海賊パロ原稿

□灰色の襲撃
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灰色の襲撃


新世界に向かう前最後の島。

そこに上陸したのは午前のことやった。

上陸前はやっぱりキャプテンや赤司や笠松らと島のことについて話し合うんやけど、昨日はかなり夜遅くまでそれが続いた。

とにかく、キャプテンはめっちゃピリピリしとる。

こんな余裕なさげなん見たことないからこっちが和ませようと必死や。



なんであの最強のキャプテンがこんなピリピリしてるんかって、この島はなんと海軍本部がめちゃめちゃ近くにあるから。

とはいえ、島はワシらみたいな新世界という次のステージに挑もうとする海賊ばっかり集まってくるわけで、島も海賊相手の商売で成り立ってるようなもん。

お膝元にありながらも一番海賊の多い島。いや、多いからお膝元になったんか。

何が言いたいかって別に普通の海賊やったら大人しくしとこか〜くらいやのに、キャプテンがこんなに警戒してるんは彼の、虹村修造の過去に問題があるから。




キャプテンは昔、海軍やった。



海軍中将やった虹村さんは、何があったんか詳しいことは知らんけど、ワシと諏佐の前に現れた時にはもうとっくに海賊に転身してはった。

そのままあれよあれよと言う間に海軍出身の半端やない統率力でここまでワシらを引っ張ってきたわけや。

これまでうちの海賊団は目立つ悪行とか一般人の命脅かすようなことはしてへんから、海軍から目ぇ付けられることはなかった。

でも海軍のお膝元までやってきた"元海軍虹村修造"を海軍的にも見過ごす訳にはいかんやろ、と考えてるみたいや。

まあ正論やな。


「ほんでから、お前までピリピリすんなや黛。」
「は?黙れ。」
「やから怖いってそれが。」

ワシの隣で着船の準備をしている奴らを監視している黛を睨む。

「何サボってんすか。」

上半身裸の火神が飛び降りてくる。

飛び降りてきたっちゅーことはさっきまで下半身火やったってことや。

『大我熱いよ。』
「仕方ねぇだろ。追っかけ回すぞ。」

構いたがりの火神が湧に手を伸ばして、黛が顔を顰めながら火神を叱責しようとした時。




黄瀬のつんざくような悲鳴が聞こえた。




「なんや!」

陸地の方が騒がしくなる。

船から身を乗り出してみると。


「クソ、なんで七武海が出迎えに来てんだよ…!」

黛が目を見開いて小さく叫んだ。

七武海、それは"海軍から海賊行為を許されてる"7人の人間のことや。


一気に緊張感が漂う。


当たり前や、さっきまで平和やったのが次の瞬間には死んどるかもしらん場に変わってしまったわけやから。

すぐさま火神が灰崎の元に飛び降りる。

それと同時に青峰も灰崎の真上からから襲いかかった。

だが二人とも腕一本で払いのけられる。

『青峰が…。』
「どういうことやねん…。」

あいつの腕どないなっとんねん。

灰崎が怒鳴った。

「おい虹村ぁ!海軍様からのご命令だ!お前らを潰してやる!」
「灰崎久しぶりだな。だがお前、その体はどうした。」

キャプテンの声は冷静や。

「海軍の科学者にいじってもらったんだよ。ほら。」

そして灰崎は手のひらを黄瀬に向けた。
間髪入れず、笠松が叫んだ。

「黄瀬逃げろ!」

ピュンっという心臓を縮ませるような音とともにその手から黄色い閃光が走り、黄瀬が立っていた地面は真っ黒に焼け焦げていた。

「四肢に何かしらの改造が施されとる。」
「なんで足も改造してるって分かった?」
「今、閃光出したのと同時に伊月が灰崎の足狙撃したからや。」

伊月は灰崎を撃たれへんと分かった瞬間、違う銃を取りに走って戻って行った。
仕事がはやい。

火神の炎も青峰の爪も銃弾も通らへんし、閃光も出る。

胴体も改造の可能性はあるけど、まさか今の技術やと頭部や関節までは出来へんやろ。

狙うはそこか。

「俺の改造なんてどーでもいいだろ!」
「まあ待てよ。灰崎お前は俺に用があるんじゃないのか?じゃあ俺を狙えよ。」

キャプテンの言葉は挑発やない、本気や。

「は?誰がお前殺すことに興味なんかあるかよ。俺はこの海賊団を沈めに来たんだよ。弱い奴から狙うのは鉄則だろ?」

弱い奴、一番賞金額が低いのは降旗やけど赤司が隣にいる。

ってことは…




「桜井!!」
『良く……!?』



パァンと音がなった。



銃を持って腕を伸ばした桜井の前には、ほぼ見えん速度で移動した灰崎。

予想していた桜井は銃口をピタリと灰崎の額に向け、発砲したはずやのに。


桜井は本気で殺すつもりやった。

せやけど少し血が出た程度。



『なんで…。』


青峰がガルルルルと唸りながら桜井の体を灰崎の前から掻っ攫った。

獲物を失った灰崎が上を向く。

目が合った。

「湧!!」

虹村さんの叫び声。

黛が飛び上がってきた灰崎を落とそうとするが、上手く避けられる。

「なんや七武海のくせしてえらい若いなぁ!」

一瞬で目の前にきた灰崎はワシのやっすい挑発には引っかからず、後ろにいた湧に手のひらを向けた。

あかん…間に合えへん…っ


死ぬ覚悟で湧の体を突き飛ばそうとした時、灰崎の背後に火神が現れた。

そのまま火神は灰崎を後ろに引き倒す。

ズドンと放たれた光線はほんの若干、ワシの頭を逸れた。



あかんあかんあかんあかん死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ………!!



湧の腕を掴んで無理やり船の反対側まで走る。

『今吉離して!』
「すまん!」
「今吉!」

どっから現れたんか、諏佐が走って来た。

「なんや!」
「お前ら船から離れろ!船潰される!」

灰崎は沈めにきたんやったな。

船なくなったらさすがに海賊として立て直すには時間かかる。

方向転換して諏佐の元に向かおうとした時、船がぐらりと揺れた。

『うわっ…。』

やばいなぁ、ほんまに。

こんなとこまで来てあんなやつ一人に潰されるんか?あかんで。

「火神が船から引きずり下ろした。」
「船出そか。」

ワシの言葉と同時に船が動いた。

黛か。

また船がグラリと動く。

違う、船が動いたんやない。虹村さんの"地震の能力"で空気が歪んで波が一気に引いたから船が流されたんや。

虹村さんは宙を殴って、そこを起点に空気中に地震という名の衝撃波を発生させることができる。

「きっつ…。」
『んぅ…。』

湧は頭を抑えてしゃがみ込んだ。

虹村さんの衝撃波はあまり浴びたいものやない。

「ほら、大丈夫か?」

諏佐が湧の手を引いて立たせる。

その時、今度は陸の方から火神が飛んできた。

「どうしたんや!」
「船は俺と黛さんに任せて陸に戻って下さい!」

有無を言わさず、火神は湧を背負い、右手でワシを、左手で諏佐を抱えて飛んだ。

「おもてぇ!」
『諏佐は190あるから。』

火神に抱きかかえられるのは暑くてかなわんし、上半身裸やからなんとも言えん気持ち悪さがある。



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