海賊パロ原稿

□二人っきりで夜の海にも立ち向かう
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二人っきりで夜の海にも立ち向かう


「花宮どないしたん…。」
「さぁ…?」

諏佐が哀れなものを見るかのような目で、甲板に転がって原に押し倒されて眉毛を抜かれる花宮を見ている。

宴ってのは全員が羽目を外せるわけやない。
当たり前や。

それは陸で諏佐と詐欺師紛いなことして生計立ててる時も一緒やった。

例え虹村さんや青峰や黄瀬が潰れても緑間や火神はしっかりしてるとか、バランス考えて飲まなあかん。

今日は珍しく花宮が死んどるなぁ。

しかも潰されたんやなくて一人で潰れよった。

「自分から潰れに行くような飲み方してたんだからいいだろ。」
「なんかあったんかなぁ。」

そういや湧どこいったんやろ。

そもそも部屋におったのをザキが担ぎ出してきて、そうや初めは花宮とおったわ。

ほんで花宮がガバガバ飲むの見てドン引きしながらも頭撫でたりしてて…。
割とそれは微笑ましいと思えたんやったか。

ちゃんと思い出されへんあたり、ワシも今日はやばいんやわ。

気になったらもう我慢できひん。

「ワシ行くわ。」
「どこに、おい今吉?」

諏佐は無視して船尾へと歩く。

船室の二階は船上に出てるから、ちょうど船の後ろ半分くらいが部屋の分高くなっとる。
階段のぼってワシら年長の部屋の上を歩いてるっちゅうわけやな

若い子らの部屋は甲板の下。

空を見上げると、誰かが見張り台にいるのが見えた。

「見張り台誰おるん!」

大声を張り上げて聞いて見ると、影が頭を出した。

「日向と俺だけど!」

あぁ、伊月と日向な。
なんや二人で飲んどんか。

「探し物はすぐに見つかりますよ。」

そう言葉を落として、伊月は頭を引っ込めた。

どういうこっちゃ。
まあええ、このまま真っ直ぐ歩いたろ。

真っ直ぐ歩くと二階部分が終わり、階段をおりて船尾にも甲板が少しだけある。

その甲板の手すりの上に彼女は座っていた。

やっぱり、伊月は全部把握しとったんやな。

それにしても。



「あほォ、そんなとこ座りな。」

後ろから湧を抱きしめて、囁いた。

酒のせいか、自分でも驚くような熱くて甘い声が出る。

『いま、よし…。』

いくら今夜は伊月が把握してるからって、落ちたら危ないやろ。

湧は嫌がるような素振りを見せたが、構わず抱きしめ続ける。

頬をくっつけるように後ろから顔を出したら、横目で睨まれた。

「何してたん?」
『別に。』

湧と甘い会話しようと思っても絶対ノッてはくれへん。

けど最近気づいたんや。

緑間は例外として、火神や宮地なんかには大人しく抱かれてるくせして、ワシのこと嫌がるようになったやろ。

誰が何をしようが我関せずやったのになぁ。

触れ合った頬を口が触れ合いそうなところまで顔を押し付けてみる。

『なに、してんの…。』

呆れたような声を出す湧。

ほんとは焦ってんちゃうの。

「んー?湧があまりにもかわええから抱きしめてんねん。」
『やめてよ。気持ち悪い。』

前方から、船を押す生暖かい風が吹き付ける。

一瞬立ち上がった前髪が、柔らかに額に落ちてきた。

「はぁぁ、湧。」
『なに。』
「冷たい声出さんといてぇな。」

少し強引に、湧の頭をこっちに向けて固定して、唇が触れ合うギリギリで見つめ合う。

あぁ、こういうの、したかったんや。

いつまでも子供っぽい湧やない。

こうやって異様に近い距離で熱っぽく見つめてやったら、ほら、少女から大人に変わる不安定な顔が色っぽいやん。

思わず熱いため息が漏れた。

『今吉、お酒の、匂いが…。』
「すまんのぉ。今頃、酔い回ってきたわ…。」

ワシも緊張しとるんか、思いの外声が出えへん。

けど一回、口を開いてしまったらもう閉じられへん。

そのまま湧の口を食べるように塞ごうとしたところで、湧の体がすり抜けた。

すり抜けたっちゅうことは下に落ちたってことや。




下はもう海しかない。




「ちょ…アホ…!!」

慌てて体を乗り出すも、手を伸ばす頃にはもう、湧が海に落ちる音がした。

「伊月!日向!湧落ちよった!」

渾身の大声で見張り台に向かって叫ぶ。

