■小説

□ランボさんの日常
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「ツナ〜! ランボさんにブドウちょうだい! ブ・ド・ウ!」
 ランボは綱吉の胸に抱きつくようにしがみつき、ごろごろと甘えだす。
 元々甘えたがりのランボであるが、特に綱吉に対しての甘えぶりは特別だった。
 ランボは綱吉の事が大好きなのだ。
「う〜ん、ごめんね。ブドウは買ってこなきゃないよ。そのかわりアメ玉あげるから」
「アメ!! うわー! ツナ大好き〜!!」
 ランボは綱吉が机の引き出しから取り出したアメ玉を受け取ると、わーい! とそれを口にポンッと入れた。
 口内に甘い味が広がり、なんだか幸せな気分になる。
 大好きな綱吉と大好きなアメ玉。
 大好きに囲まれたランボは、今、とても幸せだった。
 そう、奴が来るまでは…。


「ツナ、そろそろ勉強の時間だぞ」


 カチャリとドアを開け、リボーンが部屋に入ってきた。
 そのリボーンの姿に、ランボはピクリと反応する。
 そう、ランボはリボーンの命を狙うボヴィーノファミリーのヒットマンなのだ。
 標的が現れたというのに、ささやかな幸せに浸っている場合ではない。
「リボーン! 死(ち)ねー!!」
 ランボは綱吉から離れ、懐から拳銃を取り出した。
 バンバンバンバンバンッ!
「参ったかコラー!!」
 ランボはリボーンに向けて銃を連射する。
 ランボはなんだか得意げに銃口から立ち上る硝煙をふっと吹いた。
 さすがにこれだけ撃てば、リボーンも死にさらすだろうと思ったのだ。
 だが。
 だが、当然ながら現実はランボに優しくなかった。
 リボーンはランボの連射を全て避けていたのだ。
 銃弾を避けるなど、もう神業の域である。
「ツナ、ぐずぐずすんな。今日も宿題出されてんだろ」
 リボーンはまるで何事も無かったかのようにそう言った。
 リボーンは最初からランボの存在が無かったかのように振る舞い、完全無視で横を通り過ぎたのだ、
 そんな二人の正反対の行いに、綱吉は苦笑しながらも特に何も言わなかった。
 二人のこんな光景は、いつもの事なのだ。
 そう、毎度繰り返されるいつもの光景。
 そしてこれから起こる事もだいたい予想がついていた。


「……う……っ、う、う……」


 ランボの目尻に涙が溜まる。
「う〜〜〜……っ」
 泣いてしまいそうになるのを必死に耐えるランボ。
「……が・ま・ん……っ」
 ランボは自分に何度もそう言い聞かせた。
 そう、得意の我慢である。
 我慢の子であるランボは、簡単に泣いてはいけないのだから。
 そして何より、ランボはボヴィーノファミリーのヒットマンなのだから。
「オレっち泣かないもんね!!」
 ランボは涙を堪え、立派に復活した。
 そして目尻の涙をぐいっと拭うと、リボーンをキッと睨みつける。
「リボーン! これでお前もおちまいだー!!」
 ランボはそう言ってガハハと高笑いすると、懐から手榴弾を取り出した。
「死(ち)ねー!!」
 ランボは威勢の良い雄叫びとともに、手榴弾をリボーンへ思いっきり投げつけた。
 しかし。


「くぴゃ」


 あれ? と思う間もなく、ランボは手榴弾と一緒に部屋の窓から投げ出されていた。
 そして1秒後にはドガーンッという爆発音。
 それから1秒後には「うわああああああん!」というランボの大きな泣き声。
 そう、これはいつもの光景。
 これが毎度繰り返されているのであった。




「リボーン、もう少しランボに構ってやればいいのに」
「馬鹿を言うな。あんな格下相手にしねー」
 綱吉は呆れたような口調でそう言うが、リボーンはそれに素っ気無い返事を返す。
 だが、リボーンは相変わらず感情の読めない表情で言葉を続けた。
「――――お前はあのバカ牛を甘やかし過ぎだ」



                        
終わり
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