音大シリーズ
□忘れた訳ねぇだろ
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『キラーさん、お米重そう…。』
再び合流したキラーさんは大きな米袋を持っていた。
「これくらい何てことはない。」
確かに軽く持ってるみたいだけど。
レジで精算してスーパーを出た時。
「おい。」
後ろから響いた低い声が私たちを止めた。
振り向くと、さっきの男。
「あっ…。」
キラーさんが反応した。
「お前、トラファ…「やっぱりお前だ。」…。」
キラーさんの言葉を遮り私に話しかけてくる。
『誰…ですか…?』
「忘れてねぇだろな。」
「“きらきら星変奏曲”」
『……!?』
「俺の名前と顔は忘れても俺のあのモーツァルトを忘れさせはしねぇ。」
優しい音色が懐かしい香りを運んできた。
いつかのあなたの姿とともに
「俺が初めて負けを認めた相手なんて忘れる訳ねぇだろ。」
『あれから全然…顔変わってないね。帽子も。』
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