音大シリーズ
□夢のお誘い
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いつも通り6時にレッスン室を出たら扉の真横のソファにローが座っていたから飛び上がった。
「よぉ、終わったか。」
「え、何でいるの…。」
「お前を待ってた。」
真剣な顔をしているので彼は冗談を言っている訳ではなさそうだ。
首を傾げると彼は徐に鞄から財布を出し、二枚の紙を私の目の前にぶら下げた。
「何これ…ってラフテルオーケストラじゃない!!」
目の前にぶら下げられたのは二枚のチケットで、それはかの有名なラフテルオーケストラの次回公演のチケット。
「な、何で持ってるの?!いいなぁ、私これチケット取れなかったの…。」
そう言うとローはニヤッと笑った。
「羨ましいだろ。」
「…そりゃ羨ましいよ。」
なんだこいつは。
自慢しに来たのか。
ラフテルオーケストラなんてこの国で1番歴史ある最高のオーケストラだ。
世界でもかなり有名だと思う。
真剣に音楽をやっている人は誰だってこのオーケストラの団員になりたい。
「じゃあ俺がお前を誘いに来たって言ったら?」
ぶら下げられたチケットがサッと引っ込められ、代わりにローの浅黒い手が差し出された。
信じられない気持ちでその手を凝視した。
「再来週の日曜日だ。いかがですか、お嬢さん?」
心の底からローがかっこよく見えた。
お願いしますと抱きつく勢いで手を握ると彼は少し目を瞠って微笑んだ。
「お前には…白か薄いピンクが似合いそうだな。」
…コンサートに行く為のワンピースドレスでも買おう。
再来週の日曜日に家まで迎えに行くと囁かれていちいちキザなローにドキドキしたのは秘密。
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