呼び出すキャプテンを不安に思って見つめていると、水色の男の子が話しかけてきた。

「僕の名前は黒子テツヤです。あなたのお名前を押しえて下さい。」
「名前…ないっす。俺が産まれた時から足に付けてたっぽいバンドに書いてる名前ならあるっスけど。」

あんたのせいで俺の人生ひっくり返りそうなんだけど、と思いながら俺は少し不機嫌だ。

「見せて下さい。」
「…はい、これ。りょうたって書いてる。」

笠松さんとやらに連絡を終えたらしい虹村さんがバンドを覗き込んだ。

「りょうた…じゃあ名字つけようぜ。」
「今ですか?」

驚いているらしいが彼の反応は薄い。

っていうか何で俺の名字この人に勝手に付けられるの?え?

「髪の毛金髪だし"金"とかつけるべきか?」
「宮地さんや福井さんと比べたら黄色って感じですよ。」
「確かにそうだな。じゃあ赤司や青峰っぽく…黄…。」

虹村さんが一瞬考え込んでからポンと手を打った。

「黄瀬!黄瀬とかどうだ?」
「どうだと言われても…。名字いるんスか?」

何でもいいけど、りょうた、だけでも良いと思う。

「いいじゃねぇか。うちの海賊団入るなら家族になるってことだ。人は産まれる時に名前つけられるだろ。それで家族になる。だからお前に今名前つけてやるよ。」

既に海賊になると決められたことについて全くついていけない。

「分かったな、黄瀬りょうた。お前は今から黄瀬りょうただ。」

「……はいっス。」



虹村さんがニヤリと笑いながら俺にそう言った時、俺は確かにこれから始まる世界に期待していたのだった。



**





「っていう感じっス。」

今のが2日前までの俺の薄っぺらい人生の全て。

「なるほど、それでちょっと黒子のこと恨んでたのか。」
「今となっては逆に感謝してんスよ。だって黒子っちが絡まれてなかったら俺は海賊になることもなかったっスから。」

そうだな、と言いながら笠松先輩は笑った。

「海賊になった経緯といい、名前の件といい、虹村さんはたまに強引だよな。」

確かに呆気に取られる程強引ではあったが、翌日懸賞金を掛けられた自分のポスターを見て海賊になるしかなくなった俺としては、非常に有り難かった。

「普通は海賊になったらより高い懸賞金が付くことがステイタスなんだが、黒子に限っては世間に能力を知られない方が良い。黒子があそこで能力をバラしてしまえば俺らは目撃者を消すしかなかった。」

あのおじさん達を殺すってことだ。

「それは黒子も嫌だろうから。虹村さんもお前には感謝してるだろうし…なんせお前若いし能力持ちだし強そうだからな。」

ここの船員たちは虹村さんのすることに基本的に反対はしないらしい。

虹村さんのことを信用してるんだって感じた。

「ま、俺は笠松先輩のことも大好きっスけどね!」
「お前、その先輩ってのやめろ。海賊には先輩も後輩もねぇよ。」
「いや、笠松先輩は俺にとって先輩ッスから!」
「…あっそう。」


俺の意思に関係なく流れるように海賊になることが決まった後、笠松先輩と虹村キャプテンが言った「仲間は家族だ」ってセリフもピンと来なかった。

だいたい家族なんて持ったことないしね。




けれど、この海賊団に入って2日しか経ってなくても分かったこともある。




海賊は実力勝負、腕がなければ明日の命はない。


そしてこの広い海が示してくれる通り、海賊は自由だ。








…まぁ俺、未だにこの海賊団の人全員知らないんスけどね。

それに笠松先輩のために死ねるかと聞かれたら、それは出来ないと思う。

いつかそれが出来る日が来るのだろうか。





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また懲りずに新連載。
すぐに終わる予定です。
だいたい書くこと決めてお相手キャラはあみだで決めるくらいのフリーダムに挑戦したいだけです。
読んで下さってありがとうございます!




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