海賊パロ原稿

□平凡な才能
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平凡な才能




ドアを開けるとびっくりした顔のむっくんが立っていた。


「…え、なに、どうしたの。やめてよ。不吉。」
『人が部屋から出てきただけで不吉って何。』
失礼な。


私の部屋の前はむっくんの部屋だ。

むっくんの部屋はでかい。
住む人がでかいのだから仕方がない。

「てかどうしたの。なんかあったー?」

腰を屈めて尋ねてくるむっくん。

『寒くない?』
「そりゃねー。もうすぐ冬島だしー?」

なにそれ、聞いてない。

昨日誰も教えてくれなかった…。

『毛布取りに行く。倉庫に。』
「倉庫行く前に食堂寄ってかない?」
『むっくんがお腹空いただけだよね…?』
「いいじゃん。」

ふらりと進み始めたむっくんの背中を仕方なく追った。







むっくんに続いて食堂に入ると、遠くの方に座っていた真太郎の目が少し見開いたのが分かった。


「あ、湧っちだ!こっちこっち!」

笠松さんと涼太の席に呼ばれて座る。

「火神!湧来たから飯!」

笠松さんがキッチンに向かって叫んだ。

「マジかよ!」

今日のキッチンは大我らしい。

真太郎の隣に座ってる高尾に手を振られたから適当に振り返す。


「今、黄瀬の能力見てたんだよな。」

笠松さんに言われて、涼太が片腕を手のひらを下に向けて前に突き出す。

「刀とは違って太刀筋を自在に変えれたんっス!こうやって…。」

突き出した腕が太い包丁のようになったと思えば次の瞬間には太刀筋が天井を向いていた。
敵からしたら両手両足に自由自在に曲がる刀を装着していると思いきや、太刀筋すら関係ないということ。

『なるほど…これは敵にしたくない…。』
「指全部別々に刃物になるのー?」

むっくんの問いかけに首を捻った涼太だが、すぐに10本全てを小さな刃物に変えてみせた。

もちろん指の腹側にも手の甲の方にも、刃の向きを変えられる。

『涼太を倒そうと思ったら鉄を切れないとダメってことだ。』
「俺無敵じゃないっスか!」


火神が昼食を持ってきてくれる。
大きなポテトサラダは私の好物の一つだ。


「甘いな黄瀬は。」

笠松さんが笑った。

「強い海賊団には鉄を切れるやつなんて1人や2人はいるぞ。」
「え、そうなんっスか!?」

涼太が目を見開く。
うちの海賊団にもいるけどな。

「鉄切れるとか…どうやって勝ったら…。」
「だからそんな敵とお前が戦う必要はないだろ。そいつは別のやつに任せてお前は倒せるやつを倒せば良い。敵との相性ってのはどうしたってある。」

笠松さんの言葉に涼太が納得したように頷いた。

「そろそろ基礎練は終わったんか?」

突然、どこから来たのか私の隣にドカリと腰を下ろしたのは今吉さんだ。

そう言えば久しぶりに見たんだけど、どこにいたんだろう。

涼太の基礎練とは、能力を使わずに青峰と戦うことで基本的な体の動きを鍛えることらしい。

「青峰に聞いたんやけど、自分けっこう飲み込み早いらしいなぁ。青峰の変身してなくても予測不能な体の動き、けっこう真似出来るんやて?」

青峰は豹だ。
言葉通り豹になる。

しかも青峰自身が真っ黒だからか、黒豹になる。
"ネコネコの実モデル豹"が青峰のせいで"モデル黒豹"になったという訳だ。

征曰く「実に興味深い」らしい。


「青峰は殺戮兵器みたいなもんだからなぁ…黄瀬も全身刃物人間なんだから第二の殺戮兵器くらいの呼び名はついても良さそうだけどな。」

殺戮兵器という言葉の凄惨さを嫌ってか、笠松さんは微妙な顔で笑った。

『今吉さん、花宮どこ。諏佐も。』
「湧ちゃんワシで満足してぇな。」
『今吉さんでも良いけど…。』

今吉さんはまるで猫を撫でるかのように私の首筋あたりを指先で擽る。

こういう時、今吉さんは胡散臭い笑顔じゃなくて、真顔で口が薄く開いている。

「花宮どこ行ったんやろか。また何か武器でも作ってるんか…。」

花宮や征はよく分からないものを作り出す。

花宮なんてこの間、汗を滴らせながら自動で洗濯してくれる機械を作ろうとして失敗していた。

割とその様子が面白くて笑っていたら殺されかけたけれど。

「あれ一応失敗ちゃうねんで。」
『え、そうなんですか。』
「完全自動は無理やったんやけどな、どっかで拾ってきた自転車使って、それ漕いだら桶の中で羽根がグルグル回る機械になったんや。」

