海賊パロ原稿

□戦闘開始15分前
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戦闘開始15分前





⑴黛の場合



そろそろ、多くの船員達がそれぞれの準備を終えて甲板に出てくる頃だ。

もちろん俺もその一人で。

船室から出るといくつかの人の集まりがあるのが分かった。

なるほど、船長が気まぐれに作った班ごとに集まっているのか。

この馬鹿どもも協力出来たのかと少し安心する。


だがまぁ俺は1班で当たりだろう。

俺たちは能力者こそいないが、経験の多い奴らが集まる堅実で安定した良いチームだと思う。

木吉が怪我から復帰した直後とは言え、飛び抜けて無茶なことはしない奴だ。

心配しなくとも上手くやる筈だ。





それに比べて2班はどうだ。

青峰と緑間がお互いに協力、あり得ない。

そこに花宮と黒子。

チームワークは最低だ。
どう考えても森山が可哀想すぎる。

ここはチームワーク云々を考えるより個々の力で強引に押していく戦いになりそうだが、それでもその個々の力には揺るぎない信頼がある。
心配してやる必要など露ほどもない。

ただ黒子を上手く使えないのならこちらに引き渡せ。

原と交換してやろう。




3班は宮地と桜井は己の役割をよく理解して戦えるタイプ。

小金井と水戸部ももちろんコンビワークには定評がある。
俺たち他の班が即席で作る連携など目ではない。

もちろん紫原と氷室は大きな戦力だ。





そして、もしかすると一番怖いのは4班なのではないか。

降旗と黄瀬という不安定な要素を赤司はどう使うのか。

伊月だって普段は超遠距離射撃を専門とするスナイパー。
この船の中で一番接近戦に弱いと言っても過言ではない。

高尾も同じく銃を使うことが専門だとは言え、彼は接近戦には強いと豪語しているし実際戦いの最前線にいることも多い。

彼がどれだけ伊月をカバー出来るのか。

赤司の統率力と高尾の対応力が試されるだろう。

もちろん不安定さと同時に、黄瀬が大きく化けるかもしれないという未知の力を持ったチームとも言える。




最後に5班だが、ここにきてまさか、あの今吉を心配することになろうとは。

先日の戦いで一人大怪我を負って帰ってきた時には驚いた。

最近重傷者が出るような派手な戦いをしていなかった分驚きも大きい。

しかもあの卒なくこなし、目立つ力はなくともいつだって飄々と勝利だけを掴んでくるタイプの男が。

最近は何か部屋に籠っていることが多かったみたいだが…まぁいい、頭の良い奴の詮索をしても無駄だろう。

諏佐や日向、福井が心配など無用なのは勿論のこと、火神はこの船で一二を争う攻撃力を持つ。

湧のことが心配でないと言えば嘘になるが、彼女に対して多少心配性になるのはこの船では当たり前のことだ。

総括するとまぁ5班も問題はないだろう。




さぁ、俺も他人の心配ばかりしていられるほど強くない。

「おい、実渕。何の話してるんだ?」
「あら黛さん丁度良いわ。原と山崎の使い方に迷ってて木吉に相談してたのよ。」




⑵緑間の場合

虹村さんは今年で齢30となるらしい。

だからだろうか。
あんなにだらしなく黒いシャツの前を開けていても色っぽく見えるのは。

そこまで考えてハッと意識を浮上させる。

戦闘前の妙な緊張感に充てられて妙なことを考えてしまった。

もちろん自分は緊張などしていない。

いつだって準備は万端なのだ。
何事にも手を抜かないのことが自分の一番の美点だと胸を張って言える。


「おお、緑間。お前はいつも通りやれるだろうから安心だな。」

正面から歩いてきた虹村さんが自分の腕をポンと叩いて歩いていく。


「いいかお前ら!10分後には建物の中だぞ!」

笠松さんが遠くで叫んだ。

本格的な防御体制が整うまでに戦いを始めなければならない。


少し向こうで赤司と降旗と黄瀬が頭を寄せ合っているが、うちの班に協力など期待してはいけない。

まず俺には黒子が見えない。


「緑間。」

不意に後ろから肩を叩かれて振り返ると諏佐さん。

その後ろからどこか悠々と今吉さんが歩いてくる。
見慣れない太い刀を持っているようだ。

「どうかしましたか?」
「湧を知らないか?」

甲板をぐるりと見渡しても姿はない。

おかしい。
戦闘前はいつも横になっていてはやる気が出ないからと甲板にいることが多いのに。

「知りません。部屋にはいないんですか?」
「いや、まだ行ってないが…。」

「もうすぐ出てくるだろ。たぶん手間取ってるだろうからな。」

珍しく、花宮が会話に口を挟んでくる。

「手間取る…どういう意味なのだよ。」
「すぐに分かる。」

どこか楽しそうに口元を歪めて去っていった花宮。

その後ろ姿を見ながら今吉さんが笑う。

つくづく、この辺りとは関わらない方が無難だと思う。


湧のことは、もう子供ではないのだ。

放っておいて大丈夫だろう。




⑶小金井の場合


「えっと、俺たち3班は1階担当。敵の幹部は30人で見つけ次第無線で連絡。俺たちは能力者を見つけ次第、氷室と紫原に報告。こんな感じだよな?」

隣に立つ水戸部を見上げてみればいつもより少し堅い目と合った。

「あれ?水戸部緊張してんの?…ちょっとしてるんだ!」
「あ?水戸部緊張してんのか?」

銃を磨いていた宮地さんが顔を上げる。

「大丈夫だって水戸部!虹村さんも俺たちをペアにしてくれたんだしさ!いつも通りやるだけだろ?」

そう問いかければこくりと頷く水戸部。

「宮地さん、それ新しい銃ですか?」

静かに向こうの海を見つめていた氷室が振り返って宮地さんに聞いた。

「あぁ。今まで使っていたものより動作にかかる時間が短くて連射性がセミオートに近くなってる。しかも精度もあがってる。」

え、なにそれすっごいかっこいいじゃん。

「小金井も何かしら仕込んでんだろ?」
「んー、いつも通りですよ?銃より今回はナイフかなって感じですけどね。」

初めての建物内での戦いで、どうなるから分かんないけどちょっとでも活躍出来たらいいな。




⑷伊月の場合

「黒子からの情報によると俺たちが攻める地下一階に敵のキャプテンがいることが多いらしい。恐らく一番奥にいるはずだからここは俺と降旗で攻めよう。反対側は高尾と伊月さんで攻めてくれ。」

無表情で淡々と指示を飛ばす赤司。

その顔はいつも通りなのか?

「地下一階は一般人も多いらしい。その方たちの避難の誘導を終えたら黄瀬は無線の指示に従って臨機応変に動け。」

黄瀬が真面目な顔で頷く。


俺は普段、自船の見張り台からスコープを覗いて戦っている。


接近戦の経験がないわけではないし、簡単に負けるとも思っていないが。

それでも俺に、何が出来るだろうか。



そっと目を閉じて瞼の上から眼球を撫でる。

この目は活躍してくれるのだろうか。




「伊月、さん…?」
「っ、なに?」

顔に近いところから不安そうな声が急に聞こえて目を見開くと降旗の顔。

「大丈夫ですか…?」

思わず降旗を凝視した。

どう見ても彼の方が顔色が悪く大丈夫なようには見えない。

それでも若い彼に少しの心配もかけてはいけないと俺は笑顔を作った。




戦いの始まりは近づいている。

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一度消えましたが何とか仕上がりました。
やっと次回から戦闘シーンです。
実は花宮だけノープラン。


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