音大シリーズ

□右隣の赤い住人
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キラーさんが帰ってしまって私は段ボールに入った楽譜を棚に並べることにした。


棚に楽譜を並べるのは気持ちがいい。

作曲者順にどんどん並べていく。



でも少し気を抜いたらやっぱり頭にあるのは新しい人付き合いのこと。


今のところ分かってるのは私の左隣がキラーさんってことだけ。

右隣、下、上、全然分からない。

っていうかこの寮に住んでる人で知ってるのキラーさんだけだ…。

最初はこんなもんだよね。


そんなことを考えていたせいで指先の注意力が散漫になったのか。


『あっ…。』

ゴトッ!
バタバタ…!


『あぁ〜…!』


ベートーヴェンのソナタの重い楽譜が手から滑り落ちてしまった。

まだあまり人が入っていないのか、静かな寮に少しだけ響く。

『やっちゃった〜…。』

しかも角から落ちたみたいで少し痛んでしまっている。


楽譜をもう一度棚に入れようとした時。

『…?』

静かな寮を急ぎ足で階段をのぼる音がしてきた。

パタパタパタ

あっ近くで止まった。



コンコン


うちか!
まさか…
クレーム…?

『はーい…。』


恐る恐る扉を開けると。







「どうも、初めてお目にかかります。あぁ、なんと美しいレディ!」






…金髪。




「大きな瞳と緩いカールが魅力的!」





…え…?




「申し遅れました。私、あなたの下に住んでおります、声楽科2年のサンジというものです。」



…はぁ、声楽科。





「上にレディが引っ越してきたのは知ったのですが訪れる機会がなく、さっき物音がしたので。」




『あっ大丈夫で…。』


私の左横の扉が物凄い勢いで開いて思わず口ごもった瞬間…


「うるせぇ黒足!!」
『………!』




赤髪…!?



『しかも逆立ってる…。』

見たこともない髪型の厳つい男性が現れた。

いきなりすぎてついていけない。


「おい、キッド。この子が怖がってるじゃねぇか。」

「何を騒いでいる。」

あまりの騒ぎにキラーさんが出てきたらしい。

左にモフモフ金髪、前方にサラサラ金髪、右に逆立った赤髪。

全員イケメン。


「どうなってるの?」


「近所迷惑だキッド。」
「こいつも近所迷惑だろ。」
「あなたのお名前は?」



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