音大シリーズ
□すれ違った
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あの後、キラーさんが場を治めてくれて近所迷惑さん達は帰って行った。
私の右隣の住人はキラーさんと昔からの知り合いでサックスのキッドさん。
あの派手なルックスでサックス持ったらかっこいいのかもしれない。
私の下の住人は声楽科のサンジさんで先輩だ。
凄くイケメンな人でサラサラの金髪とあの声が色男感を出していた。
サンジさんは優しくていい人だし、キッドさんも悪い人ではなさそう。
一先ず安心かな。
「ところで家に炊飯器はあるのか?」
『…それがないんだよね。』
いけない。
キラーさんの存在を忘れるところだった。
私は今、キラーさんと近くのスーパーに食材を買いに行っている。
二人とも家に何もなかったんだ。
「じゃあ暫くはうちの炊飯器を使うといい。」
『ほんとに?ありがとう。じゃあおかず作るよ。』
スーパーに入り、キラーさんは米を、私はカレーの具材を買いに行った。
やっぱりキラーさんはいい人だ。
私の分のご飯一緒に炊いてくれるなんて…。
近いうちに炊飯器買わなきゃね。
人参を手に取り、かごに入れた時、前から白いモコモコした帽子を被ったスラッと背の高い男の人が前から歩いてきた。
『(なんか独特の雰囲気。)』
ゆっくり、すれ違った。
よくある日常の風景。
一瞬、顔が見えた。
あれ?
後に残った余韻は嫌なものではなかった。
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