海賊パロ原稿
□音は涙で出来ている
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音は涙で出来ている
あまりにも寒くて目が覚めた。
信じられない。
毛布を取りにわざわざ昼間から外に出たというのに、また寒くなりやがった。
このままだと確実に風邪を引く、悪ければ凍死だ、冗談抜きに。
倉庫に一番あたたかい毛布を取りに行くしかない、最悪だ。
布団から出る時は何の修行なのかと思ったが、震えながらも何とか部屋を出る。
今日の見張りは誰だったか。
大丈夫だろうか。
ガタガタ震えながら取り敢えず外に出てみる。
気付いてもらえるように大きな音でドアを開けた。
「湧だ。どうしたの?」
波の音は小さい。
風の音もしない。
そんな夜の甲板に柔らかい声が響いた。
『伊月、だ。』
「何かあった?」
見張り台にとりつけられたランタンの明かりでぼんやりと見える、伊月の姿。
『寒くない?』
「寒いね、でも大丈夫だよ。ありがとう。」
伊月だからそんなヘマはしないか、と安心してまた船内に戻る。
「優しいね。」
そんな声が聞こえた気がした。
伊月の声も優しい。
**
再び船内に入る。
もう倉庫まで行くのもめんどくさい。
何気なく左を見るとドアにかけられ"KIYOSHI"という文字。
最も外に近いところに部屋があるのは木吉とそれから征。
夜中に征の部屋に入るとどうなるか。
一瞬でバラバラにされかねない。
『木吉のベッド入ろ…。』
扉をそっと開けると大きなベッドにこんもりと山が出来ていた。
見るからにあたたかそうな毛布に包まって寝ている。
『きよしー、入れて…。』
毛布に手を突っ込むとむわっとあたたかい。
天国だ、入れて。
無理矢理体を押し込むと木吉がモゾモゾと動いた。
「ん……。湧…か…。」
こっちを向いて腕を広げてくれる。
「冷たいなぁ…。」
柔らかい胸筋に包まれてちょっと恥ずかしいけど木吉だから大丈夫。
『あったか…。』
一瞬で眠くなる。
顔を胸に擦り付けると木吉の大きな手が背中を撫でた。
もしお母さんがいたとしたらこんな感じなのかなってふと思った。
「おやすみ…。」
眠そうに溶けた木吉の声。
おやすみ。
**
浮遊感で目が覚めた。
『ぇ……?』
目の前に見えるのはピンクのシャツ。
上体を上げると遠ざかっていくベッド。
そしてバタンと閉まるドア。
眩しい朝日。
『えええええ…。』
「おー!湧起きたか!おはよう!」
木吉に俵のように担がれていた。
『なんで、どこ行くの…。』
「朝なんだから朝食だろ?」
飛び降りようにもがっしり背中と膝裏を固定されていて降りれない。
「こらこら、暴れたら落ちるぞ?」
そっちが担いでるから落ちるんでしょうがと言いたいが話の通じる奴ではないと諦める。
2日も続けて日の出ている時間帯に外に出ることになろうとは。
『ねぇ、もうちょっと普通に抱っこしてくれない?』
このままでは頭に血が上りそうだ。
「ん?こうか?」
何とか木吉の首に手を回せるようになった。
木吉の背後がよく見える。
けどこのまま、また寝そうだ。
木吉と食堂に向かっていると目の前に辰也が現れた。
私を見て驚いている。
「おはよう、良い朝だとは思っていたけどまさか湧が見れるなんてね。」
まるで珍獣か異常気象のような言い方をする。
「ん?氷室か?」
木吉が首だけで振り返る。
『久しぶり、おはよう。』
そう言うと辰也はにっこり笑って近づいてきた。
あーやばい、これは来る。
『たつや……、』
チュッ…っと綺麗な音は意外にも冬の朝の空気に合っていた。
でも辰也、触れるようなキスじゃない。
ちゅぅぅ、って吸い付くようなキス、ちょっとダメだと思う。
辰也の顔が好きだと思う。
綺麗な顔だし、同じ綺麗な顔でも涼太や玲央とは違う、海賊には似合わない顔。
伊月もちょっとそんな感じだけどね。
まぁでも戦場での辰也の顔なんて見れたもんじゃないけれど。
辰也は色んな顔を持ってるけど、この船のみんなに優しくない辰也は見たことないから、それなら何でもいいと思う。
そんなことを考えているといつの間にか食堂についていた。
なんで木吉に抱っこされながら登場しなきゃならないんだろう。
そもそも何で木吉…あぁ、ベッドに入ったんだね。
このことに関しては昨日は眠くて寒くて切羽詰まってたんだと釈明したいけど、日向が一番怒りそうだから面白い。
案の定、木吉が食堂の扉を開けると一瞬シンとしてからウワッと音が溢れた。
「な、何をしているのだよ!木吉!」
「おいおい、今度は何しでかしたんだよ木吉。」
「ば、木吉、おろせっ!」
「湧さん!湧さんが!」
上から順番に真太郎、青峰、日向、降旗くん。
木吉の後に続いて入ってきた辰也はニコニコ笑って挨拶を交わしている。
よいしょと椅子に下ろされて、食堂を見て驚く。
『…なんでこんなに揃ってんの。』
「この時間帯はだいたい揃ってるぞ?」
えぇ…そうなんだ。
知らなかったなぁ。
隣のテーブルから真太郎が急いでこっちに来た。
「昨日から一体何なのだよ…。」
心配させてくれるなという口ぶりだ。
自分で言うのもなんだけど、出てくるのが普通なんだからそんな過剰な反応しなくても良いと思う。
「湧が来たんだったら今からここで会議始めてもいいんじゃないか。」
黛さんの少し大きめな声が通った。
木吉が首を傾げながら黛さんを振り返る。
「会議?何のだ?」
「この間黒子が持ち帰った情報に関することだ。…笠松、どうする?」
笠松さんが征を見た。
「やろうか。」
代わりに征が眉をクイっと上げて言った。
「今いないの誰だ…えっと…。」
諏佐が周りを見渡した。
花宮と一哉いる。
青峰もいる。
「黒子いるか?…おぉ、いるな。」
「僕はいますが伊月さんがいらっしゃいませんね。」
『伊月見張りだよ。』
「僕が呼んできます。」
降旗くんがパッと立ち上がって出て行った。
「じゃあ私は虹村さん呼んで来るわね。」
玲央がみんなにウインクしながら出て行く。
玲央ってキャプテンのことどう思ってるんだろうってたまに思うけど、たぶん私の考えすぎだ。
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二年前のセンター試験の結果ハガキを最近掘り出しました。
大した点数は取ってないですが、やはり国語はずば抜けて良かったのでこのサイトを運営しているお陰だと思います。
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