脱出番外編

□新しい歌を歌おう
1ページ/3ページ

*『○○しないと出られない部屋』より前のお話です







新しい歌を歌おう




驚くほど高い天井をバックにボールが高々と上がる。

照明が眩しくて。

でもボールに100パーセント集中しなくちゃいけない。

どこにあげようか。

ブロックは誰につく?

どこが空いてる?

さっきレシーブしたあの子に上げるか、エースも好調…。






「……湧?」





弾かれたように顔を上げると目の前に花宮の顔。

ここは総合体育館ではなく花宮の家だし、着ているのは白のユニフォームではなく長袖のトレーナーだし、目の前にあるのはボールではなくセンターの過去問。


『し、思考がトリップしてた…。』
「ビビらせんなよ…。」



すごい欲求不満感があるんだけど。



「あれだな…。」

花宮が戸惑った表情のまま言い当てた。


「肉食動物みたいな顔になってんぞ。」
『うん、なんかムラムラする。』
「…俺の聞き間違いではなさそうだな。」


うん、バレーしたいだけ。








センター試験一ヶ月前の年末のことだった。






→→next page
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