服と靴を脱ぎ捨て、ガンガンと鳴り響く見張り台からの鐘の音をバックに真っ黒な海に飛び込んだ。

うまく飛び込んだつもりやったのに、焦りすぎたんか体が水面に叩きつけられる。

眼鏡だけは死守した。

「湧!湧どこや!」

黒い波を掻き分けて、見えない目を凝らす。

眼鏡についた水滴が邪魔で邪魔でしょうがない。

あかん、分からへん、どこにも気配がない。

隠れてるんか?沈んではないはずやねんけど。

「どこ隠れてんねん!アホか…って、うぉ、」

その時、隣に光る何かが落ちてきた。

誰かがなんか分からんけど光るもんを海に投げ入れたらしい。

それを掴んで、目を凝らして海を見ようとした時。

背中に衝撃。

「っ…なんやねんほんま。」

胴体に回った腕を力任せに外して、向きなおる。

「アホかお前、なんで飛び込んだんや。」

答えない湧を、沈まないように抱き上げる。

「手のかかる子ほど可愛い言うけど。飛び込まんでもええやろ、な?」

飛び込んだのは我慢ならんかったからや、分かるけど。

諭すように問いかけると、湧は口を開いた。

『じゃあ、なんで今吉はキスしようとしたの。』

そうや湧は妙に鋭いこと言う子やった。

なんでって、そんなん…。

どうして、やなくてワシの口調が移ったかのような問いかけだったことに気がついて思考が逸れる。

そばで揺れる光源を頼りに湧の顔をよく見ようとした瞬間、高めの波がワシらを横殴りにして沈めてくる。

けど海の男はそんなもんには負けへんから、湧を強く抱きしめたままなんとかブレずに耐える。

もう一度浮き上がって、湧の濡れた顔を拭ってハッとした。


例えば、抱きしめたら止まらんかったとか、薄めのその唇を感じたかったからとか、食い尽くすようなキスで息を乱したかったから、とかやなくて。

本当は、そんなこと思うのは全部、お前のことが好きやからって、そういう答えを言わな許してくれへんような顔。

いや、許してはくれるやろうけど、代わりにもうワシのこと信じてくれへんような、そんな顔をされたら。



「あんな、湧。」

ぶつけたところで気持ち、分かるんか?

異性を特別に愛しいと思う気持ち。

この船で一番口達者な自信はあったのに。

裸の胸に濡れた湧の顔を押し付ける。

迷いながらも口を開け、言葉を発しようとした時。



「今吉!こっち!」

ストライカーが登場した。

正直、船に帰らなあかんとか完璧に忘れててめっちゃびっくりしてもうた。

「火神!すまんのぉ。」
「俺、持てないんで森山さん掴んで引っ張られて下さい!」

ワシの海水で濡れた手を能力者の火神は触られへんから。

後ろに乗る森山の手を掴んで引っ張られろっちゅうことか。

「何やってんだよお前ら!湧生きてる?」
『生きてる、ごめん由孝。』
「え、許す。あ、俺が湧抱っこして帰ろうか?今吉しんどいだろ。」
「いけるいける。湧背中乗れ。よし、火神出してー。」
「おーっす。」

これ虹村さんに後でなんて説明したらええんやろ。

てか湧はみんなになんて言うつもりなんやろ。

『秘密にしててあげる。』
「え?」

引っ張られるワシの背中に乗った湧が耳元でそう囁いた。

『全部、みんなに、黙ってる。』
「なんで?」

湧は一瞬詰まった後、楽しそうに言った。

『秘密にしておきたいからだよ。』



だから、なんでって、聞いてんねやん!!



ま、さっきワシもタイミング悪かったとは言え何も答えへんかったし。


ストライカーに引かれてニヤニヤしながら帰ったワシを待っていたのは、酔っ払って激怒した宮地やった。


「いまよしぃぃぃ!!!なんでお前がいながら湧落としてんだよ!!この役立たずが!見張り台から突き落とすぞ!!伊月の投げた光源どこ行った?!あぁん?!置いてきただと…?撃ち抜くぞてめぇぇぇ!!」


こっわ、殺されるわ。





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みんなの年齢を考えてみたので一応日記の方にあげておきます。
すごくどうでもいいですが今吉さんと年の差ありすぎて…。
リクエストでした。

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