脱出番外編

□1-コートの外、日常
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*三学期が始まってから

(伊月視点)





一年も二年も同じクラスだった。

これはもしかしたら来年も同じクラスになるかもしれないな。

なんてことを考えながら俺は今頬杖をついて湧の横顔を見ている。




WCが終わってすぐ、日向や湧たちが不思議な出来事に巻き込まれたらしい。

すぐには信じがたかったがあいつらの携帯に入った赤司や青峰、今吉さんなんかの連絡先を見て最終的に信じた。


その話の中で一番信じられなかったのは花宮が湧のことを好きになったというもので、どうしてそうなったと問い詰めれば日向達は一様に顔を引きつらせた。

当の湧が何でもないことだと言い張るので俺たちの中でも何とか受け入れてはいるものの…受け入れて…。



まぁ湧のことだから大丈夫かな、とは思うけど。



日向たちも意外と花宮は普通の奴だったと認めたくなさそうに言っていた。






俺はその場にいなかったから何も分からないけど。








一月の席替えで俺が湧の後ろの席になってからなんとなく昼休みは二人で弁当を食べている。

湧が俺の席に弁当を置いて横を向いて食べてるから、今も湧の横顔を見ている訳で。



ふと湧がセーラー服の胸ポケットを見下ろした。

『メールだ…。』



卵焼きを咀嚼しながら物憂げに携帯を取り出して暗証番号を打ち込む…ってだから四桁の暗証番号を全部2にするのはやめろとあれだけ言ってるのに。

意外と面倒くさがりだ。


携帯を操作していた湧の動作がピクリと止まった。

「ん?どうした?」

『…な、みや…?』

薄めの唇から"花宮"という単語が零れ落ちたのを無視することはもちろん出来なかった。


「な、どうした!」

ガタンと椅子を鳴らした俺をびっくりした顔で見つめながら湧はいや、と言葉を濁した。

花宮の話になると急に歯切れが悪くなる。

『花宮からメール来ただけだけど…。』
「なんて?」
『…え、うん。』


え、うん、って何だよ。

全然言う気ないのかよ。


「あんまり…二人きりとかならない方がいいぞ?花宮に関してだけじゃなく。」
『分かってるよ。』
「それならいいけど。」

食べる気がなくなったのか湧は食べかけの弁当の蓋を閉めた。






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