脱出番外編
□新しい歌を歌おう
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*『○○しないと出られない部屋』より前のお話です
新しい歌を歌おう
驚くほど高い天井をバックにボールが高々と上がる。
照明が眩しくて。
でもボールに100パーセント集中しなくちゃいけない。
どこにあげようか。
ブロックは誰につく?
どこが空いてる?
さっきレシーブしたあの子に上げるか、エースも好調…。
「……湧?」
弾かれたように顔を上げると目の前に花宮の顔。
ここは総合体育館ではなく花宮の家だし、着ているのは白のユニフォームではなく長袖のトレーナーだし、目の前にあるのはボールではなくセンターの過去問。
『し、思考がトリップしてた…。』
「ビビらせんなよ…。」
すごい欲求不満感があるんだけど。
「あれだな…。」
花宮が戸惑った表情のまま言い当てた。
「肉食動物みたいな顔になってんぞ。」
『うん、なんかムラムラする。』
「…俺の聞き間違いではなさそうだな。」
うん、バレーしたいだけ。
センター試験一ヶ月前の年末のことだった。
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