へぇ、凄い、また見に行こう。

「それがおもろいことにやな、でっかい洗濯専用の桶作ったんやけど、水が飛ばんように被せた蓋の強度に問題があったらしくて、誰かがその上座ってな蓋飛んでいくねん。」

うわぁ、花宮また作り直すんだろうな。

「今は体力作りのために自転車は降旗が漕いで、蓋の上乗ってんのは黒子らしいで。」

それはまたほのぼのする風景だ。

『今吉さんは乗らないの。』
「あんなガタガタ揺れるもんの上に乗ってられへんわ。」

今吉さんが立ち上がった。

「ほんならワシはちょっと部屋帰るわ。刀の調子悪うてな。」

そう言ってフラリとまた部屋に戻っていく今吉さん。

振られた右腕には包帯が巻かれてあった。







「船には色んな人が乗ってんスね。」

涼太がしみじみと呟いた。

『むっくんだってこんなにでかいのにお菓子作るもんね。』

むっくんがモグモグしながら頷く。
むっくんがずっと黙っているのはずっと咀嚼しているからだ。

「この船で一番ヤバいのって誰っスか?」

涼太の言葉に私たちは顔を見合わせた。

「ヤバいのな…強いのはやっぱ虹村さんだろ。」
『でもヤバいって言ったら一哉かな…。』
「あれはちょっとねー。」
「何の話してんだ。」

会話に突然入ってきたのは健介。

「あ、福ちんじゃーん。」
『この船で一番ヤバいの誰?』
「一番ヤバいのな…まず青峰には勝てねぇよな。」

涼太が大きく頷く。

「分かりやすくヤバいのは原だべ。まぁ赤司も敵に回したら頭キレる分かなりヤバい。」

征は心臓を抜くのが得意技だ。

『征の前では立ってられないんだよ。』
「なんスかそれ、地震でも起こすんスか?」
「いや、それは虹村さんだろ。」

笠松さんが突っ込むがキョトンとしている涼太は本当に知らないのだろう。

キャプテンは地震を操る能力だ。
文字通り地震を起こすことも出来るし、空気中に振動を起こすことも出来る。

『一瞬で大災害を起こすってことを考えたらキャプテンの能力もかなりヤバいか。悪い奴があの能力持つと思うとゾッとする。』

永遠に大地震を起こし続けられると考えたら最悪だ。

「海賊なんだからヤバくない人なんていないでしょ。」

むっくんが上手いことまとめてくれたけどそれには異を唱えたい。

『私は普通、健介も笠松さんも諏佐もテツヤも大我もコガも凛も高尾も…後ザキも普通。』

でも、降旗くんは意外と普通じゃないから侮れないって最近思う。

「そうだっけ?まぁ湧ちんは普通だよね。それが一番だけど。」

そう言ってむっくんが私の頭をグリグリと撫でた。

「部屋から出てこないのに普通なんスか?」
『今出てきてるけど。』
「部屋から出ないくらい何でもねぇだろ。」

笠松さんが肩を竦めた。

ほんと、その通りだ。











元々は倉庫に毛布を取りに行くために外に出たんだった。

そのことを思い出して食堂を出た。

甲板に出てメインマストを見上げる。
逆光すぎて誰が見張りをしているのか分からない。

一哉っぽい気がする…健介もあり得るけどさっき食堂にいたか…なんて考えていると背中をバシンと叩かれた。

『いたっ…。』
「湧、お前出てきたのか珍しい。」

キャプテン、虹村さん。

急いでいるのか立ち止まる様子はない。

「体作っとけよー!」
『はーい…。』

右手に持った丸めた紙を振って、忙しそうにどこかへ行ってしまう背中に小さく返事をした。




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順番にキャラに会っていきますね。
まるでう○プリ状態です。
頑張ります。コメントいつもありがとうございます!



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